先日のこと、1冊の本が届きました。大学のときの親友で、同じバドミントン部に所属し、ダブルスも組んでいた山﨑隆夫くんからでした。いつもは山﨑と呼び捨てにしている仲です。もう1人の仲間とそれぞれの結婚式の司会を務めました。
私が55歳で自主退職したときに、彼の教室を半日訪ねたことがあります。学校公開の日だったようですが、保護者以外にも大学生など多くの参観者が来ていました。子どもたちとの当意即妙の穏やかなやりとりが印象に残っています。大学時代の山﨑とちっとも変わらない彼がそこにいました。子どもが好きでたまらなく、彼らを尊重し、慈しむ優しさに溢れていました。頼まれて写真を撮っていたのですが、カメラ越しにも十分居心地の良い教室空間が広がっているのを感じることができたのです。
彼は定年まで東京都の小学校教師を続け、その後すぐに都留文科大学の非常勤講師になり現在に至っています。
本に添えられた「献本のごあいさつ」の1部です。
〔学校は今、子どもと教師がその生を輝かせて生きる上で、たいへん息苦しく厳しいものになっています。学力テスト体制や学校スタンダード、「規則・決まりの徹底」など、形式化・形骸化を強めているように思います。
また現在、アクティブラーニングやユニバーサルデザインといった新しい視点にたつ教育や授業展開が求められてもいます。子どもへの配慮は当然ですし「主体的・対話的で深い学び」も重要なことです。しかし、現場の多くの教師だちから聞こえる声は、首を傾げるような実践や授業の形の押しつけが多く胸を痛めています。新しい学びこそ、より子どもや教師を自由で創造的にすべきだと考えます。多様な学びを展開すべきです。
こうした思いから、子どもたちが瞳を輝かせ、今を生きることに夢中になり、「先生、授業楽しかったね」「授業、やめないで!」とつぶやくような、そんな授業の具体的な様子を紹介してみたいと考え、本書を執筆しました。
「ああ、こんなことなら、私もできる」「私ならもっと楽しい学びを創り出すことができる!」-そんな思いを持っていただけたらうれしいです。多くの若い教師たち、教職を目指す学生たち、そして、今日の事態に心を痛める現場の先生たちに、ぜひ本書を手に取り読んでいただきたいと思います。
もっと自由で、もっと豊かに、個性的な発想を生かしながら授業実践に取り組んでよいのだと勇気を持ってもらいたいと思います。その方がずっと子どもたちは生き生きと学ぶでしょう。教師として生きることの喜びも生まれてくると思います。〕
本の執筆動機についてはこの文面で明らかです。内容については、HPから引用してみましょう。
■『教室は楽しい授業で いっぱいだ!』山﨑隆夫、高文研、2017/03/26、240ページ、1,700円+税
〔オビ〕私のクラスの子どもたちと、私のクラスにしか生まれない授業を生みだしていこう!
チャイムが鳴っても「先生、授業続けて!」と子どもたちがせがむ授業にするには? 教師も楽しい授業づくり入門!!
「スタンダード」の名のもと、教師の授業は型にはまり、自由な発想や教材研究がしずらくなってきています。つまり、子どもに合った授業を作るのではなく、決まった型に合った子どもを作る教育が推し進められようとしています。
本書は、子どもたちの目が毎回輝き、どうしたら喜ぶ授業が出来るか、自らの実践経験を語りながらそのポイントを示します!
子どもも受けて楽しい、教師も教えて楽しい授業実践入門です。
本当の〝アクティブ・ラーニング〟がここにあります。
【目次】
・はじめに
第Ⅰ部 楽しい教室、楽しい授業づくりの基本
第一章 こんな学級がいいね
(1)大好きな教室 (2)一枚の絵 (3)学級づくりで大切にしていること
第二章 楽しい授業づくりのために
(1)あふれだす子どもの思いをうけとめて
(2)授業、最初に考えるべきこと、3つの視点
(3)授業づくり―4つの基本
(4)授業と座席、子どもの発言の受け止め方
第Ⅱ部 心はずむ学びの世界
第三章 子ども世界をあそぶ (1)~(4) 具体的授業実践事例
第四章 学びの旅のはじまりは、たんぽぽ、蝶が舞う(1)~(3) 授業実践事例
第五章 基礎・基本―やさしく、ふかく、おもしろく(1)~(6) 授業実践事例
第六章 わくわく、どきどき、話し合うって楽しいな(1)~(3) 授業実践事例
第七章 秘密を探る物語~みんな学びの探偵団 (1)~(4) 授業実践事例
第八章 豊かに広がる学びの世界 (1)~(3)
エピローグ
・おわりに
本書は、38年にわたる小学校教師生活の中で、印象的だった日常の授業をその時々に書きためたものを集約し、再構成したもののようでした。
一読して感じたのは、とても読みやすい本だということです。教師のフィルターを通して描いていて、子どもたちの息づかいがリアルに聞こえてきます。おそらく山﨑の頭の中で、固有名詞を持った子どもたちが躍動していて、それを主体的意図的に書き留めたのでしょう。
この本に温かさを感じるのは、ところどころに山﨑自身の挿し絵が入っているからです。学生時代から絵が得意で、毎年の年賀状は必ず彼の描いた絵が登場します。授業参観のときにも、黒板にさらさらと描く絵が子どもたちを授業の核心に引き込んでいったのでした。そういえば、雑誌「教育」の挿絵に彼の絵が頻繁に登場します。
さらに感心したのは、「子ども世界をあそぶ」という標記に代表されますが、遊ぶ感覚をたいせつにしている点です。学びの根底にある<遊ぶこと>に着目しているに違いありません。
「声を聴く」という表現にも注目したいところです。まさに教育は「ことばと心の受け渡し」なしに成立しえないものなのですから。
この本は紛れもなく、多くの教師や学生、親に読んでもらいたい、優れた実践記録とも言えるものなのです。
私が55歳で自主退職したときに、彼の教室を半日訪ねたことがあります。学校公開の日だったようですが、保護者以外にも大学生など多くの参観者が来ていました。子どもたちとの当意即妙の穏やかなやりとりが印象に残っています。大学時代の山﨑とちっとも変わらない彼がそこにいました。子どもが好きでたまらなく、彼らを尊重し、慈しむ優しさに溢れていました。頼まれて写真を撮っていたのですが、カメラ越しにも十分居心地の良い教室空間が広がっているのを感じることができたのです。
彼は定年まで東京都の小学校教師を続け、その後すぐに都留文科大学の非常勤講師になり現在に至っています。
本に添えられた「献本のごあいさつ」の1部です。
〔学校は今、子どもと教師がその生を輝かせて生きる上で、たいへん息苦しく厳しいものになっています。学力テスト体制や学校スタンダード、「規則・決まりの徹底」など、形式化・形骸化を強めているように思います。
また現在、アクティブラーニングやユニバーサルデザインといった新しい視点にたつ教育や授業展開が求められてもいます。子どもへの配慮は当然ですし「主体的・対話的で深い学び」も重要なことです。しかし、現場の多くの教師だちから聞こえる声は、首を傾げるような実践や授業の形の押しつけが多く胸を痛めています。新しい学びこそ、より子どもや教師を自由で創造的にすべきだと考えます。多様な学びを展開すべきです。
こうした思いから、子どもたちが瞳を輝かせ、今を生きることに夢中になり、「先生、授業楽しかったね」「授業、やめないで!」とつぶやくような、そんな授業の具体的な様子を紹介してみたいと考え、本書を執筆しました。
「ああ、こんなことなら、私もできる」「私ならもっと楽しい学びを創り出すことができる!」-そんな思いを持っていただけたらうれしいです。多くの若い教師たち、教職を目指す学生たち、そして、今日の事態に心を痛める現場の先生たちに、ぜひ本書を手に取り読んでいただきたいと思います。
もっと自由で、もっと豊かに、個性的な発想を生かしながら授業実践に取り組んでよいのだと勇気を持ってもらいたいと思います。その方がずっと子どもたちは生き生きと学ぶでしょう。教師として生きることの喜びも生まれてくると思います。〕
本の執筆動機についてはこの文面で明らかです。内容については、HPから引用してみましょう。
■『教室は楽しい授業で いっぱいだ!』山﨑隆夫、高文研、2017/03/26、240ページ、1,700円+税
〔オビ〕私のクラスの子どもたちと、私のクラスにしか生まれない授業を生みだしていこう!
チャイムが鳴っても「先生、授業続けて!」と子どもたちがせがむ授業にするには? 教師も楽しい授業づくり入門!!
「スタンダード」の名のもと、教師の授業は型にはまり、自由な発想や教材研究がしずらくなってきています。つまり、子どもに合った授業を作るのではなく、決まった型に合った子どもを作る教育が推し進められようとしています。
本書は、子どもたちの目が毎回輝き、どうしたら喜ぶ授業が出来るか、自らの実践経験を語りながらそのポイントを示します!
子どもも受けて楽しい、教師も教えて楽しい授業実践入門です。
本当の〝アクティブ・ラーニング〟がここにあります。
【目次】
・はじめに
第Ⅰ部 楽しい教室、楽しい授業づくりの基本
第一章 こんな学級がいいね
(1)大好きな教室 (2)一枚の絵 (3)学級づくりで大切にしていること
第二章 楽しい授業づくりのために
(1)あふれだす子どもの思いをうけとめて
(2)授業、最初に考えるべきこと、3つの視点
(3)授業づくり―4つの基本
(4)授業と座席、子どもの発言の受け止め方
第Ⅱ部 心はずむ学びの世界
第三章 子ども世界をあそぶ (1)~(4) 具体的授業実践事例
第四章 学びの旅のはじまりは、たんぽぽ、蝶が舞う(1)~(3) 授業実践事例
第五章 基礎・基本―やさしく、ふかく、おもしろく(1)~(6) 授業実践事例
第六章 わくわく、どきどき、話し合うって楽しいな(1)~(3) 授業実践事例
第七章 秘密を探る物語~みんな学びの探偵団 (1)~(4) 授業実践事例
第八章 豊かに広がる学びの世界 (1)~(3)
エピローグ
・おわりに
本書は、38年にわたる小学校教師生活の中で、印象的だった日常の授業をその時々に書きためたものを集約し、再構成したもののようでした。
一読して感じたのは、とても読みやすい本だということです。教師のフィルターを通して描いていて、子どもたちの息づかいがリアルに聞こえてきます。おそらく山﨑の頭の中で、固有名詞を持った子どもたちが躍動していて、それを主体的意図的に書き留めたのでしょう。
この本に温かさを感じるのは、ところどころに山﨑自身の挿し絵が入っているからです。学生時代から絵が得意で、毎年の年賀状は必ず彼の描いた絵が登場します。授業参観のときにも、黒板にさらさらと描く絵が子どもたちを授業の核心に引き込んでいったのでした。そういえば、雑誌「教育」の挿絵に彼の絵が頻繁に登場します。
さらに感心したのは、「子ども世界をあそぶ」という標記に代表されますが、遊ぶ感覚をたいせつにしている点です。学びの根底にある<遊ぶこと>に着目しているに違いありません。
「声を聴く」という表現にも注目したいところです。まさに教育は「ことばと心の受け渡し」なしに成立しえないものなのですから。
この本は紛れもなく、多くの教師や学生、親に読んでもらいたい、優れた実践記録とも言えるものなのです。