かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 165

2021-02-18 16:55:31 | 短歌の鑑賞
  ブログ版 渡辺松男研究 21 2014年10月 
   【音符】『寒気氾濫』(1997年)70頁~
   参加者:石井彩子、泉真帆、鈴木良明、曽我亮子、N・F、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:鈴木 良明 司会と記録:鹿取 未放


165 首絞めていしネクタイを夜にほどくとき空間は湯気立ちはじめたり

       (レポート)
 サラリーマンなら誰しも実感するだろう。「締める」ではなく「絞める」ほどに首を拘束していたネクタイ。それを夜に帰宅してほどくときの解放感と安堵感が感じられる。季節によっては湯気が見えることもあろうが、実際の湯気ばかりでなく、拘束されて内部に渦巻いていた様々な思いが湯気となって立ちはじめたのだ。(鈴木)


      (意見)
★松男さんの歌に白鳥が鳴くとき湯気が立つというのがあって、いかにも鳴くときはエネルギー使
 って湯気が立つような気がする、だから白鳥の頭から湯気が立っている絵をリアルに思い浮かべ
 て読んでいた。これも似たようなところがあるけど、ネクタイをほどいて直接摩擦のある首では
 なくて空間に湯気が立つところが白鳥の歌とは違う。摩擦の熱が空間に伝わって、何ほどかは放
 射している、でこの歌読むと、空間にたちのぼる湯気が映像としてリアルに見えて面白い。
    (鹿取)
★これ、とてもリアルな歌ですよね。ネクタイすることで自分を殺して組織の中で生きているんだ
 けど、外すと本音がぼろぼろ出てくる。溜まっていたものがもあもあと出てくる。それを湯気と
 表現したのではないか。しみじみと実感がこもっている歌だ。(N・F)


          (まとめ)
 鹿取の発言中にある白鳥の歌は、『泡宇宙の蛙』にある。
  白鳥の鳴くときすこし湯気が立つ今二羽が鳴きふたすじの湯気

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