緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

痛みは避けられないが、苦しみは選択できる。

2016年02月21日 | つれづれ


幸せについて知っておきたい5つの事
幸せとは技術である

(中経出版)
NHK 白熱教室 幸福学の中で
仏教か何かの言葉だと思うけれど・・
という前置きで説明された言葉。

この本にも最後に登場しています。

痛みは避けられないが、苦しみは選択できる。






ほう・・どういうことだろう・・
と思い調べてみました。

出典は、仏教ではなく、
マラソンランナーの言葉を引用した
ニューヨークタイムスの記事


村上春樹さんが、著書
走ることについて語るときに僕の語ること
の前書きに引用した一文だったようです。


Pain is inevitable. Suffering is optional

ルーマニアのオリンピック銀メダリストLidia Simonという選手が、マラソン中に繰り返して唱えているという言葉

正 確なニュアンスは日本語に訳しにくいのだが、あえてごく簡単に訳せば、「痛みは避けがた いが、苦しみはオプショナル(こちら次第)」とい うことになる。たとえば走っていて「ああ、きつい、もう駄目だ」と思ったとして、「きつい」とい うのは避けようのない事実だが、「もう駄目」かどうかはあくまで本人の裁量に委ねられていることである。この言葉は、マラソンと言う競技のいちばん大事な 部分を簡潔に要約していると思う。

(出典;http://lealta.jp/suffering-is-optional/



どうやら、このニューヨークタイムスの記事からすると
この言葉を使ったのは、Simonではなく
Nicholas Thurlow
というアマチュアランナーが
兄弟からかけられた
激励の言葉だったようではありますが・・






痛みは避けられないが、苦しみは選択できる。


とは・・

痛みは避けられないけれど、
それをどのように苦しいと感じるかは
受け手次第だ・・

痛み➡➡➡➡➡➡➡➡➡➡➡➡➡➡苦しみ
 ↑                ↑                      ↑
発生している   個々によって       この苦悩は
どうしようもない  修飾               一人一人異なる

        

ということと理解しました。

今まで、このように
痛みと苦しみを
原因とアウトプットと
分けて考えることは
したことがありませんでした。

緩和領域では、
Painの痛みを
もっと、大きく
全人的な精神的な、
社会的な問題、スピリチャルな要素などを
含めて、
Sufferring(苦悩)として
捉えていました。


(  苦悩  (身体的疼痛)      )

    ↑                  ↑
 精神的問題      スピリチャルな苦痛
 社会的問題





でも、そうではなく、
生理学的な疼痛を
個々の感じ方で修飾された
Sufferingとして捉えることは、
確かに、その人らしいことです。

ですので、アプローチは、



                              (アウトプット)
痛み➡➡➡➡➡➡➡➡➡➡➡➡➡➡苦しみ
 
↑        ↑                               ↑
発生している  個々によって      この苦悩は
どうしようもない  修飾           一人一人異なる
                           ↑
    
                     変えられる
 ↑                               
鎮痛薬                         ものの考え方・向き合い方
社会的な問題の整理            視点変換
(就労や経済的なものなど)       共有
心の痛みへのアプローチ          達観・諦め・楽観的に捉える
                                 忍耐・我慢などなど





これに対処する具体的な方法は
簡単ではありませんが、
今回の収穫は、
このように原因とアウトプットの有り方に
痛みを分けてアプローチを考えるという
新たな整理の方法を得ることが
できたことにあります。


しばらく、この整理方法で、
今までの困難事例を振り返ってみようと思います。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« TVに見るずれた(?)緩和ケ... | トップ | 医療者と社会・患者さんとの... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

つれづれ」カテゴリの最新記事