緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

神経の痛みって色々あるんです:化学療法CIPNの鎮痛療法の論文も

2024年08月25日 | 医療
体の神経の痛み(末梢)は
大きく分けて2種類

単神経障害性疼痛

多発神経障害性疼痛

<単神経障害>
■特徴
1本の神経が何らかの原因で障害
その神経の領域にビリビリと痛みが走る
四肢は縦に痛み

■原因
例えば
ヘルペス後神経痛
椎間板ヘルニアの下肢痛
顔の三叉神経痛など

潜んでいたウイルスや
外傷や
突出してくる何か(ヘルニア、変形、腫瘍など))で障害を起こしたり・・


<多発神経障害>
■特徴
複数の神経の障害
手や足の遠いところ(末梢)から
 手袋-ソックス型の痛み
四肢は横に痛み

■原因
例えば、糖尿病性末梢神経障害、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)など
内科的な疾患などで全身性に障害を起こしている状態


手の痛みでも

単神経障害では
 薬指と小指が痛むといった
 縦に痛みが部分的に生じます
腋窩(脇の下)のリンパ節など診察の時に気を付けて確認します

多発神経障害では
 5本の指先が全部痛むけれど
 痛みは手掌まで(横断的)で
 手袋の範囲といった具合です
化学療法の薬剤を確認したりします


■治療
薬物
 内服:鎮痛補助薬(プレガバリン、ミロがバリンなど)
   オピオイド(トラマドール他)
 貼付剤
 局所アプローチ:ブロックなど

非薬物
 局所アプローチ:パルス高周波法を用いたブロック
 心理療法、認知行動療法

ただし、
多発神経障害では
 局所アプローチは病態によって検討が必要です
 内科的疾患では(糖尿病など)現疾患の治療を十分に行うことが重要です。



医療者向け情報です

CIPNに対するミロガバリンとプレガバリンの比較試験の紹介
BMC Cancer volume 21, Article number: 1319 (2021) 

FORFIRINOXまたはGnPを受けた膵癌患者(163人)でCIPNを生じた患者(34人)において、ミロガバリン(13人)またはプレガバリン(21人)を投与された2群間ではいずれの薬物が鎮痛に有効だったか。

調査対象期間:2014~2021年
評価尺度:CTCAE v5.0
評価方法:治療開始後2、4、6週間後に評価

 左:ミロガバリン  右:プレガバリン

ミロガバリン最大15㎎、プレガバリン最大150㎎で両方グループとも治療開始前と比較して有意な改善を示した。
   *P<0.05、** P<0.01


CIPNの改善率は、2週間目からミロガバリンの方がプレガバリンより有意に高かった。

CIPN : 
Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy  
化学療法誘発性末梢神経障害
CTCAE :
Common Terminology Criteria for Adverse Events
有害事象共通用語基準


日常診療でも
プレガバリンでも
ミロがバリンでも
効果は感じます。
この論文の通り
ミロガバリンの方が
よく効いている感覚があります。
眠気も少ないように思います。

化学療法の薬の種類によって、
神経障害のターゲットが
変わってくることもあり
個人差があるので、
いずれかを投与始めた後
切り替えることも念頭に
その患者さんに合ったものを
選択していくようにしています。

StockSnapによるPixabayからの画像

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