かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 170

2021-04-02 17:11:13 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究 21 二〇一四年十一月 【音符】『寒気氾濫』(1997年)72頁~
  参加者:石井彩子、渡部慧子、鹿取未放、鈴木良明(紙上参加)
     レポーター:渡部 慧子 司会と記録:鹿取 未放
            

※20回→22回→23回と21回を飛ばして鑑賞をアップしていました。
 21回に戻ります。

170 木枯しにからからと音符とびまわる簡易便所のなかの空間

      (レポート)
 木枯らしが広く吹き渡っていて、その中に簡易便所なる小さな空間がある。外壁に当たる枯れ葉であろう、硬質な音を「からからと音符とびまわる」とさっぱりした聴覚で、カ音を多用し一首に仕立てる。作者の行動を詠み込まず、簡易便所のなかの空間が作者の耳として提示されたように感じる。(慧子)


     (紙上意見)
 屋内にしつらえた水洗トイレではなく、屋外で作業途中に使用できるようにした簡易のトイレ。昔ながらの汲み取り式かもしれない。そこに枯れ葉が舞い込んでからからと音を立てて飛びまわる、まるで音符のように。(鈴木)

      (意見)
★とびまわる場所が、慧子さんは簡易便所の外壁に当たって、鈴木さんは「簡易便所のなか 」と
 違いますが、歌にはっきり「簡易便所のなか 」と書いていますね。また、鈴木さんの「汲み取
 り式かもしれない」というのは違うかな、簡易便所って持ち運びできると思うので、くみ取り式だと
 まずいですよね。(鹿取)
★くみ取り式だと持ち運びできませんものね。「からから」は枯れ葉のオノマトペとして普通よくない
 けど、ここでは生きていると思います。(石井)
★なぜ「からから」のオノマトペが生きていると思われますか?(鹿取)
★この歌にはどこにも枯れ葉という言葉がないんですね、簡易便所というあまり一般的でないところ
 で、枯れ葉が音符になって飛んでいる、そこでなんか「からから」がしっくりする。(石井)
★よく分かりました。音符が飛び回るのが簡易便所だというミスマッチがいいんでしょうね。六本木の
 イルミネーションの道を枯れ葉が音符のように飛び回っていたら、おしゃれではあっても歌としては
 面白くないものね。便所だから、「からから」とという常套的なオノマトペが生きているんですね。
 ただ、簡易便所って自分では使わなくても住宅やビルの工事現場の隅によく見かけますから十分一般
 的だと思いますけど。上か下かどこか開いていて、葉っぱが入りこんできた。(鹿取)
★男女左右に分かれている型のトイレならそこを枯れ葉が舞う通路もあるけど、個室の中で枯れ葉が
 飛び回りますか?(慧子)
★簡易便所って、普通一つで男女の区別とかないです。その個室の中で飛び回るんだと思います。
       (石井)
★誰もいない簡易便所の狭い空間で枯れ葉が舞っているんですね。(鹿取)



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