光のみちしるべ ~愛だけが現実~

私たちは皆、神様の子供。
内なる神の分光を輝かせましょう。
5次元の光のピラミッドがあなたを待っています。

でぇ、どうするん?小規模多機能ホームみちしるべ(胸騒ぎの認知症ケア)本編①

2018年02月09日 22時48分17秒 | でぇ、どうするん?~胸騒ぎの認知症ケア~

本編序章


今、愛ならば何をするだろう…

視界ゼロの濃霧から突然あらわれた「みちしるべ」

何度も目の前に現れては消えた「みちしるべ」


それが再び目の前に現れた。

あきらめず、あきらめず、

ただそれだけを心に想い、

魂に刻み込んだ「みちしるべ」


「行きなさい!」と、

これまで出会った大勢の人たちの声が聞こえる。

「進みなさい!」と、

寝たきりのお年寄りや認知症の人たちが叫んでいる。

魂の叫びが聞こえる。

みんなが私に叫んでいる。

「踏み出しなさい!一歩踏み出しなさい!」

「進みなさい!立ち止まらず、前に進みなさい!」

悩むことなんかない! 迷うことなんかない! 怯えることなんかない!

 

今、愛ならば何をするだろう?

そんなの決まっている!

考えなくても決まっている!

この世に生まれる前から決まっている!

「みちしるべ」をやる!

ずっとずっと心に誓っていた。


ああ、神様、それでも恐れにおののいています。

ああ、神様、力をください。

恐れに負けない強さをください。

一歩踏み出す勇気をください。

愛と共に歩むことを助けてください。

神様、この叫びが聞こえてますか?

いつも共にいてくれてありがとう。

一緒に歩いてくれてありがとう。

 

 

2004年 by 鈴木実

 


でぇ、どうするん?(胸騒ぎの認知症ケア)送迎編⑰

2018年02月07日 14時58分13秒 | でぇ、どうするん?~胸騒ぎの認知症ケア~

 団地の2階に住む野島さんはおひとり暮らし。

お迎えに行くといつもベッドの中でした。

 

昨夜は何時まで出かけていたのでしょう?

それに朝ごはんは食べたのでしょうか?

 

「おはようございます。お迎えにまいりました」

「う~ん、今日は行かないで寝ているわ」

「今日は書道の生徒さんが5~6人集まって来ます。野島先生が来られないと困ります」

「本当に5~6人も来るの?」

「本当です」

「どういう人たち?」

「この近所に住む方々です」

「そう、じゃあ仕方ないわね」


ということで野島さんは

ゆっくりと起き上がりました。

朝、娘さんから電話が入っているので、

一度は起きて着替えはすんでいます。

でもまた寝てしまうので

みちしるべに行くことを忘れてしまいます。



野島さんはデイサービスに行くという意識は

まったくありません。

みちしるべという寄合所に集まって来る人たちに

書道を教えにいくという感覚なのです。

だから私もスタッフも利用者さんたちも

その野島書道教室の生徒なのです。


ときにはスタッフのお子さん(小学生)が来て、

小さい子にも教えてくれます。

やさしく、真剣に教えてくださいます。

その姿は凛としたりっぱな先生です。


その詳しい様子はまたのちほどお伝えすることにして、

野島さんはお茶を入れたり、昼食準備、お掃除、洗濯干しといつも大活躍です。



さて、この送迎編で登場した方々、

これから登場する方々、

それぞれにたくさんの名場面が生まれました。


認知症ケア なんて大げさなものではありません。

人と人とのふれあいのドラマです。



では、次をお楽しみに。



 




でえ、どうするん?(胸騒ぎの認知症ケア)送迎編⑯

2018年02月05日 20時01分20秒 | でぇ、どうするん?~胸騒ぎの認知症ケア~

送迎編 最後の最後の登場は 野島さん(女性 80歳代 要介護3)です。

この方のことを忘れるところでした。

申し訳ございません。

 

団地に一人暮らしの野島さんは、

いつもひとりで買い物やお散歩に出かけます。

夜9時頃でも駅前のスーパーに買い物に行かれます。

雨がふってもこわれた折りたたみ傘をさしながら出かけられます。

その姿はまるで一匹狼の侍のようでもあります。

 

みちしるべオープン前、

お散歩の途中、熱中症で倒れて救急車搬送された方です。

道路でほとんど意識消失状態だったところを

通行人の方が見つけてくださり、

命びろいされた方です。

それなのに、まったく懲りることなく

病院から無断外出されて、

捜索願いを出され、

見つかったときは両腕をしっかりと押さえられながら病院に戻られた方です。

それはまるで脱走に失敗した囚人のようであったとか、なかったとか。

 

みちしるべのオープン前からそのような相談の電話があり、

まだお会いしたことのない方なのに、

地域を捜索したことがありました。

ですから、お会いする前から

すでに顔なじみの関係のように感じていました。

 

書道教室の先生をされていた野島さんに、

みちしるべで書道教室を開いていただきたいという思いで

お会いしに行きました。

 

「野島さんに教えていただきたい生徒がすでに3~4名集まっています」

「ああ、そうなの。じゃあ、行ってみようかな」

 

ということでご利用が決まりました。

ご家族もこれで一安心といったところでした。

 

でも野島さんもご多分に漏れず、

みちしるべに行くことなんか忘れてしまい、

朝の送迎時はいつもベッドで寝ているのでした。

 

 


でぇ、どうするん?(胸騒ぎの認知症ケア)送迎編⑮

2018年02月04日 21時39分57秒 | でぇ、どうするん?~胸騒ぎの認知症ケア~

 

はたして神谷さんはこちらが拍子抜けするほど、

 

すんなりとごく自然とすんなりと玄関に入りました。

 

そしてくつを脱ぎ、奥の部屋まで来てくださいました。

 

あまりにも簡単であっけなかったため、

 

他のデイサービスでは玄関の中に入らなかったというのは作り話か?とも思いました。

 

 

 

 

しかし、本当の神戸さんが現れるのは時間の問題でした。

 

いったい何人のスタッフが

神谷さんの洗礼を受けたことでしょう。

 

その話はまた後日に。



「根拠のない自信とは

覚悟が決まっているか否かの違いだけだ」

と感じました。

 

 

 


でぇ、どうするん?(胸騒ぎの認知症ケア)送迎編⑭

2018年02月04日 10時04分01秒 | でぇ、どうするん?~胸騒ぎの認知症ケア~

 

初めてお会いした日、

私は神谷さんに気に入られたようで、

何度も

「りっぱな先生じゃ!」

と言われました。


まずは最初のコンタクト成功です。




私はこの日(つまり初回アセスメントの日)、


なぜ前のデイサービスでは玄関から中に入らなかったのか?


という質問をしませんでした。

私は過去の神谷とお会いしたかったのではなく、

現在の神谷さんとお会いしたかったからです。


前のデイサービスでの神谷さんを知ることは重要なことでしょうから、

きっと他のデイの方ならきっと尋ねたはずです。

そして、自分のデイではどう対応し受け容れるのかを検討するはずです。

でもそんなことは私の流儀ではないので、

知ったところで過去の繰り返しになる可能性が高いので、

知らないままでいたほうがよい場合もあります。


無事、お話がすんで、神谷さんは最後まで上機嫌でした。

そして、いよいよみちしるべの利用が始まりました。


送迎の朝、相談員と介護スタッフがお迎えに行きました。

神谷さんの着替えは終わっていたものの

ベッドの中で過ごされていました。


この場面に遭遇したら

(どうしよう?)と思いますが、

介護スタッフが唱歌などの歌をうたい、

相談員はご家族と神谷さんにお話をしながら

上手にベッドから起こして玄関に行きました。


(スタッフたちはとても歌がうまい!)


無事に送迎車に乗車したところで、

娘さんがポロポロとあふれる涙をおさえることができずに泣き出しました。



「なんだか情けなくなって・・・」



その言葉と涙の中に

これまでのご苦労が凝縮されていました。

娘さんたちの思いが詰まっていました。


相談員(つまり私の妻)は、


「私たちがいます! 

 だから大丈夫です!」



毅然と娘さんたちに言いました。


娘さんたちはその言葉をどのように受けとめてくれたでしょうか。

私たちには淀みなく、迷いなく、

言い切ることの力強さを必要とされます。


根拠のない自信でも

自信がなければ言い切れません。



さあ、無事に送迎車に乗ったからといって

まだ安心はできません。


はたして、神谷さんは

みちしるべの玄関の中に入ってくれるでしょうか?


送迎車はどんどんみちしるべに近づいていきます。

私は高鳴る心臓のドキドキをワクワクに変えながら、

その到着を待ちました。



つづく




でぇ、どうするん?(胸騒ぎの認知症ケア)送迎編⑬

2018年02月02日 19時31分10秒 | でぇ、どうするん?~胸騒ぎの認知症ケア~

でぇ、どうするん?(胸騒ぎの認知症ケア)送迎編 最後の登場は神谷さん(要介護5 90歳代)です。

 

九州の宮崎県で教員をしていた神谷さんは、

教頭まで職務をまっとうされた大変立派な方です。

しかし、アルツハイマー型認知症になられてから生活は一変、

穏やかな性格は何処かへ隠れてしまい、

つねに人に対してきびしい言葉を言ってしまうのでした。


みちしるべにご依頼があったとき、

じつは他のデイサービスに通っておられました。

しかし、ふたりの娘さんの話によると、

送迎車から降りても玄関の中に入らなかったとのことです。

それは何故か?

残念ながらわかりません。


じつはそのデイサービスは特別養護老人ホーム併設のところでした。

しかも私が働いていたところと同じ社会福祉法人でした。

いうなれば私の古巣ともいえるところです。

当時まだオープンしたてだったその施設は、

建築前の設計段階からかかわっていました。

私はそこでたくさんのお年寄りが、

楽しく幸せにすごしている風景を夢見ていたのですが、

なぜか途中から制約がきびしくなってきて、

その新しい特養のオープン直前に

新しい冒険の旅に出るため退職したのでした。


ですから、その施設の玄関の中に入らないということを聞いて、

少なからずショックを受けました。

そんな施設をつくる思いはまったくなかったからです。


神谷さんのためにひとりの職員がつくようになり、

対応に苦慮した施設側から利用を断られた、

というのが娘さんたちからのお話しでした。

このケアマネジャーさんも同法人の職員さんでした。


でもどうして玄関の中に入らなかったのか、

何が一番の理由で利用をことわったのか、

という情報提供は何もありませんでした。

私も聞きませんでした。

 

 

お断りされた娘さんたちが、

必死で受け容れてもらえそうなデイサービスを探して、

ケアマネさん抜きでコンタクトを取ってきたのでした。


神谷さんのご自宅で初めてお会いしたとき、

私を見て、


「りっぱな先生じゃ!」


とにこやかな表情で、

何度も叫んでおられました。


 

つづく


 


でぇ、どうするん?(胸騒ぎの認知症ケア)送迎編⑫

2018年02月02日 13時07分22秒 | でぇ、どうするん?~胸騒ぎの認知症ケア~

 

加山さんをお迎えに行くと、

ヘルパーさんが送り出しで入っておられます。

もうご主人さんは剪定のお仕事に行かれておりません。

ですから家の留守を守っている意識がとても強くなっています。


「デイサービスに行きましょう」

とお誘いしても、


「私は行きません」


ときっぱり断られます。

それでも執拗にお誘いすると、


「行かないって言ってるでしょ!」


と怒りモードに入られてしまいます。


「何度も同じことを言わせないで!」


という気持ちにさせてしまいます。

 


それで「行きましょう」という誘い方ではなく、



「加山さんの力が必要なんです!

 加山さんとお会いできるのを、

 とても楽しみに待っている人たちがいるんです。

 だから絶対にお連れしないと私叱られてしまいます!」


と切々と訴えます。


「私とお会いしたい人って誰よ?」


とここで馴染み方々をお伝えします。


「〇〇の奥さんとか、▲▲のご主人とか」


「ふ~ん。で、私が行かないとどうなるわけ?」


「そりゃあ、もう盛り上がりません。

 だって今日は節分ですから、

加山さんがいらっしゃらないと鬼は逃げていきません。

皆さんも困ったなあって言いますよ」


「またうまいこと言ってぇ」


でもまんざらそうでもなく、


「それじゃあ、どうしようかな?」


とちょっとだけ首をかしげて考え始めます。



ところが、このいい雰囲気になったところで、

予期せぬおじゃま虫が入ります。


「ゆうびんで~~~す」


と郵便配達の人が来てしまいました。

せっかく盛り上がってきたところなのに、

加山さんはその郵便を受け取るやいなや

お家の中に戻って行ってしまいました。


(あ~あ。どうして今くるの)


と私の胸の中で何かが音を立てて崩れ落ちます。


(ここまで来たのに・・・)


と悔し涙を右手でそっとふいて、


もう一度仕切り直しです。



でも、

「あなたの力が必要なんです!」


というスタンスは変わりません。


「他の誰でもない、あなたなんです」

「あなたの代わりは誰もいないんです」


という思いをやさしく、まじめに、ちょっと頑固にお伝えします。


「それじゃあ、ちょっとだけ行ってくるわ。

お昼が終わったらすぐ帰りますからね。

 留守たのんだわよ」


 

ということでさっそうと送迎車に乗られたのでした。

 

 

この、

「あなたの力が必要なんです!」

という思いは、

私の基本的信念でもあります。

どなたに対しても、

この思いで接することが、

とても大切だなと思います。

 

 

 

 


でぇ、どうするん?(胸騒ぎの認知症ケア)送迎編⑪

2018年02月01日 22時57分58秒 | でぇ、どうするん?~胸騒ぎの認知症ケア~

送迎編もそろそろ終盤に来ました。


 

次は加山さん(介護2 女性 80歳台)の登場です。

 

植木屋の女将さんだった加山さんは80才を過ぎて

 

第一線を退いて優雅な隠遁暮らしのはずでした。

 

でもご主人は未だに現役の職人さん。


いぶし銀の丁寧な仕事ぶりがとても好評でした。


ですから、加山さんもまだまだ家を取り仕切っている気持ちでいっぱいでした。


「私だけが家の中でぶらぶらしているわけにはいかない」と。


だからデイサービスになんか行くわけがありません。


若い衆の食事も準備しなければならないし、


買物やお掃除と忙しかったからです。




そこへみちしるべにご利用の依頼がありました。


ご家族はそんなお母さんの気持ちを大切にして、


ご自宅以外でも活躍できる場所を探していたのでした。


さて、初利用日にお迎えに行くと、


「仕事があるから」


とまったく送迎車に乗る様子もありません。


それどころか、とりつく暇もないほどです。


さあ、この加山さんをお連れするために考えに考えました。


しかし、いい妙案はなく、私は中央突破することに決めました。

 

さて、撃沈か、突破か?


でぇ、どうするん?(胸騒ぎの認知症ケア)送迎編⑩

2018年01月31日 22時34分33秒 | でぇ、どうするん?~胸騒ぎの認知症ケア~

 

時代劇がコマーシャルになりました。


食事もちょうど終わっています。


今が最大のチャンスです。


私はそっと他のチャンネルに移すと、


すぐに立ち上がりやっぺいちゃんを誘いました。


「やっぺいちゃん、そろそろみんなのところへ行こうか」


と声をかけました。


しかし、「いいよ。今日は行かないよ」


とつれない返事。


私はやっぺいちゃんの片手をとって、


「さあ、行こう!」


と引っ張りましたが、まったく動きません。


まるで岩のようです。


焦った私はますます力をこめて腕を引っ張りますが、


やっぺいちゃんも根が張ったかのように動きません。


「行こう!」「行かない!」

「行こう!」「行かない!」


とまるで押問答のようになってきました。


ここで私ははっとしました。


「押してもダメならひいてみな」


という言葉を思い出したのです。


すぐに私はリビングを出ていったん離れました。


そして、台所のお盆を取り出すと、


「はなのやまが~たあ~」と


花笠踊りを歌いながら踊り始めました。


しかも派手に踊りました。


するといとも簡単に(というか単純に)、


やっぺいちゃんも立ち上がって踊り始めました。


そして踊りながら私のところへやってきました。


2人で踊りながら玄関へ向かいました。


「あら、車が止まっている」


何度も説明したのに、初めて見たかのように言いました。


「んだらば、乗って行くべ!」


と靴を履き出しました。


そして、すうっと開いていたドアから乗り込みました。


あっという間の出来事でした。


この日から食事中は私はリビングに入らず、


入口に立って歌ったり踊ったりして誘い出すようにしました。


こちらの作戦にまんまと引っかかって、


やっぺいちゃんは自ら立ち上がり楽しそうに踊りながら


送迎車に乗ってくれるのでした。


一瞬の機転が功を奏したのでした。


 

やっぺいちゃんのお話はまたいたします。


 


でぇ、どうするん?(胸騒ぎの認知症ケア)送迎編⑨

2018年01月29日 23時04分41秒 | でぇ、どうするん?~胸騒ぎの認知症ケア~

 

それでは次は やっぺいちゃん の登場です。


やっぺいちゃんは奥様と二人暮らし。


アルツハイマー型認知症で要介護3、80歳。


奥様も要介護1で、お二人とも要介護同志でした。


やっぺいちゃんは私と同郷で、


小学校も中学校も同じで、つまり大先輩にあたる人でした。


職業は画家で全国のあちこちをスケッチしてまわっていました。


アルツハイマー病になられてからも絵は描き続けておられました。


ただどこのデイサービスにもつながることが出来ず、


ケアマネジャーさんがほとほと困っておられました。


そのやっぺいちゃんがどうしてみちしるべに来られるようになったかは、


次の機会に詳しくお話しすることにして、


今回はいかに送迎車に乗っていただいかのお話をいたします。


お迎えに上がるのは9時半を過ぎた頃でした。


やはりこちらのお家にもヘルパーさんが入っておられました。


とはいってもデイサービスの送り出しのためではありませんでした。


朝の食事作りがメインでお掃除や洗濯などの家事援助をするためでした。


お迎えに上がるといつも朝食中でした。


そしてテレビはやっぺいちゃんの大好きな時代劇でした。


「暴れん坊将軍」であったり、「子連れ狼」だったりと、


それはそれは時代劇ファンにはたまらない番組でした。



やっぺいちゃんの家の駐車場に車を止めると、


右後部座席のドアを全開にしたままチャイムを鳴らします。


そして玄関に入り、靴箱からお出かけ用の靴を出して、


きれいにそろえて並らべます。


靴ベラも同じようにすぐそばに置いておきます。


それから「おはようございまあ~す!」と言いながら、


食事をしているリビングまで入ります。


やっぺいちゃんは私の顔を見るなり、


「やあ、社長、一緒にご飯たべっべ」


と手招きをされます。


私はテレビの横の席に座っておしゃべりしながら、


時代劇がコマーシャルになるのを待ちました。


そのときが送迎車に乗っていただくための唯一のチャンスでした。







でぇ、どうするん?(胸騒ぎの認知症ケア)送迎編⑧

2018年01月28日 17時08分27秒 | でぇ、どうするん?~胸騒ぎの認知症ケア~

 前回⑦からのつづき。

 

私は福田さんと目を合わせながら、

 

ヘルパーさんに小声でこう言いました。

 

「あなたがそこに座っていたら、

 デイには行きませんよ」


自分の事業所のスタッフではありませんので、


指示を出すのはとても気が引けたのですが、


このヘルパーさんのいる位置を変えないことには、

 

福田さんの腰が上がることはないと感じたのです。

 

 

 

ヘルパーさんは何かを感じたらしく、

 

はっとしたような表情になり、

 

立ち上がって玄関の上がり框(かまち)からおりて、

 

私の右側に立ちました。

 

すると、今度は福田さんがそれを見て、

 

はっとしたような表情をされて、

 

「わたし、行きます!」


と言われたのです。


きっとこのとき、


私よりもヘルパーさんの表情が変わったのだと思います。


福田さんはその顔を見て行くと決めたのだと思います。



私たち介護する者が相手のどの位置にいるかで、


その人の意欲や動きを引き出したり、


逆に封じ込めてしまうときがあります。


これを私は、ポジショニング と呼んでいます。


利用者さんから見て、私たちがどの位置にいるかで、


動きやすくなるし、動きにくくなります。


その最善のポジション(位置)を探しながら、


つねに私は動いています。


違う言葉で言えば安心する距離です。


この場合は一緒に並んで座っているのは、


相手の共感を呼ぶかもしれませんが、


一歩前に意欲を引き出すポジションではありません。


逆に私たちが一緒に立つことで、


私たちの後ろに見える外の世界に視線が行き、


「行きます」と言ってくださったのでしょう。


あとはあきらめない心が大事ですね。。。




次はコタツに入ってテレビを見ながら朝ご飯を食べている人を


どうやって送迎車に乗っていただいたかのお話です。


しかもそのテレビは大好きな時代劇「子連れ狼」です。


番組が終わるのを待っていたらとても間に合いません。


そんな場面に遭遇した人は大勢いらっしゃるのではないでしょうか。


ひとつのヒントにしていただけれたら嬉しいです。


では、お楽しみに。。。








でぇ、どうするん?(胸騒ぎの認知症ケア)送迎編⑦

2018年01月26日 18時43分55秒 | でぇ、どうするん?~胸騒ぎの認知症ケア~

それでは102歳の福田さん(女性)の登場です。

 

102歳なのに、歩けるし、家事は出来るし、

 

とても元気で素晴らしい方です。

 

ご家族が「お家だとあぶないから」と、

 

活躍できる場面が少ないので、

 

グループホームのようなみちしるべに、

 

利用を申し込まれてきたのでした。

 

実際にお米をといだり、

 

味噌汁づくりや

 

洗濯ものをほしたりと、

 

様々な場面で大活躍されました。

 

ですが、朝お迎えに行くと、

 

送り出しのヘルパーさんと二人並んで

 

玄関に正座しておられました。

 

「今日は身体の調子がよくないので

 お休みさせていただきます」

 

ヘルパーさんは言葉には出さなかったけれど、

 

(一生懸命お誘いしたけれどもダメでした)

 

という表情をされていました。

 

それでヘルパーさんも

 

「今日はお休みさせてください」

 

と言うのでした。

 

しかし、「ああ、そうですか」

 

と簡単に引き下がって帰るわけにはいきません。

 

私はヘルパーに一言かけて、

 

ヘルパーのいる位置を変えていただきました。

 

すると福田さんは立ち上がって、

 

すんなりと送迎車に乗ってくださいました。

 

さて、ヘルパーさんをどの位置に変えたのでしょう。

 

この答えは次回へ。。。

 

皆さまもよろしければちょっと考えてみてくださいね。。。

 

 


でぇ、どうするん?(胸騒ぎの認知症ケア)送迎編⑥

2018年01月25日 22時42分30秒 | でぇ、どうするん?~胸騒ぎの認知症ケア~

前回から続きです。

 

 

須山さんは、

 

 「具合がわるくなったらどうするの?」


と怒ったように叫び、


ヘルパーさんはオロオロするばかりでした。


どうみても今日はお休みになるかなという場面です。

 

 

しかし、そのとき妻が言いました。

 

「私がすべての責任を負います!」

 

 

すると須山さんはその言葉に安心したのか、


急に態度がやわかくなって、

 

すんなりと車に乗ってくれたとのことでした。

 

 

ヘルパーさんの何が須山さんを不安にさせていたのか、

 

私たちは外で待っているので、


お家の中で何が起きているのかわかりません。


だから本当のところはわかりません

 

その説明を聴いている時間もありません。

 

本人の言葉や表情だけで読み取らねばなりません。

 

ただ何かのすれ違いが起きると、


それをきっかけに、

 

認知症の方々は不安になってしまいます。

 

認知症の人でなくとも


私たちでも不安になりますね。


 

こういうときは、


根拠のない自信


みたいなもので、


何とか乗り越えています。



そして、この須山さんが、


このシリーズのタイトルである


「でぇ、どうするん?」


という名言を残すのですが、


その場面はもう少しシリーズが進んでからお話します。




次は102歳の福田さん(女性 要介護2)が、


ヘルパーさんと一緒に二人で玄関に正座し、


「今日は行かれません!」


とお断りしている場面のお話です。



この方も送迎車に乗ってくださいました。



さて、どんなことになったのでしょう。


お楽しみに。。。。 

 

 


でぇ、どうするん?(胸騒ぎの認知症ケア)送迎編⑤

2018年01月24日 23時18分04秒 | でぇ、どうするん?~胸騒ぎの認知症ケア~

 

それでは次は須山さん(女性 80代、要介護3)の登場です。


出身は東北の福島県、


いわゆる田舎で一人暮らしとなって、


生活を継続するのが段々とむずかしくなってきたので、


娘さんがご自分の家に呼び寄せてくれたのでした。


リビングの一角にベッドをおいて、


須山さんの東京暮らしが始まったのでした。


とはいってもご家族は全員仕事に出かけてしまいますので、


日中は独居状態となります。


そこで「みちしるべ」に利用申し込みがあったのでした。


送り出しのヘルパーさんも入って、


デイサービスの利用は順調に始まったかのように見えたのですが、


あるときから「行かない」と言い始めるようになりました。


そして、とうとうあるとき、


玄関の外まで出たけれど、


軒先の柱にしがみついて、


「ぜったい、行かない!」と言うのでした。


ちょうどその日は私の妻がお迎えに行っていました。


ヘルパーさんは、須山さんから


「絶対行かないって言っているでしょ!」


と言われてオロオロするばかり。


立て続けに、「何かあったらどうるの?」と言われて、


さらにヘルパーさんはパニックになっておられました。


しかし、妻はいとも簡単に、


須山さんを車に乗せてしまったのでした。


いったい、どういう言葉かけをしたのでしょう?


この続きはまた明日!






でぇ、どうするん?(胸騒ぎの認知症ケア)送迎編④

2018年01月23日 21時58分21秒 | でぇ、どうするん?~胸騒ぎの認知症ケア~

 

帰りの送迎のとき、それは起こりました。


無事、一日のデイサービスが終わって、

坂上さんの自宅の前に送迎車が到着しました。


私はすぐに運転席から降りて、

左のドアを開けました。


「坂上さん、お家に着きましたよ」


坂上さんは奥様の顔を見るやいなや


すぐに車から降りられました。


あとはまっすぐに玄関に入って行かれるのを見届けるだけです。


ですが、添乗していたスタッフが、


ここで坂上さんに声をかけてしまいました。


「坂上さん、今日はどうもありがとうございました」


坂上さんはうしろを振り返るやいなや


すぐに車に乗ろうとされました。


私はまだ3人の方々を送らなければなりませんでしたので、


ここで再び坂上さんを乗せるわけには行きませんでした。


ドアの前で右腕を伸ばして制止したので、


坂上さんは途端に怒り出し、


ガブっと、私の右腕(肩の下あたり)を


思いっきり噛みついてこられました。


「きゃ~~~!」


と奥様がとても驚いて叫び声をあげました。


私は冷静さを保ちつつ、


すぐ右腕に力をこめました。


すると坂上さんは腕を噛まれなくなって、


口を離してよたよたしながら家に入って行かれました。


私の右腕には出血はなかったものの


噛みついた歯形がくっきりと残っていました。


「大丈夫ですか。ごめんなさい。ごめんなさい」


と奥様は何度も私に謝られました。


「これぐらいのこと大丈夫です」


と言ってすぐに次の方のところへ車を走らせました。


全員が降りた後の帰り道、


スタッフに先ほどの坂上さんの降車のことを説明しました。


「坂上さんは送迎車を降りて奥さんと会った時点で、

 もう車に乗っていたことを覚えていません。

 だから後ろを振り向いたときは、

 迎えに来てくれた車だと思ったのです。

 だから乗り込もうとし、

 それを阻止されてしまったので、

 怒って噛みついたのです。

 つまり声をかけるタイミングではなかったということ。

 お礼を言うタイミングは降りる前の車内で言って、

 降りたらもう声はかけないで、

 奥さんと一緒に玄関に入るのを

 静かに見守るだけでいいのです。

 静か見守るのも大切なケアのひとつです」


 腕の歯形は数日後には消えました。


 次は玄関の柱にしがみついて、

 「絶対行かない!」

 と言っている人

を送迎車に乗っていただいたお話です。