緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

救急車は救急医療を行うためにあるのですが・・

2018年09月09日 | 医療

9月8日のWebニュースに
このような記事がありました。

 

終末期患者が蘇生拒否、半数超の消防本部で 対応に苦慮

 救急現場で終末期の患者側から心肺蘇生を拒否する意思を示されたケースが昨年、全国の728消防本部のうち、55・4%にあたる403消防本部であったことが総務省消防庁の調査でわかった。在宅医療が広がる中、救急隊員が難しい判断を迫られている現状が浮かんだ。

 消防庁は5月、心肺蘇生を望まないと伝えられた際の対応について検討部会を設置。全消防本部に初めてアンケートを実施し、すべてから回答を得た。消防法は、救急搬送や心肺蘇生などを救急隊の業務と定めているが、蘇生中止に関する規定はなく、来年1月ごろまでに部会の意見をまとめる方針。

 アンケート結果によると、心肺蘇生を拒否する意思を示されたケースは昨年、全体の半数超の403消防本部であり、少なくとも計2015件に上った。

 拒否の意思が示された場合、「対応方針を定めている」と回答したのは45・6%。内訳は「心肺蘇生を実施しながら医療機関に搬送する」が60・5%、「医師からの指示など一定の条件の下、蘇生を実施しない、または中断できる」が30・1%と分かれた。

 方針を定めていない理由では、「国が統一的な方針を定めるべきだから」、「どのような方針とするべきか、現状では判断できないから」が目立った。

 患者の意思を伝えたのは家族、介護施設の職員、医師の順で多く、本人の意思を示した書面で把握するケースもあった。

 部会長を務める樋口範雄・武蔵野大特任教授(医療倫理)は「延命治療が難しい人生の最終段階で、自分の死をどう迎えたいか考える時代に、救急隊員が困惑している実態が明らかになった。部会で一定の方向性を示したい」と述べた。

auヘッドラインニュース 朝日デジタル 9月8日





いろいろ書かれているのですが、
基本的に知っておかなければいけないことは、

救急車で搬送された患者は、
救急治療を行う患者

であるということ。



救急車は、救急医療を提供するためにあり、

それで搬送された患者は、
心肺蘇生を行うことが前提であるということ。




心肺蘇生を行わない患者の搬送を
救急車は対象としていないということ。




ですから、
心肺停止またはそれに近づきつつある患者さんで、
心肺蘇生を行うことを望まない患者さんのご家族には、
心肺停止に近づきつつある状況となったことに気づき、
在宅医が関わっていない場合は、
救急車ではなく、
自家用車やタクシーなどで病院に御連れ頂くことを
前もって話し合っておきます。

要は、
救急治療を目的としている救急隊ではない
DNARの意思表示がある患者さんの
搬送についての手段をどこに設置していくのか
といったことだろうと思います。




現在のタクシーや自家用車といった、
個々のレベルでの努力とするのか、

民間やNPOレベルでそのような役割をもった
搬送手段を設置していくのか、

消防署で救急車かそれ以外か選択できるような手段を持つのか、

DNARの意思表示とともに、
事前登録システムを作っていざというときに
混乱しないようにしておくのか・・・




現状である
救急隊が呼ばれ、
どのような話し合いがされてきているかわからない状況で、
蘇生を実施しないことを判断することは
これは無理難題なことと思います。




まずは、
市民の皆様に
救急隊、救急車は、
救急医療のためにあるため、
心肺蘇生を実施することが前提にあることを
知っていただくことから
ではないでしょうか。


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2 コメント

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解決策の見えない問題ですよね (Kim)
2018-09-19 13:30:40
私も最近この件について記事を書かせていただきました。

先生方のような方々が頑張ってくださっていても、やはり在宅の患者さんの死亡全てに対応するのは難しいと思いますので、救急車は、死亡確認目的のご遺体を搬送して良いと決めるしかないと思います。
返信する
kimさん Re:解決策の見えない問題ですよね (aruga)
2018-09-24 22:24:39
同じ問題意識を持ってくださっていることに、力を感じます。コメント、本当にありがとうございます。

やはり、何らかの搬送手段を作ったほうがよいというご意見ですね。
私もそう感じるのですが、とはいえ、救急の赤ランプとサイレンで道路を他の車を停めて走り抜けるのは、抵抗感じます。

つまり、トリアージの黒と赤は分けるべき・・という考えです。
議論が進むといいですね!!
返信する

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