卒業式

彼女は無事だった。
まわりの何もかもが通常とは違うのに
早くも出勤しておられた。

さすがだ。
物資のいきわたらない中、ふたりの子の母として
奮闘しておられる。

大事なことなんで、も一回書いとこ。

さすがだ。


小学校でも昨日が卒業式の所が多かった。
6歳で入って12歳で卒業するワケだから
本当に思い出一杯だな。

夏にいなくなったしんちゃんも、卒業した。

髪こそリーゼントだったが、まともな制服をきて
長ったらしい祝辞も、おとなしくきいていた。

最後、きりっとした顔で体育館を退場する姿をみて
ホロっと泣けた。

「よぉ我慢したねぇ。」

フリマのママが逃避行して、ひきこもりになった子も
卒業式には堂々と参加していた。

うちの宝物より身長が高くなっていたが
顔つきは昔のままで、幼かった。

「よぉぐれもせんと、大きくなったなぁ。」

と思ったら、またホロっときた。


式がおわって、子供達が先生と最後のお別れをするのを
外でまっていた。

三月だというのに、冷たい風がびゅーびゅー吹いて
とても寒かった。

するとその中に去年卒業したが、就職も進学もできなかった
不良グループがジャージ姿でまじりはじめた。

どうやらしんちゃん達を待っているご様子。
紙袋の中には花束がいくつも入っていた。

帰ったはずの下級生の不良グループもいる。


なんだよ、なんだよ。
成人式かよ。


そこにしんちゃん登場。
ジャージの姉ちゃんから、紙袋を受け取ると
いったん消えた。

しばらくして、しんちゃん再登場。

黒い特攻服に、赤や黄色や金に銀
さまざまな刺繍をほどこした姿。

眉をひそめる保護者の皆さん。


でもね、しんちゃん。
保育所の時から君を知っているおばちゃんは

「小っちゃい特攻服やなぁ～。
このあと、何に使うんやろ。
資源の無駄使いやなぁ～。

最後の卒業式やから気合入ってんなぁ～」

としか思わんかったで。


じゃあね、しんちゃん。さようなら。