最初にRADWIMPS(ラッドウィンプス)という若い音楽グループを知ったのは、数年前、フランクフルト行きの飛行機でのことでした。評判だったアニメ映画「君の名は。」を早速見たのです。おそらく東日本大震災などを意識した、男女の淡い恋模様を描いた作品のように私には映ったものでした。その時、男女のからだが入れ替わってしまう、山中恒の『おれがあいつであいつがおれで』を思い出していました。
この作品の内容もさることながら、流れる音楽が、団塊の世代のこの私にも心地よく響いたのは事実です。CDを買うところまではいかなかったのですが、ユーチューブで彼らの音楽を聴いてみることはしました。
ところが、そんな彼らが、フジテレビ系のサッカーワールドカップの応援ソングを歌っていて、軍歌っぽいとか、愛国ソングとか言われて批判されていることを朝日新聞で知りました。
そこで、さっそくユーチューブで「HINOMARU」を聞きました。正直言って、馴染みやすいところもありますが、曲そのものはそれほどいいとは思いませんでした。しかしこれは曲調は軍歌ではないが、曲想は軍歌と言えそうです。
歌詞を見て愕然としました。「気高きこの御国の御霊」「日出づる国の 御名の下に」「僕らの燃ゆる御霊は」「幾々千代に さぁ咲き誇れ」など、違和感が半端ではないのです。「君が代」を連想させる古語混じりのこの歌詞はけしていい文章とは思えません。「御国の御霊」って一体何なのでしょう。
歌詞を紹介しましょう。
「HINOMARU」 / RADWIMPS
風にたなびくあの旗に
古よりはためく旗に
意味もなく懐かしくなり
こみ上げるこの気持ちはなに
胸に手をあて見上げれば
高鳴る血潮 誇り高く
この身体に流れゆくは
気高きこの御国の御霊
さぁいざゆかん
日出づる国の 御名の下に
どれだけ強き風吹けど
遥か高き波がくれど
僕らの燃ゆる御霊は
挫けなどしない
胸に優しき母の声
背中に強き父の教え
受け継がれし歴史を手に
恐れるものがあるだろうか
ひと時とて忘れやしない
帰るべきあなたのことを
たとえこの身が滅ぶとて
幾々千代に さぁ咲き誇れ
さぁいざゆかん
守るべきものが 今はある
どれだけ強き風吹けど
遥か高き波がくれど
僕らのたぎる決意は
揺らぎなどしない
どれだけ強き風吹けど
遥か高き波がくれど
僕らの燃ゆる御霊は
挫けなどしない
僕らのたぎる決意は
揺らぎなどしない
ソングライター: Yojiro Noda
HINOMARU 歌詞 © Universal Music Publishing Group
アーティスト: RADWIMPS
リリース: 2018年
他局のサッカーワールドカップの応援ソングはどうなっているのかなと思っていたら、TBSラジオ、荻上チキの番組で2人のゲストを呼んでそれらを検証していました。とてもおもしろい企画でした。取り上げられた曲も紹介しておきましょう。
●2018.6.14 木曜日
【音声配信】「RADWIMPS、ゆず、椎名林檎・・・J-POPにも登場!?『愛国ソング』~その傾向と対策」辻田真佐憲×増田聡×荻上チキ▼2018年6月13日放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」22時~)
M1 「HINOMARU」 / RADWIMPS
M2 「にっぽんぽん」 / 味噌汁‘s
M3 「ガイコクジンノトモダチ」 / ゆず
M4 「愛國者賦」 / 鐵槌
M5 「凶気の桜」 / K DUB SHINE
M6 「オレたちの大和 / 般若
M7 「ライフタイムリスペクト」 / 三木道三
M8 「陽は、また昇る」 / アラジン
M9 「NIPPON」 / 椎名林檎
M10 「君が代」 / ピチカート・ファイブ
はてさて話は飛びますが、昨日は6月23日(土)、沖縄慰霊の日でした。テレビから流れてくる中学3年生の「生きる」という詩の朗読(実際は暗唱していました)が私の心に届いてきました。沖縄という土地に根ざした、等身大の女子中学生の叫びでした。私たちは、彼女にどう応えれば良いのでしょうか。
■沖縄慰霊の日
平和の詩「生きる」全文
沖縄県浦添市立港川中学校 3年 相良倫子
私は、生きている。
マントルの熱を伝える大地を踏みしめ、
心地よい湿気を孕んだ風を全身に受け、
草の匂いを鼻孔に感じ、
遠くから聞こえてくる潮騒に耳を傾けて。
私は今、生きている。
私の生きるこの島は、
何と美しい島だろう。
青く輝く海、
岩に打ち寄せしぶきを上げて光る波、
山羊の嘶き、
小川のせせらぎ、
畑に続く小道、
萌え出づる山の緑、
優しい三線の響き、
照りつける太陽の光。
私はなんと美しい島に、
生まれ育ったのだろう。
ありったけの私の感覚器で、感受性で、
島を感じる。心がじわりと熱くなる。
私はこの瞬間を、生きている。
この瞬間の素晴らしさが
この瞬間の愛おしさが
今と言う安らぎとなり
私の中に広がりゆく。
たまらなく込み上げるこの気持ちを
どう表現しよう。
大切な今よ
かけがえのない今よ
私の生きる、この今よ。
七十三年前、
私の愛する島が、死の島と化したあの日。
小鳥のさえずりは、恐怖の悲鳴と変わった。
優しく響く三線は、爆撃の轟に消えた。
青く広がる大空は、鉄の雨に見えなくなった。
草の匂いは死臭で濁り、
光り輝いていた海の水面は、
戦艦で埋め尽くされた。
火炎放射器から吹き出す炎、幼子の泣き声、
燃えつくされた民家、火薬の匂い。
着弾に揺れる大地。血に染まった海。
魑魅魍魎の如く、姿を変えた人々。
阿鼻叫喚の壮絶な戦の記憶。
みんな、生きていたのだ。
私と何も変わらない、
懸命に生きる命だったのだ。
彼らの人生を、それぞれの未来を。
疑うことなく、思い描いていたんだ。
家族がいて、仲間がいて、恋人がいた。
仕事があった。生きがいがあった。
日々の小さな幸せを喜んだ。手をとり合って生きてきた、私と同じ、人間だった。
それなのに。
壊されて、奪われた。
生きた時代が違う。ただ、それだけで。
無辜の命を。あたり前に生きていた、あの日々を。
摩文仁の丘。眼下に広がる穏やかな海。
悲しくて、忘れることのできない、この島の全て。
私は手を強く握り、誓う。
奪われた命に想いを馳せて、
心から、誓う。
私が生きている限り、
こんなにもたくさんの命を犠牲にした戦争を、絶対に許さないことを。
もう二度と過去を未来にしないこと。
全ての人間が、国境を越え、人種を越え、宗教を越え、あらゆる利害を越えて、平和である世
界を目指すこと。
生きる事、命を大切にできることを、
誰からも侵されない世界を創ること。
平和を創造する努力を、厭わないことを。
あなたも、感じるだろう。
この島の美しさを。
あなたも、知っているだろう。
この島の悲しみを。
そして、あなたも、
私と同じこの瞬間(とき)を
一緒に生きているのだ。
今を一緒に、生きているのだ。
だから、きっとわかるはずなんだ。
戦争の無意味さを。本当の平和を。
頭じゃなくて、その心で。
戦力という愚かな力を持つことで、
得られる平和など、本当は無いことを。
平和とは、あたり前に生きること。
その命を精一杯輝かせて生きることだということを。
私は、今を生きている。
みんなと一緒に。
そして、これからも生きていく。
一日一日を大切に。
平和を想って。平和を祈って。
なぜなら、未来は、
この瞬間の延長線上にあるからだ。
つまり、未来は、今なんだ。
大好きな、私の島。
誇り高き、みんなの島。
そして、この島に生きる、すべての命。
私と共に今を生きる、私の友。私の家族。
これからも、共に生きてゆこう。
この青に囲まれた美しい故郷から。
真の平和を発進しよう。
一人一人が立ち上がって、
みんなで未来を歩んでいこう。
摩文仁の丘の風に吹かれ、
私の命が鳴っている。
過去と現在、未来の共鳴。
鎮魂歌よ届け。悲しみの過去に。
命よ響け。生きゆく未来に。
私は今を、生きていく。
(毎日新聞2018年6月23日)
〔追記〕
「リテラ」というサイトを愛読しています。下記のような記事が目白押しです。
■サッカーW杯・各テレビ局のテーマソングを徹底比較
RADWIMPSとは真逆なSuchmosのNHK・W杯ソング! 愛国に絡め取られず「血を流さぬよう歌おう」「武器は絶対にもたない」2018.06.19
この作品の内容もさることながら、流れる音楽が、団塊の世代のこの私にも心地よく響いたのは事実です。CDを買うところまではいかなかったのですが、ユーチューブで彼らの音楽を聴いてみることはしました。
ところが、そんな彼らが、フジテレビ系のサッカーワールドカップの応援ソングを歌っていて、軍歌っぽいとか、愛国ソングとか言われて批判されていることを朝日新聞で知りました。
そこで、さっそくユーチューブで「HINOMARU」を聞きました。正直言って、馴染みやすいところもありますが、曲そのものはそれほどいいとは思いませんでした。しかしこれは曲調は軍歌ではないが、曲想は軍歌と言えそうです。
歌詞を見て愕然としました。「気高きこの御国の御霊」「日出づる国の 御名の下に」「僕らの燃ゆる御霊は」「幾々千代に さぁ咲き誇れ」など、違和感が半端ではないのです。「君が代」を連想させる古語混じりのこの歌詞はけしていい文章とは思えません。「御国の御霊」って一体何なのでしょう。
歌詞を紹介しましょう。
「HINOMARU」 / RADWIMPS
風にたなびくあの旗に
古よりはためく旗に
意味もなく懐かしくなり
こみ上げるこの気持ちはなに
胸に手をあて見上げれば
高鳴る血潮 誇り高く
この身体に流れゆくは
気高きこの御国の御霊
さぁいざゆかん
日出づる国の 御名の下に
どれだけ強き風吹けど
遥か高き波がくれど
僕らの燃ゆる御霊は
挫けなどしない
胸に優しき母の声
背中に強き父の教え
受け継がれし歴史を手に
恐れるものがあるだろうか
ひと時とて忘れやしない
帰るべきあなたのことを
たとえこの身が滅ぶとて
幾々千代に さぁ咲き誇れ
さぁいざゆかん
守るべきものが 今はある
どれだけ強き風吹けど
遥か高き波がくれど
僕らのたぎる決意は
揺らぎなどしない
どれだけ強き風吹けど
遥か高き波がくれど
僕らの燃ゆる御霊は
挫けなどしない
僕らのたぎる決意は
揺らぎなどしない
ソングライター: Yojiro Noda
HINOMARU 歌詞 © Universal Music Publishing Group
アーティスト: RADWIMPS
リリース: 2018年
他局のサッカーワールドカップの応援ソングはどうなっているのかなと思っていたら、TBSラジオ、荻上チキの番組で2人のゲストを呼んでそれらを検証していました。とてもおもしろい企画でした。取り上げられた曲も紹介しておきましょう。
●2018.6.14 木曜日
【音声配信】「RADWIMPS、ゆず、椎名林檎・・・J-POPにも登場!?『愛国ソング』~その傾向と対策」辻田真佐憲×増田聡×荻上チキ▼2018年6月13日放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」22時~)
M1 「HINOMARU」 / RADWIMPS
M2 「にっぽんぽん」 / 味噌汁‘s
M3 「ガイコクジンノトモダチ」 / ゆず
M4 「愛國者賦」 / 鐵槌
M5 「凶気の桜」 / K DUB SHINE
M6 「オレたちの大和 / 般若
M7 「ライフタイムリスペクト」 / 三木道三
M8 「陽は、また昇る」 / アラジン
M9 「NIPPON」 / 椎名林檎
M10 「君が代」 / ピチカート・ファイブ
はてさて話は飛びますが、昨日は6月23日(土)、沖縄慰霊の日でした。テレビから流れてくる中学3年生の「生きる」という詩の朗読(実際は暗唱していました)が私の心に届いてきました。沖縄という土地に根ざした、等身大の女子中学生の叫びでした。私たちは、彼女にどう応えれば良いのでしょうか。
■沖縄慰霊の日
平和の詩「生きる」全文
沖縄県浦添市立港川中学校 3年 相良倫子
私は、生きている。
マントルの熱を伝える大地を踏みしめ、
心地よい湿気を孕んだ風を全身に受け、
草の匂いを鼻孔に感じ、
遠くから聞こえてくる潮騒に耳を傾けて。
私は今、生きている。
私の生きるこの島は、
何と美しい島だろう。
青く輝く海、
岩に打ち寄せしぶきを上げて光る波、
山羊の嘶き、
小川のせせらぎ、
畑に続く小道、
萌え出づる山の緑、
優しい三線の響き、
照りつける太陽の光。
私はなんと美しい島に、
生まれ育ったのだろう。
ありったけの私の感覚器で、感受性で、
島を感じる。心がじわりと熱くなる。
私はこの瞬間を、生きている。
この瞬間の素晴らしさが
この瞬間の愛おしさが
今と言う安らぎとなり
私の中に広がりゆく。
たまらなく込み上げるこの気持ちを
どう表現しよう。
大切な今よ
かけがえのない今よ
私の生きる、この今よ。
七十三年前、
私の愛する島が、死の島と化したあの日。
小鳥のさえずりは、恐怖の悲鳴と変わった。
優しく響く三線は、爆撃の轟に消えた。
青く広がる大空は、鉄の雨に見えなくなった。
草の匂いは死臭で濁り、
光り輝いていた海の水面は、
戦艦で埋め尽くされた。
火炎放射器から吹き出す炎、幼子の泣き声、
燃えつくされた民家、火薬の匂い。
着弾に揺れる大地。血に染まった海。
魑魅魍魎の如く、姿を変えた人々。
阿鼻叫喚の壮絶な戦の記憶。
みんな、生きていたのだ。
私と何も変わらない、
懸命に生きる命だったのだ。
彼らの人生を、それぞれの未来を。
疑うことなく、思い描いていたんだ。
家族がいて、仲間がいて、恋人がいた。
仕事があった。生きがいがあった。
日々の小さな幸せを喜んだ。手をとり合って生きてきた、私と同じ、人間だった。
それなのに。
壊されて、奪われた。
生きた時代が違う。ただ、それだけで。
無辜の命を。あたり前に生きていた、あの日々を。
摩文仁の丘。眼下に広がる穏やかな海。
悲しくて、忘れることのできない、この島の全て。
私は手を強く握り、誓う。
奪われた命に想いを馳せて、
心から、誓う。
私が生きている限り、
こんなにもたくさんの命を犠牲にした戦争を、絶対に許さないことを。
もう二度と過去を未来にしないこと。
全ての人間が、国境を越え、人種を越え、宗教を越え、あらゆる利害を越えて、平和である世
界を目指すこと。
生きる事、命を大切にできることを、
誰からも侵されない世界を創ること。
平和を創造する努力を、厭わないことを。
あなたも、感じるだろう。
この島の美しさを。
あなたも、知っているだろう。
この島の悲しみを。
そして、あなたも、
私と同じこの瞬間(とき)を
一緒に生きているのだ。
今を一緒に、生きているのだ。
だから、きっとわかるはずなんだ。
戦争の無意味さを。本当の平和を。
頭じゃなくて、その心で。
戦力という愚かな力を持つことで、
得られる平和など、本当は無いことを。
平和とは、あたり前に生きること。
その命を精一杯輝かせて生きることだということを。
私は、今を生きている。
みんなと一緒に。
そして、これからも生きていく。
一日一日を大切に。
平和を想って。平和を祈って。
なぜなら、未来は、
この瞬間の延長線上にあるからだ。
つまり、未来は、今なんだ。
大好きな、私の島。
誇り高き、みんなの島。
そして、この島に生きる、すべての命。
私と共に今を生きる、私の友。私の家族。
これからも、共に生きてゆこう。
この青に囲まれた美しい故郷から。
真の平和を発進しよう。
一人一人が立ち上がって、
みんなで未来を歩んでいこう。
摩文仁の丘の風に吹かれ、
私の命が鳴っている。
過去と現在、未来の共鳴。
鎮魂歌よ届け。悲しみの過去に。
命よ響け。生きゆく未来に。
私は今を、生きていく。
(毎日新聞2018年6月23日)
〔追記〕
「リテラ」というサイトを愛読しています。下記のような記事が目白押しです。
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