緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

虫垂炎が腹膜炎を起こしているかどうかを身体所見で目安をつける方法

2009年08月12日 | 医療

疼痛は大きく分けて

内臓痛
体性痛
神経障害性疼痛

となります。




この内臓痛と体性痛
体表に近ければ、診察スキルで見分けることができます。




虫垂炎ってご存知ですよね。
俗称、盲腸って呼ばれています。
これを例に、この2つの痛みの診察方法について説明しましょう。


炎症初期・・腹部全体が痛かったり、むしろ上腹部が痛かったりします。

それを過ぎると、
マクバーネーと言われるヘソと腸骨を結んだ外側1/3の所に限局して
痛みが出始めます。
このとき、患者さんの訴える痛みや圧痛が手のひら一個分位の
漠然とした痛みなら、これは内臓痛です。

さらに悪化していくと・・
炎症性腹膜炎に波及することがあります。
つまり、虫垂だけの炎症ではなく、
腹膜まで炎症が及んだ状況です。
こうなると、圧痛は、指1本でココと抑えるような
限局した痛みなります。
これが、体性痛で、膜の痛みです。



内臓痛
漠然とした疼痛

体性痛
限局した点としての疼痛




虫垂炎の場合、
この2つの痛みの違いを知っておくと、
抗生剤や手術の適応を身体所見を取っただけで
ある程度の目安をつけられるのです。


がんの疼痛の場合は、
この2つの違いを知っておくと
オピオイド(医療用麻薬)の反応予測に役立つのです。





内臓痛は、
オピオイドがよく効く。

体性痛は、
オピオイドが効き辛い場合がある。
突出痛が出やすいなど
の異なった特徴がある。

体性痛には、NSAIDsや鎮痛補助薬を併用すると
コントロールがつきやすくなります。

コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 初恋の人からの手紙~診断プ... | トップ | 上腕神経叢症候群の疼痛緩和... »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございます。 (若紫)
2009-08-13 19:23:12
こんばんは。
いつも勉強させていただいております。

細かいことで恐縮ですが、「体性痛」ですよね。
多くの方がここで勉強されていると思いますので、失礼とは存じましたが指摘させていただきました。
返信する
若紫さん (aruga)
2009-08-13 21:30:03
あわわ・・・です。
PCの変換に頼りすぎて、気がつかない状態でした。
ありがとうございました!
返信する
ありがとうございました (jun)
2009-08-14 10:30:43
虫垂炎にしても、癌の疼痛コントロールにしても、とても簡潔でわかりやすい解説をありがとうございました。
(診療時間や施設によって、虫垂炎ぽい人を診るのがいまだに怖い消化器内科医より
返信する
junさん (aruga)
2009-08-14 21:56:10
まだ、外科にいた頃、これを知っていたら、もっと当直が怖くなかったのに・・と昔を振り返ることシバシバです。
消化器専門のjunさんから、わかりやすい・・と言っていただいて、ホッとしました。。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

医療」カテゴリの最新記事