緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

研究や政策に患者さん・市民の方の参画が求められるようになってきました:PPIとは

2021年08月01日 | つれづれ
都の新型コロナ感染者数が伸びていっています。
オーバーシュートも含め、あり得ることと思います。

オリンピックが無観客になっただけでも、熱中症などでERへの搬入数が抑えれれるので、よかったと思います。

どの医療機関も粛々と目の前のことに取り組んでいっています。





そして、オリンピック

まさにチームの競い合いです!



そんなオリンピックを見ていて、思い出したこと。

医学のチームアプローチ

PPI



これが何の略か知っている方は、医療者の中でもまだまだ多くありません・・




Patient and Public Involvement の略で
「患者・市民参画」と訳されます。


「協力」、「共働」などは部分的に力を貸すことも含まれます。
「Involvment参画(巻き込む)」は、もっと近く、物事の最初から関わり続けていくような関係性を指します。


PPIとは、
研究、政策、創薬などで ”計画段階”から患者・市民が関与していくことを指します。
出来上がったものに、意見をもらうような関係ではありません。


・医学研究の計画段階から患者・市民の意見を取り入れ、結果を含めともに考察していく。
・薬剤開発の計画段階から患者・市民の意見を取り入れていく。
・政府の医療政策に、患者・市民が委員の一人として参加し、医療者・法律家・福祉・行政らとともに、立案にかかわっていく。

といったことです。





現状で
行われていることで具体的に上げると・・

●各大学で実施している研究倫理委員会の委員に市民に入ってもらい、研究計画書の審査を一緒に行っていただく。
患者さんの同意書が、市民の目線で理解できる文章なのか意見をもらったりします。

●厚生労働省の審議会、がん登録部会に委員として参加。
法律の改定への意見、稀少がんの数の取り扱いが個人を同定するような用いられ方をしていないかといった指摘を頂くなど、議論をともに行っていただいたりします。

●各学会が作成しているガイドライン作成委員会の委員として参加。
ガイドラインは医療者が利用するものであっても、その先に、患者・市民にとって益があるものとしての作成となるか、意見をもらいます。

●私は過去に、医学部4年生のコミュニケーション演習のプログラムを作成するときに、患者会の代表者の方に、患者さんの目線で意見、感想をもらうために参画してもらったことがありました。



今後は、
臨床研究(患者さんに同意を頂き遂行するような研究)だけではなく、基礎研究(遺伝子、動物実験、分子生物的なアプローチなど)でも、グループに最初から入っていただくなどの関わりが増えていくと思われます。



このように、今や、医学、医療分野では、PPIは不可欠なものとなってきました。
とはいえ、かなり専門的なことが話し合われることも少なくなく、現在、国や都道府県の医療政策にかかわっている患者・市民の皆さんは、まだまだ限定的です。
もっと、広く、医療が身近になり、一緒に考えてもらえるよう敷居が低くなるようなことを、医療者は取り組んでいかなければいけないと思っています。

mohamed HassanによるPixabayからの画像 

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