緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

希望(2)英語圏のクールさと帰着するところ。

2008年05月22日 | 医療

希望について、検索してみました。

「希望」という語は,日本語では,・「こいねがうこと.あることが実現することを待ち望むこと.また,その気持ち.のぞみ.願望」,・「将来への明るい見通し.のぞみ.可能性.見込み」(日本語大辞典)と定義されている.
また,英語の「ホウプ」(hope) は,・「望ましい何かに対する願望 desire で,達成されるであろうという期待 expectation を伴ったもの,あるいはそれが達成されるという信念 belief」,・「上記の願望ないし信念の対象」,・「ある未来のできごとにおいての確信 confidence」(Webster)と定義されている.多少の表現上の相違はあるが,両者に共通しているのは,「将来ないし未来において,望ましい何かが実現ないし達成せられることについての確信(または,願望および信念)であって,期待を伴ったもの」ということではないかと解釈される.
http://www.komazawa-u.ac.jp/~katsu/hope.html

ここでいう希望とは、hopeなんですね。
でも、私が思い描く希望とは、wishも含まれるのですが・・


スナイダー(Snyder, C.R.,1991) ─ スナイダーの希望尺度(成人用)
これによると
 ・発動性因子 agency   (目標に関する決意)
 ・通路因子   pathways(障害を乗り越えて目標を達成する手段を見い出せる能力についての認知的評価)
つまり、目標にどう決意しているかと
目標達成 をするための方法を見つけられる能力が
希望の尺度だということになります。

いや~、希望って、決意と方法をみつけられる力なんでしょうか。
つまり、やはり、それを叶えられる強さを尺度にしているってことですよね。

本当に、英語圏ってすごいなあと思います。
この尺度のみならず、日常から希望を語るとき、叶う希望と叶わない希望をhopeとwishで明確に分けて表現するのですから。

I wish I were a bird.
鳥ならいいのになあ。

私が鳥になるなんてあり得ない。
だから、仮定法過去で今を表現するのです。
現在、鳥なりたいと思っていると言いたい時も、過去形で表現。
これって、絶対ありえないことだけどさ~って、ここまで強く伝えるのですね。



前回の記事の希望の定義。
叶わないかもしれない望み、絶対叶うことがない望み、やっぱりそれも私にとっては希望なんです。
また、希望というと将来に対する望みと思いがちですが、今の心地よさだけでも希望を感じるときがあります。

月曜日、「今日はとても、心地いいのよ。(今一番大切にしたいことってなんですか?)それは、美味しく食べることよ。本当においしいの。大事でしょ。食べること」
トイレにやっと立てるくらいの状態でしたが、
遠くを見つめる患者さんには、透明感がありました。

この2日後、お亡くなりになりました。
いつか食べられなくなることはよくお分かりになっていらっしゃいました。
だから、美味しいと感じられることが喜びであり、次の時もそう感じられるといいなあと微笑みながらおっしゃった顔が忘れられません。



前記事にコメントを寄せてくださった方の希望は、
言葉をかえると、心のよりどころであり、目標という言葉で表現されていました。
本当に、希望は、それぞれの方の感覚であり、尺度であり、何が希望なのかとは明確化はできないものなのだと思いました。

ただ、共通していることは、どのような背景があっても希望は見つけることができること、それは生きていくうえでとても大切なことなのだということでした。

コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 希望とは・・ | トップ | 緩和専門薬剤師養成研究会と... »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
希望は大きいとは限らない (fumi)
2008-05-27 11:13:49
希望:パソコンなしの出張から戻り、遅れて拝読しました。コメントを拝見し、ブログ読者が、「希望」を大きすぎる規模でとらえているように感じました。緩和ケアの開拓者オックスフォードのTwycross先生は1984年及び1990年に”Hope is an expectation greater than zero of achieving a goal.”と述べています(Therapeutics in Terminal Cancer. 2nd Ed.,1990)。これを読み、希望とは「したいことがちょっとでもあること」だと瞬時に思いましたが、その訳を「希望とは、たとえ少しでも、成し遂げられるものが存在すると期待すること」としました(末期癌患者の診療マニュアル。改訂版、医学書院、1991)が、もっと分かりやすく翻訳すべきだったとも反省。Twycross先生は患者さんの心を知り尽くし、小さな希望も叶えてあげようとの心で記述したのでしょう。例えば、「明日は孫の顔がみたい」なども。同先生は10月19日の横浜での日本緩和医療薬学会総会でゲスト講演の予定です。
返信する
コメントありがとうございます! (aruga)
2008-05-27 21:30:25
fumi先生、お帰りなさい!!
ご指摘の希望は小さなものの積み重ねと、大きな夢や願いからなる・・のだと思っています。
コメントを寄せてくださった方々は、皆さんささやかな目標ももちろんお持ちだと思います。が、コメント欄は小さいので、代表的な大きな目標や夢をお書きくださったのだと思います。また、Twycross先生や緩和ケア病棟で患者さんを支援するときの、ちょっとした前進と、読者の方々の人生のうねりやエネルギーの大きさは異なるものかもしれません。
改めて、英文を読み、やはり、hopeであり、achiieveing goalであることを認識しました。wishやdreamをも希望として持ちたいという感覚とは少し違うのかもしれないと感じた次第です。
先生、どうなのでしょうか。叶えられないことも夢も希望の一つとして捉えるのは、日本人ならではなのでしょうか。それとも、私個人の嗜好でしょうか・・
返信する
希望 (fumi)
2008-05-28 11:52:48
コメントへのお返事、ありがとうございました。
 病人が抱く希望には小さいものから、大きいものまであり、自らの病気の経験のない(若い)医療関係者は、大きな希望のほうに目を奪われ、小さい希望を見落としがちですので、「実現しやすい希望(小さなことが多い)を先ず実現するようにしたあげましょう」との方針を大切にしていますが、大きい希望を無視しているわけではありません。小さな希望も叶えられないことがありますが、患者さん本人は、周囲の人々が叶えられるよう務めてくれていると感じると救われた気持ちを持つようです。
 英語のnative speakerではない私なので、英単語の微妙な意味合いまで分かりませんが、Twycross先生は言葉を慎重に使う人で、「一語一語を愛しながら使うね」と本人に言ったら、「分かってくれるか」と喜ばれたこともありましたが、私は彼がそういうならhopeとはachieving goalがzeroではない期待することと思ってしまいましたが、おっしゃるとおり、wishやdreamとは意味合いが異なりますね。ともかくわれわれは患者さんの小さいhopeまで尊重すべきです。
 英語のdreamと日本語の夢は、眠っている最中に見る「夢」という点では同義語ですが、意味するところの幅は英語のほうが狭いかもしれないと感じたことがあります。むずかしいですね。
返信する
本当ですね。 (aruga)
2008-05-29 00:05:45
あらためて、小さなhopeということを考えてみました。先生のコメントを読ませていただいていて、昔の出来事を思い出しました。週末にでも書こうと思っています。
dream・・これも、そういわれてみれば思い当たることが・・先生の真意をとらえた訳、好きです。
返信する
納得! (atusato)
2008-05-31 13:49:48
 私は、治療の病院に戻ってきて、スタッフが、いい看護を、緩和ケアができていると感じています。それをスタッフにフィードバックするのですが、スタッフに言わせると「ぜんぜんできてません・・・」と言うのです。緩和ケア病棟に行くことや、ドラマで出てくるような壮大なことでなくて、「歩いてトイレに行きたい」という方にどうやっていったら楽に行けるのか考えたり、短い時間でも外出にいけるように(それこそ生まれたばかりの孫の顔をみに)手配したり、とちゃんとやっているのですが、その小さな希望を叶えることでは、看護師も満足しないのです。なんでかな??と、この所考えていたのですが、fumi先生とaruga先生のこのコメントをみて納得しました。私は、まずスタッフに希望について考えてもらえるように働きかけて行きたいと思います。
返信する
はっとしました。 (aruga)
2008-06-02 20:05:11
私も経験ありました。看護師さん達の謙遜だと思っていました。
stusatoさんのコメントを読ませていただき、確かにそうだったのかもしれないと思い起こしました。
atusatoさんすごいです。認定看護師さんとしての本気の活動を感じます。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

医療」カテゴリの最新記事