光のみちしるべ ~愛だけが現実~

私たちは皆、神様の子供。
内なる神の分光を輝かせましょう。
5次元の光のピラミッドがあなたを待っています。

動機付けの話(デイ利用につなげるために)2

2009年09月06日 14時48分44秒 | 認知症介護

 その日はすぐにやって来ました。みちしるべのパンフの表紙の絵を描くということをYさんは忘れておりませんでした。お迎えに行くと、「ああ、そうだったなぁ」とすぐに送迎車に乗り込んでくださいました。画用紙はこちらで準備していましたので、鉛筆と絵の具の一式をご持参されました。

 そして、みちしるべに到着すると、すぐに玄関外の道路に出られて、絵の構図を検討し始められました。8月の暑い日でしたので、スタッフが日傘をさして、一心不乱に描き始めたのでした。


そして、デッサンが終わると家の中に入り、絵の具で色つけが始まりました。途中でどんな色だったのか忘れると、何度も玄関の外に出られ、微妙な色の変化を確認して、再び家の中に入り描き始められました。

そして、出来上がったのがこの絵です。


 見事な絵でした。しかし、Yさんはまだ完成ではないと言いました。これから少しずつ筆を加えることはあろうかと言っておりました。(さすがプロです!)

その後はせっかくですので、お昼ご飯を召し上がっていただいて、それから帰宅されました。

 ケアマネさんは体験利用は大成功だと喜んでおりました。来週もお誘いすると、喜んで来て下さいました。そのときは、山形名物の“芋煮会”をしますとお伝えしました。

そのときお酒はふるまいませんでしたが、芋煮をたらふく食べると自ら立って踊りだされました。私も一緒に踊って、スタッフたちに手拍子と唄をうたってもらいました。とても賑やかな宴会のひとときとなりました。

  

こうしてYさんのデイ利用は順調にスタートしたのでした。完成したパンフレットを見て頂き、ご本人およびご長男さんに心からお礼を申し上げました。

 

まとめ

1.ケアマネさんからの情報を正確に聴き、分析する。
  しかし、ケアマネさんからの情報だけを鵜呑みにしない。
2.本人の生まれ故郷や仕事、趣味志向を聴く。
3.初訪問時にアセスメントをしない。ただ仕事の依頼に専念する。
4.相手が了解すれば日時のお約束までする。
5.初利用日以降の次の一手を考えておく。

 ケアマネさんからの情報は得てして一方的な見方であったり、偏った情報であったりします。ですので、あくまでも一情報として留めておき、どんな人なのかは自分が始めて会ったときの感性に委ねます。「Yさんはこういう人です」という決めつけが強ければ強いほど、ケアマネさんの主観が強くなっているので、すべての情報を鵜呑みにしないことが大切です。

 初めて訪問するときに、デイサービスの説明やアセスメント票に従ってお話しすると、すぐに「帰ってくれ」となりかねないので、いっさいアセスメントしませんでした。ただ言葉にしなくとも、ご本人からの返答や仕草、服装の様子等でだいたいの状況を把握することはできます。

 最初の目的が達成されることを見込んで、次の一手を考えておきます。(この場合は芋煮会)そうしないと、せっかくうまくいったことを次につなげられません。

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動機付けの話(デイ利用につなげるために)1 

2009年09月06日 09時41分25秒 | 認知症介護
 「888の衝撃」をちょっとお休みして、認知症ケアの話に戻ります。


 認知症の人の中には、なかなかデイサービス利用につなげられず、手をこまねいておられるケアマネさんがおります。それを利用につなげるためには、デイサービス側はどう対応するのか、これからの話はうまく利用につなげられたひとつの例です。ご本人に対して、どのような動機付けをするのかがとても重要なポイントになります。お読みいただければ幸いです。


                      


 みちしるべがスタートして間もない頃、あるケアマネさんが大変困った様子で相談に来られました。ご自分の担当(80歳代、男性 Yさん)の方をデイサービス利用ににつなげられなくて、途方にくれている様子でした。いくつかのデイサービスの見学に行っても、「あんなボケた人たちのところへ行く気なんかないよ」と、途中で帰ってしまい、どうしてもデイサービスにつなげられないということでした。

 お話しを聴いたあと、とにもかくにもご本人に会いに行くことにしました。訪問して大変驚きました。家中にとても素晴らしい水彩画が飾られていました。ご本人はプロの画家であり、認知症の症状が出ても描き続けられていました。しかし、散歩に出られると家に帰って来られなくなり、捜索願いが出されることもありました。

 たくさんの絵を見ていると、その中の一枚にあっと驚くものがありました。それは故郷の母の実家の風景画でした。私の少年時代に何度も母の実家に遊びに行ったときに見た風景でした。私はそのあまりの出来栄えに、ただ立ち尽くして感動していました。

 その私の姿を見た男性Yさんは、嬉しそうに「まあ、お茶でも飲みなさいよ」と言ってくださいました。聴けば、偶然にもYさんと私は同じ故郷の生まれでした。小学校、中学校の大先輩でした。〇〇屋さんの◇◇さんは元気なのか?とか、共通の知っているお名前おも登場しました。私は茶の間でアセスメントの話を始めるのでもなく、私はただただ感動して、「パンフレットの表紙の絵を描いてくれませんか?」とお願いしたのでした。

 みちしるべの話やデイサービスの話など一切しませんでした。みちしるべのパンフの表紙絵は、みちしるべの家の玄関を描いてほしいと話し、ぜひ送り迎えの車を出しますから一度絵を描きに来ていただきいとお願いしました。Yさんは二つ返事で了解してくださり、話しがまとまりました。

 話しがまとまったら、なるべく早い日のほうがいいので、同席したご家族(長男さん)とケアマネさんの同意を得て、絵を描きに来てくださる日を来ました。形としては絵の仕事をしに来ることになりますが、ケアマネさんの立場としては半日の体験利用ということになりました。

 Yさんは「ガハハハ!」と笑いながら上機嫌の様子でした。同郷の人が絵の仕事をお願いに来たと、大変喜んでおられました。


つづく
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動機付け(場面の切り換え) 講演の話しから

2009年09月04日 11時08分16秒 | 認知症介護
そのヘルパーさんは20代前半と思われる若い女性の方でありました。ご利用者さんのベッドから反対側の壁にぴったり背中をくっつけて、呆然と立ち尽くしておりました。

何が起きたのかは、すぐに想像できました。ヘルパーさんがデイサービスへ行くために、パジャマを着替えようとした際に、何のはずみでご利用者さんを立腹させてしまい、手を上げられたのだと思いました。いわゆる暴力行為というものになるのでしょう。手を上げられたヘルパーさんの経験度からいうと、すでに許容範囲を超えてしまい、どうしていいのかわからなくなったのだと思います。

ご利用者さんはというと、じっと目を閉じて、身体をくの字にして寝ております。身体に力が入っているようで、ワナワナと少しふるえているようです。

状況を瞬時に悟った私は、まずはヘルパーさんに「ご苦労様です。もう大丈夫ですので、ご安心ください」と声をかけて、別の部屋へ行かせ、ご利用者さんの視界からそのヘルパーさんが見えないようにしました。

次に、どのようにご本人へ声をかけるかですが、私は次のようにベッドサイドでお話しをしました。

「Sさん、今日はお銀ちゃんと一緒にお風呂に入るんでしょう!」

すると、突然上半身だけむくっと起き上がり、パジャマのボタンを外し始めました。
目はかっと見開いて、一秒でも早くお銀ちゃんと一緒にお風呂に入りたそうでした。

お銀ちゃんとは、水戸黄門に登場してくる“かげろうお銀”のことであり、由美かおるの当たり役であります。(現在は、疾風のお娟(えん)という名前で出ております)水戸黄門の人気を支えているのは、最後に印籠を見せる場面とこの由美おかるの入浴シーンです。この入浴シーンを見たい世の男性は数多くいらっしゃることでしょう。(私もその一人?)

ということで、Sさんもご他聞に漏れず、このお銀ちゃんの入浴シーンが大好きで、一緒に入る日だよと言われ、思わずパジャマを脱ぎ始めたのでありました。

すかさず私は、

「あ、お銀ちゃんは、今、玄関の外の車に乗って待っているから、一緒に乗って行こう!」と説明しました。すると、さっさと自分からベッドを降りて、玄関へ向かって歩き出しました。

あらかじめ玄関のドアは開けられていて、車が見えるようにしてあります。靴もそろえてすぐ履ける状態です。そして、送迎車のドアも開けられていて、中から女性スタッフに「Sさん、どうぞお乗りくださ~い」と黄色い声をかけてもらいました。

そして、いとも簡単に送迎車に乗り込んだSさんは、みちしるべに行ったわけです。パジャマを着ていますので、入浴は一番目に入ればと思いました。それともトイレに入ったところで、浴室のドアを開けておいて浴槽のお湯をかき回せば多量の湯気が出てくるので、それを見てすぐにお風呂に入られます。

認知症の人にとって、“場面の切り換え”(場面の展開)は、なかなか苦手なものです。一つの場面に気持ちよく落ち着けば落ち着いてしまうほど、次の場面へ切り換えは難しくなります。この場合、自宅のベッドから送迎車に乗るという場面の切り換えをしなくてはなりません。次の場面へ切り換える理由や必要性を認知できれば、人はすぐに行動に移しますが、その認知が困難なときは動く必要性を感じません。まして、ベッドの上で気持ちよく眠っていたいという思いが強ければ、次の場面のことを認知できないのですから、起きてデイサービスにいくことは益々困難となるでしょう。

しかし、私たちはその壁を打ち破る動機付けを行っていかなければなりません。そのヒントは意外とユーモアにあふれていて、身近なところにあるといえると思います。私たち専門職がそのことが見えないだけです。


<まとめ>

1.動機付けは、ご本人の趣味嗜好を事前に的確につかんでから行うこと。
2.人が移動する“動線”をふさがないこと。
  ①玄関のドアを開けて車が見えるようにしていること。(車のドアも開いている)
  ②すぐに靴を履けるように、揃えておいてあること。

せっかく玄関まで行っても、靴が出されていないと、靴を探す時間をロスしてしまいます。その間にそ本人の気持ちがそがれてし、再び部屋に戻ってしまいます。そうならないように靴をそろえおくことは鉄則中の鉄則です。また玄関まで来たとき、ドアが開いていて外の車が見えれば、ご本人気持ちは家の中から家の外へと向かい、一直線に送迎車に乗車するという目的がさらに強化されます。
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年輪さんで講演しました

2009年09月03日 14時55分57秒 | 認知症介護
8月24日(月)午後6時半から8時まで、西東京市にあるサポートハウス年輪さんで認知症ケアの講演をいたしました。職員さんが対象であったので、認知症デイサービスやグループホーム、ホームヘルプサービス、居宅介護支援事業所で活躍されている方々が私の話に耳を傾けてくださいました。人数は50人ほどでした。

講演のテーマは次の通りです。


24時間365日の年輪デイホームを目指して
認知症の人の新しい力を引き出す
~築40年の古民家を使ったみちしるべの実践より~


私は最初から用意した147枚の写真をスクリーンに一枚ずつ映しながら、実際のケアの様子を紹介していきました。築40年の古民家はバリアだらけです。玄関に入るところは、大きな石がゴロゴロしているし、上がりかまちには手すりはないし、小さな段差があちこちにあるし、バリアフリーの大きな施設と比較すると、考えられないような構造の家です。そういうバリアだらけの環境の中で身体ケアするときの注意点や、バリアによって身体機能が引き出されていくことの重要さをお話しさせていただきました。

次に認知症の人をデイサービスに利用していただくときの動機付けの話をしました。ご本人にとっては、デイサービスに行くことに全くの必要性を感じられない人もいます。行く理由がないからです。そのとき、どのようにアセスメント時にご本人とお話しするのか、どんな動機付けをしてくるのかのお話しをしました。

また送迎時に車に乗らない人に対しての動機付けのお話しもしました。私としてはユーモアに話したつもりでしたが、皆さん一生懸命に聴かれていたので笑いが取れず、一人浮いてしまいました。(笑) それは皆さんが、現場で活躍されている方々ばかりなので、こんな場合どのように声をかければいいのかと真剣に聴かれているからだと思いました。

例えば、朝のお迎え時、男性ご利用者さんのご自宅まで行くと、奥様がすぐ玄関に出て来られて、「今日は行けそうもありません」と言って来られました。奥様の申し訳なさそうな表情を見て、すぐ家の中に入らさせてもらうと、壁にぴったりと背中をくっつけて立ち尽くしているヘルパーさんの姿があったのでした。

(つづく)
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バリアの中での認知症介護2

2009年07月02日 11時17分35秒 | 認知症介護
昨日お会いした方が今日も同じ人であるという見方は、
ほんの少しの違いにも気づかず見逃してしまうので、
必ず昨日とは何かが違っているという前提でお会いしています。

例えばデイサービスであるならば、
昨日帰宅したあと、ご家庭で何が起きているかはわかりません。
一過性の脳梗塞が起きていたり、
転倒して打撲や骨折しているかもしれません。
まして、きちんと食事を取っているかわからない方もいます。
にも関わらず、心身の変化を見逃してしまうことが多くあります。

朝、お迎えに行ったときの表情、
歩く時の足取り、身体の傾き、
お話しする言葉、声の張り、
笑顔が消えている、
視線が合わないなど、
この他にも変化を見逃さないポイントは幾つもあります。

また昨夜からの水分補給が不十分であれば、
それなりの症状やサインが出ているはずです。
精神活動にも影響を及ぼしています。
送迎車の中でそういう症状が認められた場合、
みちしるべに到着してまず何をすべきかを考えます。
便秘や空腹状態の方も同様です。

当然、バリアの中でのケアは、
昨日と同じケアではなくなります。
昨日と違う心身状態にあるからです。

そのことがわかるようになれば、
昨日の介護と違う方法を考えて実行していきます。
しごく当たり前のことです。


つづく
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バリアの中での認知症介護

2009年07月01日 13時13分08秒 | 認知症介護
いろいろ思うことはあるのですが、
少し認知症介護のことを引き続き書きます。

まったく改修していない築40年の古民家は、
どこもかしこもバリアだらけでした。
廊下はゆがんでおりましたし、
台所の床もところどころフワフワする部分がありました。

そういうところに限って、
「ここ危ないよ」とわざわざ右足で力強く踏みしめながら、
教えてくれるご利用者さんがおりました。

手すりとかスロープなどはないし、
段差は当たり前の家でした。
その中を縦横無尽にかっ歩されるのですから、
バリアフリーの施設とは全く違う介護が要求されます。

スタッフとしては家の構造の隅から隅まで、
バッチリ覚えておかなければならないし、
どこにバリアがあるのかも頭の中に叩き込んでおかなければなりません。

さらにご利用者さんの身体状況は一人一人違うので、
その方に合った身体介護をしなければなりません。
加えて毎日同じ健康状態とは言えません。

その日の天気や湿度、気圧などによって、
その方の身体状況は微妙に変化していきます。
昨日とても元気だったからといって、
今日も同じ体調であるという保証はありません。
特にこの梅雨の季節は脳への影響も大きく、
脳梗塞などの発作が起きやすいときでもあります。

何気なく後ろから立位や歩行が傾いていないかとか、
話す言葉や視線がはっきりしないかなど、
何気なくかつ注意深く観察する必要があります。
まぁ、介護職としては当たり前のことなのですが、
この視点が抜け落ちている方が数多くいらっしゃいます。
これは施設も在宅も同じ基本です。


つづく
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認知症ケアの講演

2009年06月30日 16時33分04秒 | 認知症介護
さて、みちしるべを何故閉じたのかという話しの前に、
4月11日(土)新宿の住友ビルのスカイルームで講演した内容を書かさせていただきます。
主催はリスクマネジメント協会さんでした。
約70名の人が全国から集まって来られ、大変嬉しい限りでした。


この講演で5年間にわたる認知症ケアの実践についてお話をいたしました。

1)バリアだらけの中でのケア(築40年の古民家)
  バリアを活用してその人の持っている身体機能を引き出す方法
  死角だらけの中で、いかに五感をフル活用するか
  
2)外出しようとしない人への送迎方法
  迎えに行っても車に乗車しない人がホクホク乗って来る方法
  例① ベッドから起き上がらない人
  例② テレビの前から動かない人

3)自然の中でのケア
  ①畑(農業体験農園)を耕す
  ②野菜の種まきや苗の植え付け
  ③作物を育てる(水遣り、害虫の駆除、草刈り)
  ④収穫の喜び

  実際に作った野菜
  (キャベツ、ジャガイモ、枝豆、とうもろこし、胡瓜、トマト、茄子、インゲン、苦瓜、長ネギ、ホウレン草、
   小松菜、春菊、人参、大根、カブ、白菜、ブロッコリー、カリフラワー、里芋などなど)

4)街の中でのケア
  散歩(公園)、買物(スーパー、花屋)、その他(喫茶店)

5)生活の中でのケア
  調理(畑で収穫した野菜、お店で買った食料品等)
  町内会のゴミ置き場清掃
  布巾や風呂敷き、座布団などの縫い物

6)所在不明になったときの探し方(見つけ方)


この1から5までは転倒や火傷等のリスクが必ず伴います。
これらのことを写真をお見せしながら講演いたしました。

講演後、「何故、やめてしまったんですか?」という質問を受けました。
これに対しては、笑ってごまかすしかありませんでした。(すいません)
中には閉鎖したことを怒っておられる方もおりました。
また、コンサートでもないのにお二人の方から花束をいただき、
感謝感謝のひとときでした。


ちなみに上記のような内容でよろしければ、全国何処にでも講演に行きます。
講演料などは相談に応じます。
連絡先はこちら⇒dream_and_vision21@jcom.home.ne.jp
みちしるべは閉鎖しても、そこで得たものを必要とされる方々と、
分かち合えることが出来れば、この上ない喜びでもあります。
皆様のご連絡を心からお待ちしています。






ということで、なぜ閉鎖したかの話しは次回に‥
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「ここで遊んでていいのかい?」

2008年03月21日 13時51分58秒 | 認知症介護
先日の昼食、T子さんと同じテーブルで食べていました。
一気にご自分の好きなおかずを食べては、
食べないで残っている私のおかずに、
じっと釘付けになっていました。

「これ食べたいのかい?」と聴くと、
「うん」とうなずく。

「じゃあ食べていいよ」とお皿を出しだすと、
「ありがとう」と箸で取ってご自分のお茶碗に入れ、
美味しそうにムシャムシャ食べ始めた。

するとおもむろに顔を上げると、
「あんた、ここで遊んでいていいのかい?」
と微妙な一言‥。

「あのね、おいらの女房も娘も昼間働いているからね、
 おいらは日中ここで過ごして、夜から働いているんだよ」
と答えた。

「そうかい!?」
と半信半疑の相槌。
ちょっと疑惑の眼差しである。
どうも真昼間から遊んでいるように見えるらしい。

って、ちょっとおいらは社長であるぞよ。
遊び人のように仕事が出来るほどの余裕はありません。

でも、これって最高のほめ言葉なのかも!?
私のケアが遊んでいるように見えるのだから、
これ以上の高い評価はないだろう。

でも外部評価の人たちが見たら、
きっと最低評価になるかもなあ。。。。。
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最後の砦

2008年02月11日 08時08分33秒 | 認知症介護
昨年9月からここのブログがずっと放置状態になってしまいました。
スピリチャル的介護観をまとめているうちに、
内面の霊的変化が驚くほどの勢いで始まりました。
そのため、肉体がその霊的な変化に対応できず、
頭痛、めまい、倦怠感などの症状がずっと消えませんでした。

現在はスピリチャル系の仲間が必死にサポートしてくれたおかげで、
どうにか心身のアンバランス状態から脱出しつつあります。
2月2日(土)には、さる神社よりみちしるべを御祓いしていただきました。
本来ならばオープン時に行っていなければならなかったのですが、
遅まきながら場所(家)と心身の浄化のため御祓いしていただきました。

私はクリスチャンなので日本神界の神々よりも、
イエス・キリストやマリヤ様、大天使たちにお願いすることが多いのですが、
今回は天照大神宮にお願いしたと謂えます。
まぁ、すべては大いなる神様に繋がっておられるので、
私としてはあまり気にしておりません。



さてさて本日はスピリチャル世界のことを詳しく書きたいわけではありませんので、
ようやくここから本題に入ります。


みちしるべをご利用されている方々のおよそ半数以上は、
他のデイサービスでは対応困難となってしまった方(強制終了)、
あるいは何処のデイサービスにも繋がらなかった方(ご本人が必要としない)、
またはそれまでのデイサービスにご家族が見切りをつけた方々です。

ですので、みちしるべの私たちがお手上げになれば、
同時に在宅生活が終了となってしまう可能性が大です。
よってケアを行なうスタッフはそれ相当のケアレベルが求められます。

例えば大規模施設に見られがちな集団的なケアは、
何一つみちしるべでは通用いたしません。
すべての基本は個別ケアです。
それは一人一人の認知症の症状と進行具合によって、
柔軟的にケアを変えていくということです。

逆にご利用者様の内的変化に気づかないと、
旧来のケアを疑問も持たず続けていくだけになります。
その結果、みちしるべに馴染んでいた方が、
自分の居場所を見つけられず何度も外へ行かれたりします。

人はどうしてもパターン化されたケアを、
毎日事務的に機械的に行いがちになりますが、
それでは相手の変化に気づくことができません。
スタッフ自身が変わらないからです。

基本的なところでも、
バイタル(体温、血圧、脈、顔色等)、排泄の有無、昨晩の睡眠状態、食事や水分の摂取量、服薬等があげられます。
またその日のお天気(気温、湿度、気圧等)、季節の変わり目によっても左右されます。
つまり今日お会いするご利用者様は、昨日と同じではないということです。
上記のことを総合的に把握し、
必ず昨日とは"変化"していることを前提としなければなりません。
それを踏まえて柔軟的に固定概念を持たず、
本日のご利用者様とどう過ごすのかを瞬時に決めていくのです。

小規模なところは大施設と違って、
一人一人の方々と正面から向き合える場所です。
いえ、向き合わなければ何も出来ない場所です。
ケアスタッフの一人一人の力量が顕著に現れる場所でもあります。

もし、みちしるべのスタッフに応募しみようとお考えの人は、
それなりの覚悟とモチベーションの高さが求められます。
そうでなければ『最後の砦』となっているみちしるべで、
ご利用者様と過ごすことは大変つらくなるでしょう。
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ご家族の思い

2007年06月22日 06時47分20秒 | 認知症介護
先日、ある特別養護老人ホームでT子さんの担当者会議が開かれました。
集まったのは召集したケアマネジャーさん、福祉用具の会社の方、
ショートステイ担当の相談員さん、そして私とご家族(息子さんの奥様)の5人でした。

そして、それぞれのところから現在の利用状況が報告され、
特に話し合われたのは次の3点でした。

1.みちしるべ(デイサービス)での利用状況。(写真を提出し報告しました)
2.家庭における様子(特に夜間)とご家族の対応。
3.ショートステイ時の“帰宅願望”。

この3点の中で、特にご家族が言及されたのは、“帰宅願望”についてでした。

「帰りたいという場所が必ずしも一つとは限りません。
生まれた家、嫁いだ家、今の家、それとも場所ではなく時代を示しているときもあります。
だから、義母が家に帰るということを言うのは、
まだまだ主張するものがあるということで元気な証拠です。
それすらも言えなくなったら義母ではなくなってしまいます」

この言葉に出席していた私たちは、思わず静かになりました。
厳粛な言葉を聴くように黙ってその言葉に耳を傾けました。

“帰宅願望”という言葉は、とかくマイナスの意味で使われることが多く、
その一言で、相手の心理状態をひとくくりにしてしまう危うさがあります。
その言葉を使えば使うほど、相手の本質から離れ見えなくなってしまうからです。

では、なるべく専門用語を使わずに、
その人が今一番求めていることを知る手立てはないのでしょうか。
それは、その人が話してくれる言葉に耳を傾けることでしょう。

私だって、ふと田舎に帰りたくなる帰郷願望があります。
都会の喧騒から離れて故郷に帰りたくなります。
それは単に実家の家族に会いたいということの他に、
昔遊んだお寺の境内、田畑や川、木造の古い校舎などで、
もう一度無邪気に遊びたいということであったりします。

しかし、その時代をどんなに懐かしがっても、もう戻れないことはわかっています。
だから、何とか気持ちの折り合いをつけて、日々の生活をしていきます。

認知症であるということは、
その病気のために心の折り合いをなかなかつけられないのかもしれません。
だからこそ、傍らにいる私たちにその思いを聴いてほしいのだと思います。

ご家族の言葉は、
「その思いさえ話さなくなったら、その人自身でなくなってしまうのだ」
ということだと思います。

とても重い言葉であり、考えさせられる言葉でありました。
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ショートステイ

2007年06月10日 16時55分17秒 | 認知症介護
ご利用者さんがショートステイを利用されるときは、
家族ではないのにいつもながらに緊張します。
会えない期間が寂しいということもありますが、
利用先の施設でどのように過ごしているんだろうかと思うからです。

そしてショートステイで利用する施設が、
特別養護老人ホームであれ、老人保健施設であれ、
その実態を知り尽くしている自分だから、
どのように介護されるのかが予想がつくからです。

私自身、ある施設(特養も老健でも)で、
ショートステイ(緊急ショートステイも含む)を担当していたことがあります。
そのとき一番心がけていたことは、
利用する前と同じ状態でご自宅にお帰りになっていただくこと、
この一言に尽きました。
しかし、こんな簡単で当たり前のことがとても難しいのです。

ある日曜日、施設から「ベッドから転落した」との連絡を受けて、
急遽出勤し、病院へ自ら運転し緊急受診したことがあります。
レントゲン検査の結果、左上腕を骨折していたことがわかり、
すぐに入院手続きを行ないましたが、
病棟でご家族が入院を拒否し自宅へ連れて帰ってしまいました。
そのご家族は違う病院へ入院させたいと思っていたからです。

しかし、その病院では入院を許可されず、
結局通院しながらの自宅療養となりました。
私は何度もお見舞いに伺いましたが、
そのつど門前払いを受けました。

「一番安心なところと思って預けたのに、そうではなかった」
ご家族の言葉はずっと心に残りました。
今も消えることはありません。
幸いその骨折は完治し、
やがてデイサービスのご利用者としてお迎えすることになります。
(このことはいつか「プロフェッショナル」の中でふれることになると思いますので、
今ここで詳しく記述するのは避けます)
このときから、いかに元気な姿でご自宅に戻っていただくかが、
この頃の私の命題となりました。

また介護者がぎっくり腰で倒れたとか、入院してしまったとかで、
緊急ショートステイでご利用していただいたこともあります。
知らせがあればすぐにご自宅まで訪問して、
お年寄りを車に乗せて来たこともあります。

ショートステイがなければ介護者の方がつぶれてしまうかもしれない。
この危機感は常にありました。
だからこそ、その介護者の負担が軽くなるように、
帰宅後のことも考えてケアしなければなりません。
でも、施設職員に“在宅介護”の意味を知る者は少なく、
在宅の視点で施設介護を行なうのはなかなか困難なことでした。

さて、話は少し脱線しましたが、
みちしるべのご利用者さんたちがショートステイ先から、
無事に在宅に帰ってくるようにと願うばかりでした。

しかし、その願いも空しく、ショートステイを利用したことにより、
在宅生活に終止符を打たれた人がこれまで3人いらっしゃいます。

1.38度台の発熱で夜間救急車にて搬送され、入院先で寝たきりになった人。
2.利用前は歩行できていた人が利用後は車椅子となってしまった人。
3.利用後、両下肢(特に膝下)に浮腫ができて帰宅された人。
  椅子に座りっぱなしであったとのこと。

詳しいことはこの程度に留めておきますが、
3人とも同じ特別養護老人ホームでショートステイをご利用されました。
そして3人のうち、すでに2人はもうこの世におりません。
残りの1人は施設に入居しました。

今までこんなことがあるから、無事に帰って来るだろうかと心配になります。
先日、初めて男性のIさんが二泊三日のご利用をされました。
その期間、ずっと気が気でなりませんでした。
その施設まで何度も会いに行きたいと思いました。

そして、先週1週間ぶりにIさんにお会いし、
とりあえずお元気な姿を見てちょっと安心しました。
しかし、ショートステイの影響が出始めるのはこれからです。
注意深く私たちは心身を見守りケアしていかねばなりません。

何故なら、このことをきっかけに、
認知症が大きく進行する可能性があるからです。
ショートステイ先での環境の変化、生活の違い、人の違い、食べ物の違い、
すべてに戸惑いと混乱を感じたことでしょう。

それから、ごく普通の在宅生活に戻るには、
もう少し時間がかかるからです。
みちしるべの役割はそんなところにもあります。
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思うつぼ

2007年05月29日 06時21分40秒 | 認知症介護
昨日の昼食は、三部屋に分かれてご飯を食べた。
四畳半のちゃぶ台で食べていると、
一番奥の六畳で食べていたk枝さんが、
ご飯の入ったお茶碗を持ってこちらにやって来た。

「ほれ、これ食べろ」
「どうしたの?」
「これ、オラが食べた茶碗だけんど、ちゃんと洗ったから」
と目の前にご飯を一膳置いていった。

私のご飯やお味噌汁が空っぽになると、
いつもお代わりに立ってくれる。
今日はテーブルが一緒でなかったから、
わざわざ出張して来てくれたのだ。

「ありがとう!」とお礼を言うと、
ニコニコしながら六畳に戻って行った。

その数分後、介助のためスタッフが席を離れたので、
フォローのために六畳に行くとK枝さんが手招きしている。

「ほら、これ食べろ」
と、またしてもご飯を差し出された。
自分の茶碗を持って来たはずなのに、
もう新しい茶碗にご飯が盛られている。

(これを食べたら3杯目だぞ)
と内心苦笑していると、
「あんた、これ食べなさいよ!」
と隣のM女史がおかずを差し出した。
「え~」と驚いていると、
「まだ若いんだから、これぐらい食べれるでしょ?」
まるで挟み撃ち攻撃にあっているかのような気分。

さらにK枝さんが、
「これ食べたら畑さ行くからなぁ」
と追い討ちの言葉。
これではまるで相手の思うつぼではないか。
最初からその狙いだったのか。。。

「これ全部食べたら、デブ練馬になっちゃうよ」
とミス練馬をもじりながら言うと、大爆笑の面々。
かくして、またまた体重の増えた昼食でありました。
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たかが松、されど松

2007年05月22日 06時25分25秒 | 認知症介護
見事である。
芸術的なのである。
道行く人が足を止めて見上げている。
中には口をあんぐりあけて見上げる人もいる。
携帯で写真を撮っている熟年男性もいる。


何の話かというと、みちしるべ玄関口にある黒松が、
ここ2年間、全く手入れしていなかったために、
伸びに伸びて荒れ放題になってしまっていたのです。
これでは“人”を呼ばない家になってしまいそうです。
新規のご利用者様も玄関に入らず帰ってしまいそうです。

というわけで、事態を重く見た私はようやく重い腰を上げ、
植木職人さんに頼んで剪定してもらいました。
しかもその職人さんはご利用者Sさんの旦那様であります。
女性スタッフが、「かっこいい~」としびれるほどの、
今時の男性にはない、いぶし銀の風格があります。

朝の送迎から戻ると、すでに作業は始まっておりました。
ちらちらと男性ご利用者のUさんは、
家の中からその様子を何度も眺めています。
とても気になるようです。

「オレ、外へ行って、何か声でもかけたいなぁ」
と、またまた社長が留守なので気にしてくれています。
剪定中から通りすがりの人が足を止めて眺めています。
中には30分ほど眺めている人もいます。

朝から始まった作業はお昼過ぎに終わりました。
冷たいお茶を持っていくと、
男性ご利用者のUさん、Mさん、Sさんがこぞって玄関へ飛び出しました。
そして素手で剪定で切り落とした松を片付け始めたり、
松を見上げながら話し始めたりと、
その素晴らしい出来栄えを褒め称えておられました。

そして最後は、みんなで完成記念撮影会。
黒松の下で思い思いの表情で写真に納まりました。
これでまたひとつ、みちしるべ名物の黒松が復活しました。
目出度し、目出度し。

      
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呼び名

2007年05月20日 10時44分15秒 | 認知症介護
これまで数多くの認知症の人たちと出会ってきたけれど、
みちしるべほど多種多様の呼ばれ方をしたことはありません。

簡単に紹介すると、

①社長
②せんぱい
③あいつ
④ニヤリスト
⑤あんちゃん
⑥あんた!

それぞれの会話は、お腹がよじれるほど面白い。

①「社長、ごはんだよ~」
 「社長、お帰り」
 「社長、一緒に○○○さ、行くべ」

②「せんぱい、大丈夫?心配で見に来たよ」
 と事務所に来られる男性ご利用者さん。
 
③「あいつったら、偉くなっちゃったら、最近は口も利いてくれないのよ。
  昔はみんなの使いっぱしりの仕事してたくせにさ」

④「あいつはニヤリストなのよ。女性にもてるらしいから」

⑤「いつもあんちゃんがね、家まで迎えに来てくれるの」
 「ほら、あんちゃん、畑さ行くよ」
 
⑥「あんた!いい女の人いるんだけど、独身?」

  
とまあ、こんな感じでしょうか。
一番呼んでくれるニックネームは「社長」ですね。
③④は同じ女性ご利用者さんで、いつもからかわれてばかりです。

これらの会話を実際に聴きたい人は、ぜひ一度みちしるべへ。
“介護”の関係を超えた世界がここにあります。
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留守のあいだに

2007年05月13日 19時24分50秒 | 認知症介護
みちしるべは築40年の古い家ですので、
荒っぽく使用するとすぐあちこちにガタがきてしまいます。
大家さんからいただいたガステーブルも、
とうとう左側のコンロの火が点かなくなってしまいました。
このままでは明日からのお味噌汁やお粥作りに支障をきたしてしまいます。

それですぐ東京ガスさんに新しいガステーブルを注文しました。
さっそく翌日の午前10時半に、取り付けにやって来てくれました。
でもちょうど、私は送迎の運転中で不在でした。

するとご利用者のUさんが、
「今、社長が留守だから、オレが代わりに立ち会うよ」
と六畳の部屋から台所へ来てくれました。

Uさんのきびしい目が光っているせいか、
二人の東京ガスの人たちは心なしか緊張した面持ちでした。

古いガステーブルを取り外すと少し汚れていたので、
「雑巾ありますか?きれいに拭きますので」
とひきつった笑顔で言われました。

「おお、サービスいいねぇ。ついでに料金もまけてよ!」
とするどい突っ込み。
「え~、料金は多少値引きしておりますぅぅぅ~」
と言葉がうわずる東京ガスさん。

そんな会話のやりとりに誘われて、
「おや、どうしたの?」と、
同じく男性ご利用者のMさんも台所にやって来た。
う~ん、監視の目が二人になってしまったぞ。
ますますぎこちない東京ガスのお二人さん。

そして、きわめつけは保証書の欄に、
あの世間を騒がした“リ○ナイ”の文字が踊っていたので、
それを見たUさんがすかさず、
「リ○ナイで大丈夫かぁ!?」とダメ押しの言葉。

東京ガスの人たちはタジタジとなり、
リ○ナイの説明をするのに四苦八苦していたそうな。


さてはて、そんなこんなで、新しいガステーブルはすこぶる調子がよく、
ますます料理の腕がひきたちそうです。

私の留守中に立ち会っていただいたUさん、Mさん、ありがとうございました。



       
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