かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 44

2023-05-19 12:48:35 | 短歌の鑑賞
 2023年版渡辺松男研究6(13年6月実施)
     『寒気氾濫』(1997年)橋として
      参加者:崎尾廣子、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      司会と記録  鹿取未放
                   

44 まなうらに日照雨(そばえ)降らせておりたれど核廃棄物輸送船過ぐ

      (当日意見)
★単純にいいますけど、日照雨が降るように核廃棄物輸送船がいとも軽やかに過
 ぎていく、という歌かなあ。文明批評の歌と読んだ。(慧子)
★「まなうらに」というところはどうですか?ここでは日照雨が降っているので
 はなく、まなうらに日照雨を降らせているとありますが。それから慧子さんの
 解釈だと順接ですが、この歌は「おりたれど」だから逆接ですね。(鹿取)
★すみません、分かりません。(慧子)
★外に日照雨が降っていて、それを見ていて目を閉じたからまなうらにその残像 
 が残っている、とも考えられますが。でも実際には降っていないけど、まなう
 らにだけ降らせているのかも知れないし。下の句の核廃棄物輸送船はいろんな
 人が歌にしていて、私も歌ったけど、たぶん目撃して作っている人は少なくて、
 そういうものが航行していることはみんな情報として知っているので、それで
 作っているのじゃないか。まなうらに優しげで明るい日照雨を思い浮かべてい
 たけれど、次の瞬間そこを核廃棄物輸送船が通っていったよ、つまり核廃棄物
 輸送船が過ぎていくのもまなうら。だからどうなんだと言われると困るけど、
 穏やかな日常の中に忍び寄る生の脅威かな、でもそう言葉で解釈したら全然つ
 まらない。
  核廃棄物輸送船というのは、だいたい5000トンくらいの小さくて地味な船
 だそうです。核廃棄物をガラス固化体ってよく分からないけど、そういう状態に
 して輸送するらしい。接岸している港を見にいったら別だけど、それは一般には
 知らされないから無理だし、海峡などを通過していく場合もすれ違っても、あそ
 こに核廃棄物輸送船が通っていくよって分からないんじゃないかな。(鹿取)

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