先日の外来で、患者さんが新聞記事を持参されました。
「これ、私にはどうなのでしょうか」
治験終了後1年ほど承認に時間がかかった
治験終了後1年ほど承認に時間がかかった
一般名アナモレリンが先月4月に発売となり、
朝刊の一面に記載されたものは、
がん患者さんの悪液質とその栄養状態を
改善することに関するものでした。
新規発売となった薬剤が
自分には適応があるのだろうか・・
新規発売となった薬剤が
自分には適応があるのだろうか・・
病名は確かに一致していました。
まず出た言葉は・・
「本当に、よく勉強されていらっしゃいますね」
発売されたばかりで
緩和ケアセンター内でも勉強会を開いたところでした。
大変驚きました。
専門的なことも調べていらっしゃいました。
悪液質という病態があります。
図のように
体重が6か月で5%以上痩せてしまった場合を指しますが、
それが進んでしまうと、不可逆的(元にもどらなくなる)
になってしまいます。
これは、術後や化学療法で食事がとれず痩せてしまうものとは異なり、
炎症によることが分かっています。
つまり、単純な低栄養ではなく、
栄養を疾病によって炎症が起こり、
消耗性状態といわれる
エネルギー代謝がうまく回らなくなった状態を指します。
低タンパクとなって、痩せ(体重減少)、
筋肉が細くなったりしますが、
血糖値はむしろ高く(インスリンが効きつらくなる、燃えなくなる)、
また、脂肪の減少があまりない(上手く燃えない)場合もあります。
つまり、
糖や脂肪などをうまくエネルギーに変換できず、
筋肉ばかりが減少していくといった代謝異常です。
この背景には、炎症性サイトカインの活性化などが原因となっています。
この背景には、炎症性サイトカインの活性化などが原因となっています。
悪液質は、
がんに特有のものではないのですが
この薬剤は治験が
肺癌(非小細胞)、膵癌、胃癌、大腸癌に実施されたことで、
適応はこの4がん種の進行癌に限定されています。
栄養療法などで効果不十分な時という条件のもと、
栄養療法などで効果不十分な時という条件のもと、
1)体重減少(6か月で5%以上)
2)食欲不振
3)以下の内、2つ以上当てはまる場合
(1)疲労感・倦怠感(JCOGのグレード1)
(2)全身の筋力低下(JCOGのグレード1)
(3)CRP>0.5 or Hb< 12 or Alb 3.2
ちなみに、
JCOGのグレード1は、いずれも
患者さんの自覚として倦怠感や筋力低下の訴えがあれば相当します。
客観的な数値(握力など)は必須ではありません。
1)~3)が投与条件となります。
((3)の3つの数値は、特別なものではなく、
実は、健診などでもよく調べる項目です)
ただし、
心機能による中止基準、休薬基準、注意喚起基準があり、
心電図検査が必要です。
内服は、起床直後の空腹時に内服します。
ですから、経口摂取ができることが前提となります。
副作用は、
心機能に関するもの、高血糖があり、
世界発の薬剤のため、副作用集積がこれからということもあり、
処方は、全例調査対象となっています。
薬剤に関するさらに詳しい情報
参考までに
がん悪液質について(2013年版緩和医療学会輸液ガイドライン)
ちなみに、
承認に時間がかかったのは、薬剤自体の問題ではなく、
適応症をどのように設定するかという点にあったようです。
悪液質は程度に差はあれ、どのがん種でも起こりえるため
当初はがん種を限定しないことも議論されたようですが、
治験は4疾患のみであったことから、そこに限定されたとのことでした。
この薬剤の機序は、
視床下部にあるグレリン受容体を作動させ、
脳下垂体から成長ホルモンの分泌促進することで、
視床下部から食欲を亢進、
肝臓でインスリン様成長因子を分泌させ
筋タンパクの合成を促進させ、
筋肉量を増やし、体重を維持していきます。
ちなみに、
患者さんは採血データが良好で適応はなく、
ご主人が作る食事は、お薬要らずでしたと
ご主人が作る食事は、お薬要らずでしたと
伝えてくださいねと説明して外来は終わりました。
患者さんがとても勉強されています。
その前に、医師はもとより看護師や薬剤師、栄養士にも
勉強する機会を作っていました。
患者さん達の質問に広く答えられるよう、これからも
患者さん達の質問に広く答えられるよう、これからも
学びの場を作っていこうと思います。
ご覧いただきありがとうございます。
何かのお役にたてば幸いです。
こちらにもお訪ね下さり、誠にありがとうございました!
aruga