かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の歌の鑑賞 213,214

2022-09-26 18:08:41 | 短歌の鑑賞
     ブログ版 清見糺の短歌鑑賞    
                  鎌倉なぎさの会  鹿取 未放


213 エルヴィスのLPにまいききおえてびょういんへゆくまっさおなあさ
           2003年4月作

 LPを二枚も聴いてからでないと病院へ出かけて行けない、これを聴く間の葛藤をうたっているのだろう。211番歌(ひんぱんにおくびがこみあげくるからにクリニックにゆくびょういんぎらい)にあったように、クリニックは街の個人病院、「びょういん」は作者の気分では大病院もこと。ここではクリニックで胃カメラ検査を受けた所、食道癌と診断され大学病院への紹介状を渡されて、初めて大学病院を訪ねる日のことだろう。

214 ドクターのはなしききつつ死にいたるまでのじかんがのびちぢみせり
           2003年3月作
   「かりん」二〇〇三年七月号・前月号鑑賞・池谷しげみ
 「表面は坦々とというか、飄々とというか、まるで風にでも吹かれているかのよ うにさらさらした手触りだが『死にいたるまでのじかんがのびちぢみせり』はや はり重たい。決して楽観はできないという不安感を表に出すまいとするかのよう な、抑えた口調だ。……ひらがな表記の多い作品群だが、もう少し漢字を用いる ほうが自然に読めると思う。」

  私(鹿取)は、むしろ「のびちぢみ」というひらがな表記にこそ、時間が飴のよにのびたりちぢんだりする気味悪い感じが表われていて上手いと思う。さらに、ダリのひん曲がった時計の絵などを連想させつつ、作者は人生の残り時間を懸命に量っているのだ。ドクターの話にむしろ作者は緊張し、一喜一憂しているようだ。

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