記憶が薄れてきたり、
自分の存在価値や存在意味を失いそうになったり、
尊厳を失いかけてきたりした時、
過去はとても大切な役割をしてくれます。
緩和ケアの領域では、
ライフレビューという言葉をよく使います。
過去にさかのぼり、
その患者さんが辿ってきた道のりについて
耳を傾けていきます。
人は、大小に関わらず、喪失を体験してきています。
そうした時、どのように乗り越えて今に至っているか
お話頂くことで、今の困難と感じる時にも
乗り越える力を取り戻していただけることが少なくありません。
認知症の領域では、
回想療法と呼ばれていることを
最近、初めて知りました。
学会もありました。
http://www.fureai.or.jp/~psytex/index.html
Wikipedia 回想法です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9E%E6%83%B3%E6%B3%95
蛇足ですが・・・
黒川由紀子さんのお名前を見つけました。
20年ほど前、アメリカにいた時に、日本から日米交流財団から派遣されていらっしゃり、
夏になったら、お目にかかっていました。
当時から、老年期の心理を専門になさっていました。
基本的姿勢
受容的共感的姿勢での傾聴。回想法は、カウンセリングと違って、生きてきた軌跡の中でも、明るく輝いていた時代の内容を話題とする。よって「会話」 がとても重要となる。回想法的インタビュアーのことを「レミニシャン」と言うが、相手の錆びた古い記憶を引き出すコミュニケーション技術が必要。また、 10歳~15歳の記憶が鮮明であると、ADLが維持されている臨床状況から、その時代の記憶を刺激することが回想法の基本姿勢とされる。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9E%E6%83%B3%E6%B3%95)
ADLを維持するには、
10~15歳の記憶を刺激することが有効・・
動けていた時の自分を思い出すことで、
刺激が入るということなのでしょうか。
眠っている記憶を起こすような感じと考えると
やはり、がんなどの疾患でADLが低下しているときとは、
やや、異なるのかもしれません。
でも、これは、とても大切なことを
教えてくれました。
過去の自分を思い出すことは、
今の自分を取り戻すためにも
役に立ち、大切なことなのですね。
病院に入院している患者さんのケアにあたっていると、
何か、医療的な無機質な感じがすることがあります。
例えば、食事をしていても、
栄養を摂取しているような、
生理学的な感覚です。
動く練習をしていても、
それは、大腿四頭筋の収縮と弛緩として
捉えてしまうかもしれません。
でも、本当は、それはお母さんの味だったり、
いつの日かの散策が記憶であったり、
そこには、今生きていることにつながる
意味や価値が一緒にあることを
私たちは、忘れないようにしなければいけないと
思うのです。
ベッドサイドに行ったとき、
何気なく置かれているものに、
もっと、アンテナを張って、
それの裏にある記憶を会話から聴き出してみることを
忘れないでいたいと思います。
例えば、枕元に置かれた
腕時計。
それは、いつ頃から腕につけてきたものなのか、
それは、その患者さんのいつからの時を刻んでいるのか、
そのベルトに沁み込んだ汗は、どんなものなのか。
誰と一緒に、覗き込んできたのか・・・
沢山の質問があるのに、
いつしか、
ああ・・時計をお持ちですね
(せん妄対策として、時計をお持ちである事はいいこと)
で、会話は終わっていることはないか・・
物事に潜む意味・・・
もっと、大切にしたいと思った週末でした。
こんにちは。
こちらは雨の週末です。
「死にたいほど身体がつらい」とおっしゃっていた方が亡くなられて10日になります。
奥さんとの交流が長かったのですが、昨夜、メールがきました。深い哀しみの中にいらっしゃるので、言葉を選びながら、返信をしました。
励ますのではなく、そっと気持ちを受け取ることの難しさを感じながら・・・・・。
いのちの儚さを感じています。
お亡くなりになられたのですか。
Webを通してご紹介くださった方でしたが、何かのご縁と感じていました。
淋しいですね・・
そこに心を馳せ、ご家族に接するmaekawaさんの姿勢に、暖かさと優しさを感じました。
ここにシェアしてくださり、本当にありがとうございました。