かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 281(トルコ)

2019-06-25 20:00:51 | 短歌の鑑賞
 馬場あき子の外国詠37(2011年3月実施)
  【遊光】『飛種』(1996年刊)P121~
   参加者:N・I、井上久美子、崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、藤本満須子、
       渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:曽我亮子 司会と記録:鹿取未放
   

281 うすきゆだるに焼き鯖買ひて頬ばるをたれもとがめず柳が散つて

     (まとめ)
 旅の途次、ウシュキュダルに名物の焼鯖サンドを買って頬ばっているが誰もとがめない。孤独にあこがれた若い日からすれば堕落かも知れないが、旅の途中だからそれもまあよしと思っている。そのやや放埒な気分を「柳が散って」と流して歌っている。(鹿取)


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馬場あき子の外国詠 280(トルコ)

2019-06-24 18:08:07 | 短歌の鑑賞
 馬場あき子の外国詠37(2011年3月実施)
  【遊光】『飛種』(1996年刊)P121~
   参加者:N・I、井上久美子、崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、藤本満須子、
       渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:曽我亮子 司会と記録:鹿取未放
   

280 寒いほどのひとりぼつちにあくがれきうすきゆだるにまた船が入る午後

      (まとめ)
 「寒いほどのひとりぼっち」は井伏鱒二の「山椒魚」の主人公である山椒魚が岩屋から出られなくなって吐く言葉からきているのだろう。「うすきゆだる」の言葉が分からないが、狭い運河にある船着場のことではなかろうか?生暖かい空気感が伝わってくるようだ。船着場にまた新しい舟が入ってくるのを旅の途上の少しアンニュイな気分で見ているのだろう。そして景の類似から谷川の岩屋に閉じこめられた山椒魚のことを思ったのではなかろうか。「寒いほどのひとりぼっち」にあこがれた若い日の厳しい精神の在りようを懐かしんだのかも知れない。「うすきゆだる」という名詞のせいもあるが、6・7・5・7・9と少し字余りだ。「また」が無ければ結句は7音で収まるが、「また」はどうしても言いたかったのだろう。何度も船が入ってくるのを目撃しているのだ。


     (後日意見)
※ 「うすきゆだる」は地名「ウシュキュダル」。まとめを発表した後、石井照子氏のエッセー
  「旅行随行記」(「短歌」2002年1月号)にて教えられた。(鹿取)


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馬場あき子の外国詠 279(トルコ)

2019-06-23 20:02:51 | 短歌の鑑賞
 馬場あき子の外国詠37(2011年3月実施)
   【遊光】『飛種』(1996年刊)P121~
   参加者:N・I、井上久美子、崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、藤本満須子、
       渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:曽我亮子 司会と記録:鹿取未放
   

279 箒売る男行きわが立ち止まるオリエント急行今日発車なし

        (まとめ)
 オリエント急行は1833年に開始されたパリとイスタンブールを結ぶ豪華な寝台列車。優雅に3泊4日をかけて走り王侯貴族などに愛用されたが、1977年には飛行機等におされて乗客が減少したため廃止された。その後、様々な別会社がオリエント急行の車両を買い取り、いろいろなルートで観光用に「オリエント急行」を走らせている。作者がトルコ旅行をした1993年当時は、オリジナル・ルートで再現した特別企画列車が年1~2回走っている程度であったようだ。「今日発車なし」とはそういう事情のうえでの言葉である。
 この歌は「オリエント急行」のかつての終着駅だったトルコのシルケジ駅での属目と感慨であろうか。かつて王侯貴族達が豪華列車から降り立った駅に、今は箒を売る男が行く庶民的な顔を見せている。「今日発車なし」とは、賑わった往時への懐かしみと寂しさであろうか。時は移り、王侯貴族が使った待合室はレストランになって、観光客で賑わっているそうだ。(鹿取)



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馬場あき子の外国詠 278(トルコ)

2019-06-22 19:29:42 | 短歌の鑑賞
 馬場あき子の外国詠37(2011年3月実施)
  【遊光】『飛種』(1996年刊)P121~
   参加者:N・I、井上久美子、崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、藤本満須子、
       渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:曽我亮子 司会と記録:鹿取未放
   

278 際限なき空の広さにふくりふくり隆起したやうなモスク見てゐる

      (レポート)
 どこまでも限りなく広がるトルコの青い空の下、ふっくらときのこ様にふくらんだドームが幾重にも連なるモスクが建っている。トルコブルーの空にブルーのモスク。イスタンブールでいちばんスケールの大きなモスクは「ブルーモスク=正式名称スルタン・アメフット・ジャミー」で、オスマン・トルコ建築の極みと言われています。内陣のブルーのタイルの美しさからブルーモスクと称され、たくさんの尖塔とドームで飾られています。(曽我)


      (当日意見)
★ふくりふくりという形容に味わいがある。(全員)

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馬場あき子の外国詠 277(中国)

2019-06-21 19:23:21 | 短歌の鑑賞
 馬場あき子の外国詠37(2011年3月実施)
   【遊光】『飛種』(1996年刊)P121~
   参加者:N・I、井上久美子、崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、藤本満須子、
       渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:曽我亮子 司会と記録:鹿取未放
   

277 かがやくはまことマロニエの実であるか仰げば口中に明るき秋陽

        (当日発言)
★「まことマロニエの実であるか」は疑問ではなく、感嘆の気分。(藤本)


           (まとめ) 
 日本の公園などでマロニエの木はよく見かけるが、あれはベニバナトチノキで、本物のマロニエ=セイヨウトチノキとは違う品種らしい。余談だが銀座のマロニエ通りに植えられているのはベニバナトチノキとトチノキであって、マロニエ通りに本物のマロニエは無いらしい。
 秋になるとベニバナトチノキにはトゲトゲの丸い実がぶら下がっているが、トルコのマロニエはどの品種なのだろうか。そしてその実はどんな形なのだろうか。旅の途上の心弾みが、ちょっと珍しいマロニエの実を見上げさせている。そこに異国の明るい秋の日が差し込んでくる。「口中に」と言ったところが実感を増している。(鹿取)


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