かつて、イギリスの大英博物館やロンドンのナショナルギャラリー、アメリカのワシントンのナショナルギャラリー、スミソニアン博物館群などの入館無料の美術館・博物館を訪れたことがあります。また、ルーブル美術館では「10月から3月まで:毎月第1日曜日は常設展を無料で開放しています。4月から9月まで:毎月第1日曜日は無料日とはなりません。」となっています。こちらも無料日に鑑賞したことがありました。
ところで日本では残念ながらこうした無料展覧会が少ないのですが、東京都美術館・江戸東京博物館などは第3水曜日だけはシニア・デイで65歳以上が無料となっています。当然混雑が予想されるのですが、滅多にないチャンスなので、この日は早起きします。ほぼ月1回は美術鑑賞の日と決めています。そして、せっかく上野まで行くのなら、もう1つぐらい美術館・博物館を巡ろうと欲が出ます。先日も「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」から「運慶展」まで美術館の梯子をしました。
2017年11月15日(水)、東京都美術館の開館(9:30)の30分前に連れ合いと列に並ぶことにしました。ところが、さすがに人気の「ゴッホ展」、ざっと数えてすでに600人が列を作っていました。江戸東京博物館の「ダ・ビンチ展」では、同じ時間に100人程度、東京都美術館での「ブリューゲル展」には200人といったところでしょうか。「ゴッホ展」の人気のほどをうかがい知ることができます。
9時20分頃には列が動き出すので、館の対応はなかなか良心的だなといつも思っています。館内に入れたのは10時過ぎ頃からだったでしょうか。後続の人たちも多く、かなりの人混みで、日本人のゴッホ好きを再認識しました。
「ゴッホ展」の概要は次の通りです。
オランダのゴッホ美術館、クレラー・ミュラー美術館、そしてパリのギメ東洋美術館からの作品が数多く来ていました。いずれもすでに訪問したことのある美術館ですので、懐かしい作品が多かったです。
今回最も興味深かったのは、「日本人のファン・ゴッホ巡礼」です。日本に憧れたゴッホに魅せられた日本人の特集です。芸術・文化の発展・交流というのは本当に興味深いし、不可思議だなと思います。
□ゴッホ展 巡りゆく日本の夢(Van Gogh & Japan)(東京都美術館HPより)
2017年10月24日(火)~2018年1月8日(月・祝)
フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)は、パリ時代からアルル時代前半にかけて、浮世絵や日本に関する文献を集めるなど、日本に高い関心を寄せていました。一方で、ファン・ゴッホの死後、日本の芸術家や知識人が、この画家に憧れ、墓のあるオーヴェール=シュル=オワーズを巡礼していたことが明らかになりました。本展では、ファン・ゴッホの油彩画やデッサン約40点、同時代の画家の作品や浮世絵など約50点に加え、関連資料を通して、ファン・ゴッホと日本の相互関係を探り、その新たな魅力を紹介します。
○みどころ
1. 日本初!ファン・ゴッホ美術館との本格的国際共同プロジェクト
本展覧会は、日本における「ゴッホ展」の中でも初となるオランダのファン・ゴッホ美術館との国際共同プロジェクトで、日本展終了後、ファン・ゴッホ美術館でも開催されます。
2. 日本美術がファン・ゴッホに与えた影響をさまざまな角度から検証
ファン・ゴッホは、日本から如何なる影響を受け、如何なるイメージを抱いていたのか。国内外のコレクションから厳選したファン・ゴッホ作品約40点と、同時代の画家の作品や浮世絵など50点あまりによって、その実像を多角的に検証します。
3. 日本初公開!ガシェ家に残された3冊の「芳名録」
最初期における日本人のファン・ゴッホ巡礼を、ガシェ家の芳名録に基づいた約80点の豊富な資料によってたどります。日本を夢想したファン・ゴッホ。ファン・ゴッホに憧憬した日本人。交差する夢の軌跡をご覧ください。
十分「ゴッホ展」を堪能して、東京都美術館から徒歩数分の東京国立博物館へ向かいました。チケットは購入済みなのですが、門をくぐる入場までにすでに列ができていました。こうしたことはあまり経験しないことでした。こちらも大人気の「運慶展」でした。
会場の平成館の前は50分待ちの大行列でした。「阿修羅展」でも入場待ちの人は数十メートルといったところでしたのに。
「運慶展」の終盤に行ったのには訳があります。静岡・瑞林寺の釈迦如来座像が後半に展示されるからでした。10年ほど前にお寺に電話したとき、拝観がかなわなかったのです。これは運慶の父、康慶の作品ですが、実に均整のとれた美しいお像でした。
展覧会の内容は次の通りです。
□興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」(東京国立博物館HPより)
平成館 特別展示室 2017年9月26日(火) ~ 2017年11月26日(日)
日本で最も著名な仏師・運慶。卓越した造形力で生きているかのような現実感に富んだ仏像を生み出し、輝かしい彫刻の時代をリードしました。本展は、運慶とゆかりの深い興福寺をはじめ各地から名品を集めて、その生涯の事績を通覧します。さらに運慶の父・康慶、実子・湛慶、康弁ら親子3代の作品を揃え、運慶の作風の樹立から次代の継承までをたどります。
第1章 運慶を生んだ系譜ー康慶から運慶へ
第2章 運慶の彫刻ーその独創性
第3章 運慶風の展開ー運慶の息子と周辺の仏師
ついにやりました。
今回の展示鑑賞で、運慶作品をすべて見たことになります。「完全踏破」でした。
運慶作品は現在のところ31体というのが通説だそうです。この展覧会ではなんと22体が集まったということです。私が運慶作品で見ていないのが3体でしたが、今回すべて展示されていたのです。〔大威徳明王座像(神奈川・光明院蔵 )、大日如来座像(東京・真如苑)、重源上人座像(東大寺)〕
十数年前に、運慶ゆかりの寺をすべて訪問しました。興福寺や東大寺、金剛峯寺はもちろんのこと、浄楽寺、願成就院、瀧山寺、円成寺などにも足を運んでいます。今回出品かなわなかった運慶仏もこの時に拝観しているのです。
すべての運慶仏を拝観し終わったところで、今、言えることは、間違いなく運慶は世界最高の彫刻家の一人だということです。仏の形を借りて「人間」を彫り込むことに成功しています。他に類を見ない、躍動感あふれる造形は東大寺の仁王や願成就院の毘沙門天、制吒迦童子立像が圧倒的です。さらに、精神性の高さでは重源上人座像と無著菩薩立像にその到達点を見ます。
●蔵書を増やしたくない私も、さすがに図録『運慶』(税込み3000円)を買いました。写真が贅沢で素晴らしいし、「運慶の独創性とその源」(浅見龍介)が運慶研究の現在を示していて運慶ファンには大いに参考になります。「主な参考文献」も充実していますね。
運慶・リーメンシュナイダーの完全踏破をほぼ成し遂げ、あとはいつかダ・ヴィンチ、フェルメールのわずかの未踏作品を訪ねるのを楽しみにしている今日この頃です。
ところで日本では残念ながらこうした無料展覧会が少ないのですが、東京都美術館・江戸東京博物館などは第3水曜日だけはシニア・デイで65歳以上が無料となっています。当然混雑が予想されるのですが、滅多にないチャンスなので、この日は早起きします。ほぼ月1回は美術鑑賞の日と決めています。そして、せっかく上野まで行くのなら、もう1つぐらい美術館・博物館を巡ろうと欲が出ます。先日も「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」から「運慶展」まで美術館の梯子をしました。
2017年11月15日(水)、東京都美術館の開館(9:30)の30分前に連れ合いと列に並ぶことにしました。ところが、さすがに人気の「ゴッホ展」、ざっと数えてすでに600人が列を作っていました。江戸東京博物館の「ダ・ビンチ展」では、同じ時間に100人程度、東京都美術館での「ブリューゲル展」には200人といったところでしょうか。「ゴッホ展」の人気のほどをうかがい知ることができます。
9時20分頃には列が動き出すので、館の対応はなかなか良心的だなといつも思っています。館内に入れたのは10時過ぎ頃からだったでしょうか。後続の人たちも多く、かなりの人混みで、日本人のゴッホ好きを再認識しました。
「ゴッホ展」の概要は次の通りです。
オランダのゴッホ美術館、クレラー・ミュラー美術館、そしてパリのギメ東洋美術館からの作品が数多く来ていました。いずれもすでに訪問したことのある美術館ですので、懐かしい作品が多かったです。
今回最も興味深かったのは、「日本人のファン・ゴッホ巡礼」です。日本に憧れたゴッホに魅せられた日本人の特集です。芸術・文化の発展・交流というのは本当に興味深いし、不可思議だなと思います。
□ゴッホ展 巡りゆく日本の夢(Van Gogh & Japan)(東京都美術館HPより)
2017年10月24日(火)~2018年1月8日(月・祝)
フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)は、パリ時代からアルル時代前半にかけて、浮世絵や日本に関する文献を集めるなど、日本に高い関心を寄せていました。一方で、ファン・ゴッホの死後、日本の芸術家や知識人が、この画家に憧れ、墓のあるオーヴェール=シュル=オワーズを巡礼していたことが明らかになりました。本展では、ファン・ゴッホの油彩画やデッサン約40点、同時代の画家の作品や浮世絵など約50点に加え、関連資料を通して、ファン・ゴッホと日本の相互関係を探り、その新たな魅力を紹介します。
○みどころ
1. 日本初!ファン・ゴッホ美術館との本格的国際共同プロジェクト
本展覧会は、日本における「ゴッホ展」の中でも初となるオランダのファン・ゴッホ美術館との国際共同プロジェクトで、日本展終了後、ファン・ゴッホ美術館でも開催されます。
2. 日本美術がファン・ゴッホに与えた影響をさまざまな角度から検証
ファン・ゴッホは、日本から如何なる影響を受け、如何なるイメージを抱いていたのか。国内外のコレクションから厳選したファン・ゴッホ作品約40点と、同時代の画家の作品や浮世絵など50点あまりによって、その実像を多角的に検証します。
3. 日本初公開!ガシェ家に残された3冊の「芳名録」
最初期における日本人のファン・ゴッホ巡礼を、ガシェ家の芳名録に基づいた約80点の豊富な資料によってたどります。日本を夢想したファン・ゴッホ。ファン・ゴッホに憧憬した日本人。交差する夢の軌跡をご覧ください。
十分「ゴッホ展」を堪能して、東京都美術館から徒歩数分の東京国立博物館へ向かいました。チケットは購入済みなのですが、門をくぐる入場までにすでに列ができていました。こうしたことはあまり経験しないことでした。こちらも大人気の「運慶展」でした。
会場の平成館の前は50分待ちの大行列でした。「阿修羅展」でも入場待ちの人は数十メートルといったところでしたのに。
「運慶展」の終盤に行ったのには訳があります。静岡・瑞林寺の釈迦如来座像が後半に展示されるからでした。10年ほど前にお寺に電話したとき、拝観がかなわなかったのです。これは運慶の父、康慶の作品ですが、実に均整のとれた美しいお像でした。
展覧会の内容は次の通りです。
□興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」(東京国立博物館HPより)
平成館 特別展示室 2017年9月26日(火) ~ 2017年11月26日(日)
日本で最も著名な仏師・運慶。卓越した造形力で生きているかのような現実感に富んだ仏像を生み出し、輝かしい彫刻の時代をリードしました。本展は、運慶とゆかりの深い興福寺をはじめ各地から名品を集めて、その生涯の事績を通覧します。さらに運慶の父・康慶、実子・湛慶、康弁ら親子3代の作品を揃え、運慶の作風の樹立から次代の継承までをたどります。
第1章 運慶を生んだ系譜ー康慶から運慶へ
第2章 運慶の彫刻ーその独創性
第3章 運慶風の展開ー運慶の息子と周辺の仏師
ついにやりました。
今回の展示鑑賞で、運慶作品をすべて見たことになります。「完全踏破」でした。
運慶作品は現在のところ31体というのが通説だそうです。この展覧会ではなんと22体が集まったということです。私が運慶作品で見ていないのが3体でしたが、今回すべて展示されていたのです。〔大威徳明王座像(神奈川・光明院蔵 )、大日如来座像(東京・真如苑)、重源上人座像(東大寺)〕
十数年前に、運慶ゆかりの寺をすべて訪問しました。興福寺や東大寺、金剛峯寺はもちろんのこと、浄楽寺、願成就院、瀧山寺、円成寺などにも足を運んでいます。今回出品かなわなかった運慶仏もこの時に拝観しているのです。
すべての運慶仏を拝観し終わったところで、今、言えることは、間違いなく運慶は世界最高の彫刻家の一人だということです。仏の形を借りて「人間」を彫り込むことに成功しています。他に類を見ない、躍動感あふれる造形は東大寺の仁王や願成就院の毘沙門天、制吒迦童子立像が圧倒的です。さらに、精神性の高さでは重源上人座像と無著菩薩立像にその到達点を見ます。
●蔵書を増やしたくない私も、さすがに図録『運慶』(税込み3000円)を買いました。写真が贅沢で素晴らしいし、「運慶の独創性とその源」(浅見龍介)が運慶研究の現在を示していて運慶ファンには大いに参考になります。「主な参考文献」も充実していますね。
運慶・リーメンシュナイダーの完全踏破をほぼ成し遂げ、あとはいつかダ・ヴィンチ、フェルメールのわずかの未踏作品を訪ねるのを楽しみにしている今日この頃です。