でぇ、どうするん?(胸騒ぎの認知症ケア)送迎編 最後の登場は神谷さん(要介護5 90歳代)です。
九州の宮崎県で教員をしていた神谷さんは、
教頭まで職務をまっとうされた大変立派な方です。
しかし、アルツハイマー型認知症になられてから生活は一変、
穏やかな性格は何処かへ隠れてしまい、
つねに人に対してきびしい言葉を言ってしまうのでした。
みちしるべにご依頼があったとき、
じつは他のデイサービスに通っておられました。
しかし、ふたりの娘さんの話によると、
送迎車から降りても玄関の中に入らなかったとのことです。
それは何故か?
残念ながらわかりません。
じつはそのデイサービスは特別養護老人ホーム併設のところでした。
しかも私が働いていたところと同じ社会福祉法人でした。
いうなれば私の古巣ともいえるところです。
当時まだオープンしたてだったその施設は、
建築前の設計段階からかかわっていました。
私はそこでたくさんのお年寄りが、
楽しく幸せにすごしている風景を夢見ていたのですが、
なぜか途中から制約がきびしくなってきて、
その新しい特養のオープン直前に
新しい冒険の旅に出るため退職したのでした。
ですから、その施設の玄関の中に入らないということを聞いて、
少なからずショックを受けました。
そんな施設をつくる思いはまったくなかったからです。
神谷さんのためにひとりの職員がつくようになり、
対応に苦慮した施設側から利用を断られた、
というのが娘さんたちからのお話しでした。
このケアマネジャーさんも同法人の職員さんでした。
でもどうして玄関の中に入らなかったのか、
何が一番の理由で利用をことわったのか、
という情報提供は何もありませんでした。
私も聞きませんでした。
お断りされた娘さんたちが、
必死で受け容れてもらえそうなデイサービスを探して、
ケアマネさん抜きでコンタクトを取ってきたのでした。
神谷さんのご自宅で初めてお会いしたとき、
私を見て、
「りっぱな先生じゃ!」
とにこやかな表情で、
何度も叫んでおられました。
つづく