緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

医療者と社会・患者さんとのギャップは”意識して”埋める努力が大切

2016年02月28日 | 医療

緩和ケアのTV番組での表現について
このところ、記事を書いてみて思ったこと。。。

FBでは医療関係者とのつながりが多く、
ブログではオープンに社会の反応を拾うことができます。

同じ記事を両方に掲載してみて、
反応の差が結構あるものだなあと
感じました。

医療者は、もういいじゃないかと言わんばかりに
お腹いっぱいの様子が感じられ、
社会の反応としては、
記事をアップした後も、
長くアクセスが続いていました。

社会と言っても、ごく一部しかみていないので、
詳細なことを書くことは、実証的ではないので
控えるとして・・・

アクセスの裏側も結構な違いを感じます。

当事者、非当事者の違いなのか、
意識のズレなのか・・




医療チームから
医師が患者さんの苦痛に無頓着で困る
といった相談を受けることがあります。

一般論で語っても、
ほとんど解決にはつながりません。

最近かかわっている施設で、
そういうケースに遭遇しました。



で、その医師に話しかけてみました。

すると、その医師は、その方なりの
解釈やストーリーがあり、方針も定まっていました。




抗PD-1抗体を使い始めた
肺がんの患者さんの
胸壁浸潤の疼痛でした。

高用量の非経口投与オピオイドを
在宅移行が可能な形にスイッチングを
行っていたのですが、
頻回のレスキューを内服しており、
それが看護師さんには
上手くいっていないのではないかと
感じていました。

患者さん自身も、
レスキューや温めるといったことは
姑息的な感じがするので、
もっと、根本的なことはできないか
感じていらっしゃいました。





高用量のスイッチングで
相当のレスキュー1回量が必要となるのですが、
計算すると、通常1回量の2~3分の1が一回量でした。

ただ、これも、あまり高用量が1回に胃に入ると、
抗コリン作用のため、
胃蠕動が抑制されてしまうため、
胃もたれ感のようなものを生じてしまうため、
あえて、少なくしてありました。

ですから、1回内服しても、
すぐに痛みがでてしまうのも、
当然のことではありました。

早く、ベースを上げていくことが
遅れていることは否めませんし、
胸膜浸潤がありますから、
鎮痛補助薬を早く追加した方がよいのですが、
スイッチングを早く完了させてから、
次に移りたいという慎重さも
大切な状況にあると思われました。



また、抗PD-1抗体は、
肺がんにも2割~3割程度の
有効性が認められているのですが、
その効果評価には3か月程度
必要と言われています。

ですから、この3か月は粘り、待つ
ということを求められるわけです。




このような主治医が考えていることを
噛み砕いて、病棟看護師さんと患者さんに
説明したところ、
レスキューが多いという現象の背景と
3か月という待つことの意味が伝わり、
とても、安心され、次のステップとして
スイッチングを完了させ、次の補助薬等を検討し、
除痛の質を上げながら、効果を待つという
ケア目標が共有できました。

そうなれば、患者さんも
そこまでは、レスキューで粘ることや
温めるといった非薬物的緩和方法も
意味があることに変わっていきます。





このケースは、けして、
医師が痛みに無関心だったわけではなく、
ケア目標や新しい薬剤の知識の伝達が、
主治医チーム内で共有できていなかったことが
問題でした。




コミュニケーションギャップといっても、
色々あります。
中身を紐解き、それが有効に機能するように
探索的介入がとても大切なのです。

先の、医療者と社会一般の方々との反応の違いをみても、
ちょっとした違いとか個々の差ではない違いを感じます。

互いに話し合うことの大切さを改めて感じるこの頃です。

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