かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の一首鑑賞  13

2020-05-30 19:17:15 | 短歌の鑑賞
ブログ版清見糺鑑賞 3  ピエタ  
              かりん鎌倉支部  鹿取未放     

13 沖の石につくフジツボのわが恋は潮の(うしお )満つるまにま充たさる
                 「かりん」94年7月号     

   わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らね乾く間もなし
                  二条院讃岐
 百人一首の有名な恋の歌を下敷きにしているが、ままならぬ恋を嘆く讃岐の歌に対して、自分はいつでも満たされていますよととぼけてみせた歌のようだ。
 讃岐の歌では沖の石は潮干にすら沈んでいて海水に濡れっぱなしだから、嘆きの涙でいつも袖を濡らしている。しかるに〈われ〉は沖の石についているフジツボであるから、いつだって潮が満ちて充たされているのである。〈われ〉が沖の石に付くフジツボだというのは奇想だが、あのブツブツとしたフジツボに潮が充ちる様子はエロティックでもある。
 「まにま」の解釈にやや迷ったが、「事の成り行きに従うこと。……通りに。……に任せて。……ままに。」と辞書に出ている。



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