世間では株価が上がり経済の明るい兆しがるかのように数字ばかりが踊っていますが、庶民の暮らしはどうなのでしょうか。誰に聞いても実感がないと、むしろ苦しい生活を強いられている人が多いように感じます。しかし苦しい時にこそ、声をかけつながった人と人との関係は、そう簡単には切れずむしろ力になってかえってきます。普段よりエイズや肝炎の患者さんのお付き合いから、ただでさえ病気で身体が大変なところ、声をかけてくださり逆に元気をもらったりします。自分の身体に病気を持って働くことも大変で経済的にも苦労しているのに一日一日を乗り切っています。そんな時の声かけが大きな力になります。人間の心は弱いものですから調子が良い時にはついつい有頂天になって自分の自慢話ばかりで周りが見えなくなり表面的な付き合いだけになってしまいます。苦しい時にこそ人間の絆は強く結ばれるようです。
「最近の若者は・・・」とおじさんたちが若者を批判したりしますが、最近の若者は大学を卒業して大手企業に就職せず、社会問題の解決を目的にしたNPOに就職する者が出てきました。今週の東洋経済という雑誌にも特集されていますが、NPO自体の立ち上げも若者が集まりボランティアではなく事業として成り立つよう活動しています。私も好奇心が強いせいかいくつかの若手の社会起業家が運営するNPOとお付き合いしています。私は変人なのか面白いと思うとどこにでも行ってしまいます。ずいぶん前ですが学生向けのNPOの就職説明会に面白いNPOと参加したことがあります。変なおじさんがいると慌てた担当者が私のところへ来るところを間違えていないかと尋ねてきました。私がおたくのNPOは面白いことをしているので聞かせてくれないかと言ったら参加を許してくれました。なかなか心も大きい若者です。やはり志を高く活動している若者は心も大きいです。若者は覇気がないと将来を心配するおじさんたちが多いですが、まだ少数かもしれませんが、元気の良い若者はまだまだ居ります。
私は薬害エイズ被害者との出会いから薬害エイズ訴訟や薬害肝炎訴訟の支援活動に関わってきましたが、裁判の支援に関わっていつも思うことは、こんなに苦労してまで裁判をしなければ被害者の思いは達成できないのかということ。被害者が国を相手に裁判するということは大変なことです。被害者へのバッシングも大変なものです。「お金が欲しいのか」とか「国を相手にするとはなにごとか」とか・・・被害者とお話をしてお金目当ての人はおりません。むしろ二度とこのような悲惨な問題を起こしてほしくないと、薬害が起きる社会をなんとかしたいという思いが伝わってきます。
もちろん裁判は被害救済の制度として大切なことは分かります。現に薬害エイズの裁判で国と和解して国に対してエイズ治療体制の確立を求めて、その後の治療体制は進展して、薬害エイズ被害者だけでなく多くのHIV陽性者の命は救われています。被害者が勇気を持って裁判をしなければ、ここまでエイズ治療体制は進んでいなかったでしょう。薬害肝炎の裁判でも国との和解後に国会で肝炎対策基本法が成立して肝炎治療体制が進んでいます。被害者の勇気ある行動が自分のことだけではなく他の多くの患者を救っています。しかし、ここまでしなければ国は動かないという現状も考えなければなりません。そして薬害被害者が訴え続けても薬害が繰り返し起きているのも現実です。
さて、今週金曜日の12日には最高裁判所で発売当初多くの副作用死を出した抗がん剤イレッサ問題の薬害イレッサ訴訟の判決があります。すでに被告国にたいする上告は棄却され原告被害者の敗訴が確定していますが、被告企業に対する判決があります。この裁判でも原告遺族はそ苦労をしています。しかし、裁判をすることによって抗がん剤ちりょうに対するいろいろな動きも出てきました。以前、副作用救済制度がない抗がん剤について検討する動きがでたりす。二人に一人ががんになるという時代に被害者はがん患者の命の尊さを訴えています。12日の判決で薬害イレッサ問題が終わるのではなく、正に判決を機会にどうあるべきか考えていかなければなりません。
今日は新宿区の戸山公園で行われたHIV陽性者のケア団体であるぷれいす東京の花見に参加してきました。強風で食べ物などが吹き飛ばされそうになりましたが、晴天で交流は出来ました。普段の関心ごとや生活なども普段の活動では聞かれないことなどが聞くことができ、また理解も深まりました。
今日は、都内もそこらじゅうで強風の影響で物が飛ばされたり、けっこう交通機関も止まっているところがありました。うちのご近所でも建物の外壁が飛ばされそうだとかで消防車がたくさん出ていました。
さて、今週の金曜日は薬害イレッサ訴訟の最高裁判決です。裁判の結果がどうあれ抗がん剤の副作用死が発売当初多数出てしまったことは事実で、がん治療の現場で起きたことをどう受け止めたら良いのか、がんが二人に一人がなると言われている時代に他人事ではなく、がん患者の命の尊さを思い、がん治療とどう向き合っていけばよいのか考えていかなければならないと思います。
勝海舟が「氷川清話」の中で幸田露伴について次のように書いています。
「小説も退屈のときには読んでみるが、露伴という男は、40歳くらいか。あいつなかなか学問もあって、今の小説家には物識で、すこしは深そうだ。きけば郡司大尉の弟というが、兄弟ながら面白い男だ」
辛口の勝海舟が面白いといっているくらいだから幸田露伴はたいしたもんだと思います。早速、幸田露伴の「努力論」(岩波文庫)を読んでみています。