越後の河童 (仮題) 動物界霊異誌 河童その2
2023.7
文政年間の事である。越後國の上杉六郎と言う人の話である。
同国(えちご:新潟県)蒲原郡の保内と言う所の河で夏の日、村の者が数人、水泳をやっていた。
その時、一人の男が河童に足をつかまえられて、深みへ引き込まれそうになった。
その男は、大声で助けを呼び、「河童に引かれるワ」と叫んだ。
河童と聞いたので、他の者は恐れて、みな岸へ逃げ上って、一人も助けようとするものが無かった。
彼は足を引かれるので、死力を尽くして泳ぎ上ろうとしたが、次第に引き込まれて行った。
そして、不思議なことには、河の水が粘って、手足が動かぬようになり、危なくなったので、一心に氏神の八幡宮を念じた。
すると、どこからともなく空中から
『その水に齧(かじ)りつくだ』と言う声が二度ほど聞えたので、その言う通りにしたら、水の粘るのが止んだ。
身も軽くなり、渚に泳ぎ着くことが出来た、と言う。
しかし、
「水を粘ばらせると言うことも奇怪」、
「その水に噛ぢりつくと粘ばりが止むのも、また奇怪だ」
云々(うんぬん)と語ったそうだ。
これは、如何(いか)にもわからぬ奇怪事であった。
(早田篤胤手記)動物界霊異誌 より
2023.7
文政年間の事である。越後國の上杉六郎と言う人の話である。
同国(えちご:新潟県)蒲原郡の保内と言う所の河で夏の日、村の者が数人、水泳をやっていた。
その時、一人の男が河童に足をつかまえられて、深みへ引き込まれそうになった。
その男は、大声で助けを呼び、「河童に引かれるワ」と叫んだ。
河童と聞いたので、他の者は恐れて、みな岸へ逃げ上って、一人も助けようとするものが無かった。
彼は足を引かれるので、死力を尽くして泳ぎ上ろうとしたが、次第に引き込まれて行った。
そして、不思議なことには、河の水が粘って、手足が動かぬようになり、危なくなったので、一心に氏神の八幡宮を念じた。
すると、どこからともなく空中から
『その水に齧(かじ)りつくだ』と言う声が二度ほど聞えたので、その言う通りにしたら、水の粘るのが止んだ。
身も軽くなり、渚に泳ぎ着くことが出来た、と言う。
しかし、
「水を粘ばらせると言うことも奇怪」、
「その水に噛ぢりつくと粘ばりが止むのも、また奇怪だ」
云々(うんぬん)と語ったそうだ。
これは、如何(いか)にもわからぬ奇怪事であった。
(早田篤胤手記)動物界霊異誌 より
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