緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

緩和ケアチーム;インテグレーションと格差

2015年09月28日 | 医療

最近、依頼原稿を書くために、
治療医と緩和ケアチームとの
あり方に関する論文を
何本か読んでいました。


なるほど~~
そうだろうなあ・・
と思ったこと・・・






がん治療と緩和ケアの
統合的(融合的)なアプローチについて
1948年から2013年までの
65年間の論文の64%が
2010年以降の3年間に集中していた・・

(Ovid MEDLINEとOvid EMBaseを使用)

Temelの論文がNEJに掲載されたのが、
2010年・・・
相当のインパクトだったんだなあと思います。


対象101論文のレビュー

介入内容やあり方は、
学際的なチームによるケア72件
併診スタイル(コンサルテーション)71件
症状スクリーニングとしての介入25件
緩和ケアガイドライン策定33件
ケア手順書11件
キャンサーボードへの参加10件

(David Hui, et al:The Oncologist. 20: 77-83, 2015)






チーム機能がコンサルテーションだけではなく
役割が増えてきています。
これは、海外だけのことではなく、
日本でも昨年から、
がん拠点病院の要件に
たくさんのタスクが降ってきています。

マニュアル、ガイドライン、手順書、
キャンサーボードへの参加・・


同じような任務が論文の中に記載されていて
違う国の間でも、同じようなことが起こっているのは面白いなあと思いました。

スクリーニングは
全入院患者さんに入院時に看護師さんが
スクリーニングシートで聴き取りをしてくれているものと
緩和ケアチームが病棟に出向き、
ヒアリングでスクリーニングをするという
2つのことが行われています。

前者については、
直接患者さんの症状緩和は寄与していません。
ただ、病棟看護師の症状に対する感度が
相当変わってきている印象があります。

私たちの病棟ヒアリングは、
一回の回診で4病棟~8病棟程度を回る中で
緩和ケアチームへの依頼がないケースに対し、
私が直接主治医に連絡をするようなケースがあります。








欧州臨床腫瘍学会や
欧州緩和ケア学会などの合同調査からは、

がんセンター指定病院と
非指定病院や市中病院の
緩和ケアチームの間では充実度が異なり、
格差を生じていることの指摘がありました。

その原因としては、
卒前、卒後の医師教育の不足
市民啓発やがん治療の中の緩和ケアを整備するための
経済投資不足があることが指摘されています。

(Mellar P. Davis, et al: Support Care Cancer, 23(9): 2677-2685, 2015)






これも、日本で起こっていることです。
拠点病院の緩和ケアチームには、
沢山のタスクが課せられました。
非拠点病院との格差が生じています。
拠点病院には、補助金が与えられますので、
まさに、上記のことと言えます。

緩和ケアチームの格差・・・

今までは、都市部と地方の認定看護師などの
専門職の数による差が言われていましたが、
拠点と非拠点の間の差になっていきそうです。

これを機能分化とするのか、
格差とみるのか、
国全体で緩和ケアチームをどのように誘導していくか・・
そのような問題となっているように思います。


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