ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

はじめにお読みください

健保連大阪中央病院に勤務するラパロスコピスト(腹腔鏡術者)のブログです。婦人科腹腔鏡下手術、子宮内膜症、慢性骨盤痛等の治療を専門としています。

このブログでは腹腔鏡下手術、子宮内膜症、子宮筋腫に関する基本的な事柄については解説していません。まず、下記のウェブサイトをご覧になることをお勧めします。
日本子宮内膜症協会
子宮筋腫・内膜症体験者の会 たんぽぽ

手術を希望される方はこちらをご覧ください。

医療相談、ご質問にはお答えしませんのでご了承ください。

おすすめの本はこちら?ブックス・ラパロスコピスト

子宮筋腫の診療ガイドライン その12

2009-01-09 | 子宮筋腫
このガイドラインには、集束超音波治療(FUS)に関するコメントがない。ちょうど、ガイドラインのできたのがFUSが出はじめたころだったからだろう。ガイドラインの改定が出れば、FUSに関する勧告がでるに違いない。

FUSは、超音波の振動エネルギーを筋腫に集中させて筋腫の細胞を凝固壊死させる(虫眼鏡で太陽光を集めると黒い紙が焼けるようにして)治療法である。治療の適応となるもののうち約2割程度が対象になりうるそうだ。筋腫の中を凝固壊死させることができても外縁は(周辺組織を損傷させてしまうかもしれないので)そのまま残ってしまうので再発の可能性は残る。長期予後はわかっていない。非常に大がかりな設備が必要なので施行できる施設は限られる。保険も適応されず50~80万円くらいかかってしまうらしい。

しかし、侵襲は非常に小さいので、FUSの治療対象になる場合には考えてみる価値はあるだろう。
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子宮筋腫の診療ガイドライン その11

2009-01-08 | 子宮筋腫
14. There is currently no evidence to substantiate performing a hysterectomy for an asymptomatic leiomyoma for the sole purpose of alleviating the concern that it may be malignant.

無症状の子宮筋腫が悪性かもしれないという理由で子宮全摘を行う必要はないという内容である。子宮筋腫が悪性であるのは(平滑筋肉腫)1000~2000例に1例程度である。子宮平滑筋肉腫を術前に診断するのは非常に難しく、MRIで推定できることがある程度である。

結局、無症状の筋腫はあえて手術をしなくてもいい、少々大きくても経過観察してよいだろうという内容である。経過観察していて少しずつ大きくなってくると、どうするべきか迷うかもしれないが。手術をするかどうかは、結局、症状によって困っているかどうかということである。
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子宮筋腫の診療ガイドライン その10

2009-01-07 | 子宮筋腫
13. Hormone replacement therapy may cause myoma growth in postmenopausal women, but it does not appear to cause clinical symptoms. Postmenopausal bleeding and pain in women with fibroids should be investigated in the same way as in women without fibroids.

閉経後のホルモン補充療法(HRT)についての勧告である。結局は、筋腫があってもHRTしてもよいということである。ちょっと大きくなるかもしれないが心配ないということだろう。
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子宮筋腫の診療ガイドライン その9

2009-01-06 | 子宮筋腫
12. In women who present with acute hemorrhage related to uterine fibroids, conservative management consisting of estorogens, hysteroscopy, or dilatation and curetage may be considered, but hysterectomy may become necessary in some cases.

粘膜下筋腫は、ときに多量の不正性器出血をきたすことがある。まずは止血剤や掻爬などで経過観察するが、止血困難な場合には子宮鏡下手術(適応があれば)、腹腔鏡下もしくは開腹による筋腫核出術、子宮全摘術を施行することになる。

このガイドラインでは”子宮全摘術が必要になる場合がある”と述べているが、ちょっと誤解を招きやすい表現ではないだろうか?妊娠を希望しない場合なら、そうかもしれないが、子宮の温存がどうしても必要な場合には子宮筋腫核出術が選択されるか子宮動脈塞栓術が行われるはずだと思うが・・・
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子宮筋腫の診療ガイドライン その8

2009-01-05 | 子宮筋腫
10. Concern of possible complications related to fibroids in pregnancy is not an indication for myomectomy, except in women who have experienced a previous pregnancy with complications related to these fibroids.

11. Women who have fibroids detected in pregnancy may require additional fetal surveillance when the placenta is implanted over or in close proximity to a fibroid.

妊娠と筋腫に関する勧告である。

10.は、以前の妊娠において筋腫による合併症(流早産など)の経験がなければ筋腫核出術は必要ないとのべている。筋腫合併妊娠では切迫流産や切迫早産などで入院管理が必要になることが多いように思われる。しかし、それらでも適切に管理できれば、満期産になるものがほとんどで、実際に流早産の原因になるのはかなり少ない。

11.は、胎盤が筋腫の上に付着しているときには合併症(流早産、前期破水、常位胎盤早期剥離)が起こりやすいので注意が必要であるという内容である。筋腫合併妊娠は多く診てきたが、(入院管理は別として)合併症がおこることはほとんどなかった。

未経妊女性の子宮筋腫の場合、妊娠を前提として考えて手術適応を決めるのは難しい。このガイドラインから考えれば、将来の妊娠のために筋腫を核出する必要はないということである。
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子宮筋腫の診療ガイドライン その7

2009-01-04 | 子宮筋腫
9. Removal of fibroids that distort the uterine cavity may be indicated in infertile women, where no other factors have been identified, and in women about to undergo in vitro fertilization treatment.

筋腫以外の不妊原因がない場合や体外受精を行う場合、子宮の内腔を変形させるような筋腫は切除すべしという内容である。たしかに子宮内腔に突出した筋腫を切除した場合、術後早期に妊娠が得られることが多い。また、原因不明の不妊の場合、子宮内腔を変形させていない筋腫であっても、筋腫核出術後に妊娠することも少なくない。

ただし、子宮筋腫のみが原因となっている不妊症というのは決して多くはないと思われるので、手術をすればすぐ妊娠できるとい期待しない方がいいだろう。不妊症の専門医(場合によっては周産期専門医のセカンドオピニオンも)とよく相談することが大事である。
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子宮筋腫の診療ガイドライン その6

2009-01-03 | 子宮筋腫
7. Uterine artery occlusion may be offered as an alternative to selected women with symptomatic uterine fibroids who wish to preserve their uterus.

8. Women choosing uterine artery occlusion for the treatment of fibroids should be counselled regarding possible risks, and that long-term data regarding efficacy, fecundity, pregnancy outcomes, and patient satisfaction are lacking.

子宮動脈閉塞術にはいろいろな方法があるが、もっともポピュラーなのは動脈カテーテルによる子宮動脈塞栓術(UAE)である。腹腔鏡による子宮動脈結紮もあるが、本邦では普及していない。UAEは私の施設では施行していない。日本ではもっとも問題なのは保険適応にならないので、治療費は自費で50-60万円くらいかかることである。(生命保険の特約では、給付金が出る者もあるらしい。)

UAEは、子宮温存を希望する患者で腹腔鏡下手術が容易ではないと判断される場合によい適応になるかもしれない。とくに多発性筋腫で取り残しが出そうな場合には良さそうに思える。子宮が大きな場合、頸部に筋腫があって膣動脈からの栄養を受けていると考えられる場合などでは、良い適応かどうかはよくわからない。

妊娠や不妊治療に対する予後は明らかになっていないので将来的に挙児希望がある場合の適応は慎重であるべきだが、最近では妊娠分娩例の報告も出てきていて、あまり問題はないのかもしれない。
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子宮筋腫の診療ガイドライン その5

2009-01-02 | 子宮筋腫
6. Laparoscopic myolysis may present an alternative to myomectomy or hysterectomy for selected women with symptomatic intramural or subserous fibroids who wish to preserve their uterus but do not desire future fertility.

laparoscopic myolysisは日本では行われていない。この手術の内容を知っている人は日本ではほとんどいないだろう。

laparoscopic myolysisは10mmほど間のあいた二本の串状の双極電極を子宮に刺入させ、電流を流し、筋腫の栄養血管を凝固させ、筋腫を壊死させてしまう手術である。何回か筋腫の底をめがけて電極を刺し、通電し凝固させると筋腫の血流がなくなり表面は白くなる。これを腹腔鏡でおこなうものである。妊娠を希望しないが子宮を温存したい人にとってはよい手術らしい。

laparoscopic myolysisは1990年代にAAGLでAwardを受賞した。私もビデオで一度見たことがあるだけだが、北米では普及しているのかもしれない。日本では普及しないだろうと思う。
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子宮筋腫の診療ガイドライン その4

2009-01-01 | 子宮筋腫
4. Hysteroscopic myomectomy should be considered as first-line conservative surgical therapy for the management of symptomatic intracavitary fibroids.

5. It is important to monitor ongoing fluid balance carefully during hysteroscopic removal of fibroids.

子宮鏡下筋腫核出術についての勧告である。(当院では、この手術は行っていない。)子宮内腔に突出した子宮筋腫は、過多月経や不正出血、不妊や反復流産の原因になることが多い。その中で、筋腫の基底部の面積の小さなものに対しては、子宮鏡下筋腫核出術のよい適応になる。

腹腔鏡下手術で粘膜下筋腫を切除した場合、子宮筋層を深く切開することになるため、術後の分娩については帝王切開となることが多い。一方、子宮鏡下手術で行った場合、子宮内腔に大きく突出した筋腫であれば子宮筋層に対する侵襲は小さくなるため経膣分娩も可能なことが多い。そういう点では子宮鏡下手術のほうが優れている。

しかしながら、勧告の中にわざわざ術中の電解質バランスのチェックの項目を加えているように、低ナトリウム血症(潅流液の過度の吸収による)、子宮穿孔や術中出血など重大な合併症もありうるので、どういう術式を選択するかについては適切でなければならない。筋層内筋腫に近いような粘膜下筋腫では、開腹もしくは腹腔鏡下による筋腫核出術を行う方が賢明であろう。
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