かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 169

2021-04-01 17:46:09 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究 21 二〇一四年十一月 【音符】『寒気氾濫』(1997年)72頁~
  参加者:石井彩子、渡部慧子、鹿取未放、鈴木良明(紙上参加)
     レポーター:渡部 慧子 司会と記録:鹿取 未放
            

※20回→22回→23回と21回を飛ばして鑑賞をアップしていました。
 21回に戻ります。

169 北風にビニールハウス捲れたり嗅ぎたきほどの濃みどりの見ゆ

     (レポート)
 とらえられない北風の中に、嗅ぎたきほどの濃みどりが育てられ、そこはビニールハウスなのだが、風に捲られ、いわゆるハウス野菜、生花の類であろうものがみえた。生命力旺盛な緑なのだろう、「嗅ぎたきほどの」と活き活きした身体性をもってものに迫っている。自然の力、人の営為、作者像としての身体性、それらが繋がりをもって詠われている。(慧子)


      (紙上意見)
 季節は晩秋だろうか。山から吹き下ろす〈からっ風〉のきびしい群馬県は、田畑はすでに冬ざれのよそおいであるが、ビニールハウスが普及して、そのなかで早生で育まれている野菜などはもう濃緑色になっている。北風に煽られて捲れ上がったハウスの端から見えた「濃みどり」は、冬ざれとの対比で一層鮮やかさを増し、「嗅ぎたきほどの」ものである。(鈴木)


   (意見)
★慧子さんが書いているとおり「嗅ぎたきほどの」という身体感覚によって「濃みどり」の野菜が活
 き活きと見えてきますね。(鹿取)
★嗅覚まで動員してうまく緑をとらえている。(石井)

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