新聞広告で『芸術新潮』」の特集「グリューネヴァルト」を知りました。最近の私は新刊書を買うことには禁欲的だということは前に触れました。でもこの雑誌だけはどうしても買いたかったのです。それは私がここ数年、グリューネヴァルト(ドイツ語で緑の森の意)の追っかけをしているからです。正確に言えば、作品の完全「踏破」が終了したため、追っかけは一段落したというところです。
追っかけのきっかけは妻の影響です。妻はドイツ、中世最後(イタリアではルネッサンス時代)の彫刻家といわれるティルマン・リーメンシュナイダーの追っかけをしていて、日本で初めての彼の写真集『祈りの彫刻リーメンシュナイダーを歩く』(丸善プラネット)を2冊出しました。ドイツ国内、ヨーロッパ各地、アメリカ、カナダまで訪ねた作品は400点あまり。全作品の9割方は見たと言っていいでしょう。
彼女のリーメンシュナイダー作品巡礼の旅に荷物運び、ボディガードとして付き添ったのが私です。リーメンシュナイダーの作品を巡礼するうちに、同時代の画家や彫刻家に対する興味がむくむくと湧き上がってきました。そのうちのひとりがグリューネヴァルトでした。リーメンシュナイダー・グリューネヴァルト巡礼がふたりの旅の目的になっていきました。
説明していると膨大な文章になりそうなのでこれくらいにして、グリューネヴァルトの話をします。
■グリューネヴァルト(Matthias Grünewald,1477~1528)=本名マティス・ゴートハルト・ナイトハルト(又はニトハルト),ヴュルツブルク出身
グリューネヴァルトに関する本はリーメンシュナイダーよりははるかに多く出版されています。ただ、芸術雑誌に特集として取りあげられることはほとんどありません。私の知る限りでは以下の特集だけです。『芸術新潮』では30年ぶりくらいの特集ということになるのです。
*『みずゑ』特集「グリューネヴァルト」1975.12月号
*『芸術新潮』特集「グリューネヴァルトの全貌」1983.2月号
写真集といえる物もほとんどなく、下記のものが唯一私が重宝しているものです。
*『グリューネヴァルト・北方ルネッサンス』(グリューネヴァルト画、朝日新聞社、1996)
さて、今回の『芸術新潮』の特集は「史上最強の宗教画はこれだ! 謎の巨匠 グリューネヴァルト」です。「最強」とはなんでしょうか、ちょっと引っかかるものもありますが、まあ、写真を見てください、と言うところでしょうか。リアルで凄惨なキリストの磔刑図が有名ですが、描写力は群を抜いていて、ある面ユーモアも兼ね備えていて、一度見たら忘れられないという感じといえばいいのでしょうか。
グリューネヴァルト特集は「《イーゼンハイム祭壇画》を読み解く」、「謎の生涯と黄金時代の仲間たち」から構成されていて、解説を小池寿子氏(國學院大学)が務めています。
グリューネヴァルトの絵画は十数点、素描が40点ほどのようです。
さて、ここで自慢話です。グリューネヴァルトの現存する絵画は全踏破しました。日本で1番の「グリューネヴァルト追っかけ人」と自認しています。なにせ、失われたグリューネヴァルトの絵の模写(『芸術新潮』31頁)もシュベービッシュハルで見ているし、普段見られないキリスト磔刑図(素描、同頁掲載)も見ることができました。
ところで、私が調べたところ<絵画(タブロー)>⑪箇所は以下の通りです。
*「最後の晩餐」フェステ・コーブルク美術館①(ゲオルク・シェーファー・コレクション)1500~2制作 〔2011,9鑑賞〕
*「聖女アグネス」「聖女ドロテア」(最後の晩餐の裏面)フェステ・コーブルク美術館(ゲオルク・シェーファー・コレクション)1500~2 〔2011,9鑑〕
*「リンデンハルトの祭壇画」左右「救護聖人」・中央厨子背面、「苦しみの人としてのキリスト」バイロイト近郊リンデンハルト、教区聖堂②、1503〔2011,9鑑〕
*「キリスト磔刑図」バーゼル国立美術館③、1505~10 〔2011,9鑑〕
*「キリスト磔刑図」(小磔刑)ワシントンナショナルギャラリー④、1511 〔2011,2鑑〕
*「イーゼンハイム祭壇画」ウンターリンデン美術館(コルマール)⑤1512~16〔2011,9鑑〕
*「聖エラスムスと聖マウリティウス」1525以前「キリスト嘲弄」アルテ・ピナコ テーク⑥(ミュンヒェン)1504~5 〔2012,3鑑〕
*「雪の奇蹟」(「マリア・シュニー祭壇」翼画)フライブルク・イム・ブライスガウ、アウグスティナー美術館⑦ 1517~19 〔2011,9鑑〕
*「聖ラウレンティウス」「聖キリアクス」(「ヘラー祭壇画」「四聖人」)シュテーデル美術研究所⑧(フランクフルト)1509~10 〔2012,3鑑〕
*「聖エリザベート」「聖ルチア」(「ヘラー祭壇画」「四聖人」)カールスルーエ、州立美術館⑨1509~10 〔2011,9鑑〕
*「キリスト磔刑図」「キリストの十字架荷い」(「タウバービショフスハイム祭壇画」) カールスルーエ、州立美術館、1523~25 〔2011,9鑑〕
*「聖母子」(「マリア・シュニー祭壇」中央画?)バート・メルゲントハイム近郊シュトゥパッハ、教区聖堂⑩、1517~20 〔2013,2鑑〕
*「キリストの哀悼」アシャッフェンブルク⑪、参事会聖堂、1923~25 〔2011,9鑑〕
⑩のシュトゥパッハの「聖母子」は、1回目の訪問では他の美術館に貸し出し中、2回目は修復中、3回目でようやく拝観できました。ドイツ人の友人の協力でした。
⑨の「キリストの十字架荷い」は修復中のため、妻がドイツ語で連絡を取って掛け合ってくれてようやく見ることができました。現在もカールスルーエ州立美術館の修復室にあるはずです。
「イーゼンハイム祭壇画」のあるウンターリンデン美術館は現在改装中とのこと、近いうちにもう1度「再会」を果たしたいと思っています。
追っかけのきっかけは妻の影響です。妻はドイツ、中世最後(イタリアではルネッサンス時代)の彫刻家といわれるティルマン・リーメンシュナイダーの追っかけをしていて、日本で初めての彼の写真集『祈りの彫刻リーメンシュナイダーを歩く』(丸善プラネット)を2冊出しました。ドイツ国内、ヨーロッパ各地、アメリカ、カナダまで訪ねた作品は400点あまり。全作品の9割方は見たと言っていいでしょう。
彼女のリーメンシュナイダー作品巡礼の旅に荷物運び、ボディガードとして付き添ったのが私です。リーメンシュナイダーの作品を巡礼するうちに、同時代の画家や彫刻家に対する興味がむくむくと湧き上がってきました。そのうちのひとりがグリューネヴァルトでした。リーメンシュナイダー・グリューネヴァルト巡礼がふたりの旅の目的になっていきました。
説明していると膨大な文章になりそうなのでこれくらいにして、グリューネヴァルトの話をします。
■グリューネヴァルト(Matthias Grünewald,1477~1528)=本名マティス・ゴートハルト・ナイトハルト(又はニトハルト),ヴュルツブルク出身
グリューネヴァルトに関する本はリーメンシュナイダーよりははるかに多く出版されています。ただ、芸術雑誌に特集として取りあげられることはほとんどありません。私の知る限りでは以下の特集だけです。『芸術新潮』では30年ぶりくらいの特集ということになるのです。
*『みずゑ』特集「グリューネヴァルト」1975.12月号
*『芸術新潮』特集「グリューネヴァルトの全貌」1983.2月号
写真集といえる物もほとんどなく、下記のものが唯一私が重宝しているものです。
*『グリューネヴァルト・北方ルネッサンス』(グリューネヴァルト画、朝日新聞社、1996)
さて、今回の『芸術新潮』の特集は「史上最強の宗教画はこれだ! 謎の巨匠 グリューネヴァルト」です。「最強」とはなんでしょうか、ちょっと引っかかるものもありますが、まあ、写真を見てください、と言うところでしょうか。リアルで凄惨なキリストの磔刑図が有名ですが、描写力は群を抜いていて、ある面ユーモアも兼ね備えていて、一度見たら忘れられないという感じといえばいいのでしょうか。
グリューネヴァルト特集は「《イーゼンハイム祭壇画》を読み解く」、「謎の生涯と黄金時代の仲間たち」から構成されていて、解説を小池寿子氏(國學院大学)が務めています。
グリューネヴァルトの絵画は十数点、素描が40点ほどのようです。
さて、ここで自慢話です。グリューネヴァルトの現存する絵画は全踏破しました。日本で1番の「グリューネヴァルト追っかけ人」と自認しています。なにせ、失われたグリューネヴァルトの絵の模写(『芸術新潮』31頁)もシュベービッシュハルで見ているし、普段見られないキリスト磔刑図(素描、同頁掲載)も見ることができました。
ところで、私が調べたところ<絵画(タブロー)>⑪箇所は以下の通りです。
*「最後の晩餐」フェステ・コーブルク美術館①(ゲオルク・シェーファー・コレクション)1500~2制作 〔2011,9鑑賞〕
*「聖女アグネス」「聖女ドロテア」(最後の晩餐の裏面)フェステ・コーブルク美術館(ゲオルク・シェーファー・コレクション)1500~2 〔2011,9鑑〕
*「リンデンハルトの祭壇画」左右「救護聖人」・中央厨子背面、「苦しみの人としてのキリスト」バイロイト近郊リンデンハルト、教区聖堂②、1503〔2011,9鑑〕
*「キリスト磔刑図」バーゼル国立美術館③、1505~10 〔2011,9鑑〕
*「キリスト磔刑図」(小磔刑)ワシントンナショナルギャラリー④、1511 〔2011,2鑑〕
*「イーゼンハイム祭壇画」ウンターリンデン美術館(コルマール)⑤1512~16〔2011,9鑑〕
*「聖エラスムスと聖マウリティウス」1525以前「キリスト嘲弄」アルテ・ピナコ テーク⑥(ミュンヒェン)1504~5 〔2012,3鑑〕
*「雪の奇蹟」(「マリア・シュニー祭壇」翼画)フライブルク・イム・ブライスガウ、アウグスティナー美術館⑦ 1517~19 〔2011,9鑑〕
*「聖ラウレンティウス」「聖キリアクス」(「ヘラー祭壇画」「四聖人」)シュテーデル美術研究所⑧(フランクフルト)1509~10 〔2012,3鑑〕
*「聖エリザベート」「聖ルチア」(「ヘラー祭壇画」「四聖人」)カールスルーエ、州立美術館⑨1509~10 〔2011,9鑑〕
*「キリスト磔刑図」「キリストの十字架荷い」(「タウバービショフスハイム祭壇画」) カールスルーエ、州立美術館、1523~25 〔2011,9鑑〕
*「聖母子」(「マリア・シュニー祭壇」中央画?)バート・メルゲントハイム近郊シュトゥパッハ、教区聖堂⑩、1517~20 〔2013,2鑑〕
*「キリストの哀悼」アシャッフェンブルク⑪、参事会聖堂、1923~25 〔2011,9鑑〕
⑩のシュトゥパッハの「聖母子」は、1回目の訪問では他の美術館に貸し出し中、2回目は修復中、3回目でようやく拝観できました。ドイツ人の友人の協力でした。
⑨の「キリストの十字架荷い」は修復中のため、妻がドイツ語で連絡を取って掛け合ってくれてようやく見ることができました。現在もカールスルーエ州立美術館の修復室にあるはずです。
「イーゼンハイム祭壇画」のあるウンターリンデン美術館は現在改装中とのこと、近いうちにもう1度「再会」を果たしたいと思っています。