(図は、完全作動薬と部分作動薬の受容体結合と薬理作用発生
ノルスパン適正使用ガイドブックより)
今年の夏、ブプレノルフィンの貼付剤が
腰痛症などの痛みに投与可能となりました。
ブプレノルフィンの貼付剤???
レペタン(商品名)という坐薬があります。
この貼付タイプの薬剤で
ノルスパン(商品名)で発売されています。
処方に麻薬免許は不要ですが、
薬剤はオピオイド(ほぼ医療用麻薬に同じ)で、
処方は、e-ラーニング受講修了医師のみ可能です。
副作用は他のオピオイド(医療用麻薬、モルヒネなど)と
頻度は低いですが、
起こす症状は同じで、
便秘、投与開始時の嘔気やめまいなどです。
モルヒネなどと異なる点としては、
有効限界があること、
受容体親和度がモルヒネより高いこと、
部分作動薬であること、
があげられます。
保険適応は、非がんの慢性疼痛に限定されていて
(?このあたりが日本っぽい)
変形性関節症や腰痛が適応症になります。
見た目は、同じ製薬メーカーから発売されている
モーラステープ(商品名)に似ていますが、
湿布(モーラスなど)は、痛みがあるところに貼り、局所に効かせます。
ノルスパンテープは、健康な皮膚に貼付し、全身に効かせます。
ですから、腰が痛いからといって、腰に何枚も貼るのではなく、
胸や上腕の外側などに決められた枚数のみを貼ります。
この薬剤で、ちょっとやっかいなことがあります。
この薬剤で完結できればよいのですが、
この薬剤を長期間使用している患者さんが
がんになって、がん性疼痛用のオピオイドを使用しなくてはいけなくなったとき、
いざ、モルヒネを投与しようと思うと、
切り替えに時間がかかったり、谷間の痛みを生じたり、
上手くいかない可能性を含んでいるのです。
モルヒネは、完全作動薬で、
ブプレノルフィンは、部分作動薬です。
オピオイド受容体の親和度はブプレノルフィン>モルヒネです。
<参考>
完全作動薬:オピオイド受容体に結合し、強い効力を発揮する薬物
(金子,09)
部分作動薬:オピオイド受容体に結合したとき部分的に作用し、
完全作動薬より弱い効力しか発揮しない薬物
(金子,09)
麻薬拮抗性鎮痛薬:μオピオイド受容体には部分的に作用し、
単独投与でモルヒネより弱い鎮痛作用を発揮し
モルヒネと併用すると拮抗的に作用する薬物
(ペンタゾシンなど) (岸岡,04)
親和性が高いということと
部分作動薬とは・・・
椅子取りゲームは、
ブプレノルフィンが圧倒的に強く、
一旦椅子をとったら、中々離れません。
ところが、椅子に座って、出てくる鎮痛効果は、
弱いのです。
加えて、有効限界があるため、いくら増量しても、
弱い効果以上に痛みをとることが難しくなります。
そこで、より強い鎮痛効果のあるモルヒネに変えようとすると
椅子はブプレノルフィンに占められていますから、
モルヒネは、回りをうろうろするばかりで、バトンタッチがうまくいかないのです。
ん・・・ これから長期投与になっていったとき、
色々、苦慮しそうだなあ・・と思っています。
ただ、他の効果でこの薬剤に期待しているところもあるので、
いかに使いこなせるかがこれからのカギになりそうです。
一時期はモーラスにもやまのようにお世話になっていましたが、今は、ボルタレンを貼りまくっている身です(笑)。
歳ですねぇ…(笑)。
処方は誰でもすぐにできるわけではないのですね。
そして、非癌性疼痛...。
でも、おっしゃる通り、[使いよう]ですよね。
また、勉強します!
痛みの渦中にあると、今を何とかしたい・・と思うと思います。一方で、長い人生の道のりを上手く通っていくには、先を見ながら今を考えることも大切になります。
がんになったら・・というだけではなく、長く上手く鎮痛薬を効きつづけさせるには・・という観点で医療者とともに歩んで行って下さるとさらに良いかなって思いました。
年を重ねると、本当に難しいものです・・私も元PANDAの妻と同じく、思うところがあります・・
>先生の説明、スルスルと頭に入ってきました。
すごく励まされます。
分かり辛く、混乱しやすく内容なので、誤解されないないように・・なんて思うと、上手く伝わったかなあなんて、ドキドキしながら書いています。ホッとしました。
いろんな薬剤がでてきて、本当に難しくなっていきます。
是非、共に、学び続けましょうね。
わたしのブログにURLを貼らせていただいていいですか?
そして、ブログのリンクについて、ご一報くださりありがとうございました。