緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

30年経ってからの遅発性放射線障害

2011年11月20日 | 医療

婦人科がんに対して、放射線治療を受け、
治癒した患者さんを
在宅で何年も前(もう10年以上も前です)に診療していたことがありました。

診療を始めた時には、
すでに、両下肢に運動神経障害と知覚障害を認めていました。

足が両方とも、びりびりとしびれ、
上手く動かすことができず、
室内を伝い歩きされていました。

もともと、糖尿病があり、
他院では、糖尿病性末梢神経障害と診断されていました。

ただ、糖尿病にしては、左右が非対称な障害でしたので、
ちょっと違うなと思いながら、週1回訪問診療をしていました。



その内、
血尿を認めるようになってきました。




時々、入院をする病院の泌尿器科を受診してもらいました。
原因ははっきりしませんでした。
泌尿器科からは経過観察と、返信をもらいました。

それから、ほどなく
下肢の知覚障害が悪化、運動障害も広がってきました。

糖尿病の悪化はありません。
神経内科にも受診してもらいましたが、
やはり、糖尿病からではないかと言われました。






しばらくして・・・
ゆっくりと、腹部膨満を生じてきました。

徐々に変化していく身体所見から、
腹水ではないかと思いました。
腎機能はずっと変化はありませんでした。




はっ・・・と思いました。

放射線治療のことをたずねました。

放射線治療はその当時から
すでに、30年前のことでした。
その当時は、相当な線量を照射することがありました。。
患者さん自身は、何Gy照射したか記憶にありませんでした。

この一連の事がやっと繋がりました。

骨盤内に壊死を起こしたり
腹水貯留を認め始めた
遅発性放射線障害でした。




現在は、
放射線治療医の専門的なアプローチで
照射野を腫瘍ぎりぎりに絞ったり
複数の方向から病変に照射をする2門照射や3門照射といった方法を行うなど、
腫瘍への効率的な照射野となっていますから
どうぞ、安心してください。

無再発でしたが、長年に渡るADLの低下・・
不可解な症状・・
何年も前から、糖尿病として見過ごされてきた症状。
思い込みを排して、
過去数十年前の治療歴をしっかりと聴取することが
重要であることを痛感した出来事でした。


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2 コメント

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あらゆる可能性を (きみ)
2011-11-20 22:59:08
考えながらケアしていくこと、本当に大切ですよね。

チーム医療ですから、それはチームの全員に言えることだと思います。

医師でなくとも、自分が関わるその時の患者さんの変化に注意深くありたい。

はっ...と気づいてあげられるように、そう思うと、あれもこれもと、学びたいものが山積みになって行くばかりです。

先生のブログを読んで、また頑張るぞと自分を励ましながら少しずつでも前に進んでいきたいとおもいます。




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きみさん (aruga)
2011-11-21 21:42:37
きみさんに、そういっていただけると、また違った嬉しさがあります。

学び続けること、その意味を見出す作業は、患者さんの微笑みに出会うための、医療者ならではの格別の喜びなのかもしれません。
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