この所、とてもアクセスが多い記事です。
再掲いたしました。
がん疼痛緩和は、
非ステロイド性抗炎症薬、オピオイド、鎮痛補助薬の3つのグループを
この順に追加併用していきます。
この中の、鎮痛補助薬というのは、
元々は鎮痛薬ではないものですが、
刺激伝達系のグルタミン放出経路の刺激を抑制したり
抑制系のGABAの経路を賦活化したりすることで
他の2グループとともに鎮痛効果をもたらす薬剤をさします。
主に、オピオイドが効き辛い疼痛の神経障害性疼痛などに併用していきます。
神経障害性疼痛とは、ビリビリしたような、刺されるような疼痛や
アロデニアといって普通なら痛くも無いような刺激に
疼痛を感じるような場合が神経の疼痛をさします。
(アロデニアとは、服が擦れたり、触られただけで飛び上がるような痛み)
例えば、腰椎の2、3番目に病変があると、
大腿部外側(太ももの外側)に疼痛がはしります。
大腿部には、もちろん病変はありません。
しかも、常時疼痛を感じるわけではなく、神経に触れたときだけなものですから、
あるときは臀部、あるときは膝、あるときは太ももの外側と
痛みが知覚神経の支配領域の範囲内で出たり出なかったりします。
昔は、これを心因性の疼痛として見過ごされることもありました。
鎮痛補助薬には、
抗うつ薬、抗痙攣薬、抗不整脈薬、NMDA受容体ブロッカー、α作動薬などがあります。
これらの薬剤は、前述のグルタミンのある経路にかかわったり、
GABAのごく一部にかかわったり、さまざまな薬理機序なものですから、
効く物、効かない物のばらつきは大きく、
Aさんに効いても、Bさんには効かなかったとか
Aさんのある時期には効かなかったけれど、その後の新たな痛みには効いたなど
最終的な効果のほどは、投与してみた結果を見ていかなければ
最初から予測することが難しいという特徴があります。
数年前に日本でもやっと発売になった
ガバペンチン(商品名はガバペン)は、
前述のグルタミン経路にもGABA経路にも作用する薬剤で、
他の薬剤より広く作用することからも
海外では、抗うつ薬の一部の薬剤とともによく用いられる薬剤です。
日本でも、徐々にその結果が累積されつつあります。
私もよく処方します。
劇的に効果を経験したものもあります。
が、元来がん性疼痛に保険適応がない薬剤なので
副作用や代替薬の提示、何をもって効果判定をしていくかなど
説明し、納得していただいてから処方を開始しています。
その上でのことですが、
がん性疼痛で神経障害性疼痛に投与するとき開始量は、
ガバペン(200mg)1錠 分1 眠前
または
ガバペン(200mg)2錠 分2 昼、眠前
とすることが多いです。
頻度が高い副作用は
眠気とめまい、ふらつきで
これらに注意しながら増量します。
上限は1200mgですが、私はそこまで投与したことはありません。
神経障害性疼痛に効果があるかどうかは
まず、どの場所のどんな痛みにこの薬剤を投与するかを
患者さんと話合い、10点満点中の何点の疼痛があるかを聞き取っておき、
投与を開始します。
副作用がないかぎり5日間は継続します。
これは血中濃度が安定し、効果発現に要する時間と考えています。
この薬剤は、体内で代謝をうけず、未変化体のまま尿中に排泄されます。
ですから、臓器障害は生じずらいのですが、
腎機能障害があると体内に蓄積しやすいため、腎機能にあわせて減量が必要になります。
クレアチニンが4の方に説明をして投与した場合は、
50mg/日で著効しました。眠気も問題になりませんでした。
添付文章上はクレアチニンクリアランスによって、最少量200mgとなっていますが
これは、多分多すぎるだろうと思います。
透析導入された方は、透析で抜けてしまいます。
透析後に200mg1錠(週3回透析の方は、3回/週飲む事になります)で
よい感じに効果がありました。
この連休は、福岡のペインクリニック学会のランチョンセミナーに行っておりました。
ここでも、ガバペンチンは鎮痛の市民権を得てきたなあという印象を持ちました。
(記事再掲のため、2008年7月の時の学会です)
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これからもさ迷える院外レジデントの星でいてください、かげながら応援しております。
ゆきんこさんのところも熱帯化しているのですか?お名前から涼やかな印象があります~ 私今のところ元気です。ランチョンは骨がん性疼痛に対するオピオイドのプロファイルの違い(モルヒネ、オキシ、フェンタでの効き方の違い)がテーマでした。私が臨床から、後基礎の方がその後話してくださいました。中々面白いものだったと思います。
ガバペンチンは全体の印象です。今、プレガバリンが国内で末梢神経障害で治験中なので適応拡大はないと思います。50mgは粉砕にしてもらいました。
minoreinaさん
まあ・・院外レジデントなんて、嬉しいです。
ガバペンチン、ご指摘の通り、効く痛みには早いです。その日の内というのも経験しています。ただ、眠気、めまいのことがあるので、低用量から始めるようにしていると、粘っている内にいい感じになってくることもあります。なので、患者さんには、目に見える効果が無くても副作用がなければ5日間ご協力くださいねって事前に説明するようにしています。私の投与最大は600mgなので、用量との関係がもう一つ手ごたえとしてないのですが、トランスポーターなどの作用点に限界があるので、頭打ちになってもおかしくないと思います。
近いうちにレジを卒業して、是非、パートナーになってくださいね。
あーーー。力が抜けてしまいました。あー。。。
病棟では嫌われてしまっていた患者さんでしたが、少しでも痛みをとってあげたい、患者さんが笑顔でいられる時間が長くなればいいなあと思って、説明もしたのにな。。 凹んで帰宅したら、鎮痛補助薬のコメントだったので、つい弱音をはいてしましました。。
粉砕したときは、オブラートに包んで飲んでくださっていました。飲み辛くてごめんなさいって申し上げたら、痛みが取れたんですもの全然苦じゃないですって言ってくださいました。
コアラさん
へこんじゃいましたか。
自己コントロールが疾病の悪化に関わるような病気を持っていらっしゃる患者さんは、ソリッドな方が少なくなく、服薬説明も難しいですよね。距離を適度にとって、疲れをためないでくださいね。
胃癌多発性肝転移で抗がん剤治療を続けていましたが最終的には第三腰椎に転移し神経にからんだ?痛みの為にオキシコンチンやオキノームだけではコントロール出来ず主治医には見離されました。諦められず私はネットで調べ 抗鬱剤をはじめ 先生が書かれている補助薬も 試す様に主治医にお願いし無理矢理処方して頂いてた様な状態でした。
父は末期癌でしたが 先生が書かれている 太ももの痛みのみに 苦しんでいました。ですから 何とか痛みをコントロールして 生活をさせてあげたかったのですが 父は痛みに耐えきれずに 鬱になり 自殺してしまいました。
長々と書いてしまいましたが全国に先生の様な医師がもっと 増えてほしい・・・ それが伝えたくて・・・
読んで頂きありがとうございました。
お父様がどれほどの心と体の痛みを覚えていらっしゃったのだろうか、それを傍で支え続けられたジャイさんはどれほどのものを背負われていたのだろうか・・
頂いたメッセージを心に留めて、少しでも前に進んでいくように、少しでも緩和医療が普及するように努めていきます。
きっと、ここを訪れてくださる医療者の方々も、同じように思ってくれると思います。
お察しするに余りあるお気持ちを圧して、コメントくださり本当にありがとうござました。
二年が経過し 少しは大丈夫かなと自分の心の様子を伺いながら父の事を振り返ってみるのですが まだまだ駄目ですね。きっとこのまま 現実逃避した状態で 生活して行く様な気します。
今更ですが 先生に一つだけ お伺いしたいのですが 父の状態での 神経ブロック注射は 効果が期待できたのでしょうか? 主治医に 何度お願いしても 断られました。
効果が期待できたのか、何か大きなリスクを抱えていたのか、これは、ここで書かれただけではわかりません。
私自身、ペインクリニシャンではないので、適応について、まずは専門医の診察を受けてもらうことを勧めています。
何故、主治医は断ったのか、そこにヒントがあるような気がしますが・・・