カンヌ国際映画祭にある視点部門で出品した映画「海よりもまだ深く」が5月21日から公開されました。東京都清瀬市が舞台ということで私も興味を持っていましたが、ようやく昨日鑑賞することができました。映画館に足を運んでも、けして損はしないという映画でした。
まずは映画の内容について紹介しておきましょう。
●ウイキィペディアより
〔物語〕
良多は作家として文学賞を受賞した経歴を持つが、その後は鳴かず飛ばずでずっと興信所勤めを続けていた。出版社からは漫画の原作をやらないかと勧められてはいたが、純文学作家のプライドから二の足を踏んでいたのだった。そのくせギャンブルには目がなく、少し稼ぎがあればそこにつぎ込むばかりでいつも金欠状態であり、母親の淑子や姉の千奈津に金をせびる毎日を送っていた。そんな彼に愛想を尽かした妻の響子は離婚して久しく、一人息子の真吾のための養育費を求めるほかは接触を拒んでいた。だが、そんな良多にも父親としての意地があり、真吾と顔を合わせるときには金を都合してでもプレゼントを用意していた。
台風が日本に接近しているある日、良多は月に一度の息子との接触を持った。響子はもと夫である彼が、彼女と恋人との接触を極秘調査していることに呆れ、冷たい態度を崩さない。それでも天気の崩れかたを危ぶみ、親子三人、淑子のアパートで一夜を過ごすこととなった。父親を心配して調子を合わせる真吾は、眠れずに父と一緒に嵐のなかを外出、公園の滑り台に籠って駄菓子を味わう。戯れに話し込む親子は、将来の夢について言葉を交わす。考え込む良多は、翌日からの自分のことを振り返ってみるのだった。翌日、晴れ渡った空のもと団地を出る親子の姿があった。
〔キャスト〕
良多:阿部寛
響子:真木よう子
千奈津:小林聡美
山辺:リリー・フランキー
町田:池松壮亮
真吾:吉澤太陽
福住:小澤征悦
仁井田:橋爪功
淑子:樹木希林
原案・脚本・編集・監督、是枝裕和
*主演の阿部寛は映画『歩いても 歩いても』(2008年)、『奇跡』(2011年)、ドラマ『ゴーイング マイ ホーム』、本作と是枝作品には4度目の出演。(主演は3度目)。『歩いても 歩いても』以来の樹木希林と親子役を演じる。
映画を見ながら嬉しくなったのは、私が住み始めて三十数年経つ清瀬が舞台になっていたということです。映し出される映像はいつも私が見慣れた風景でした。黄色い車体の西武池袋線、清瀬駅北口の踊り場にある立ち食い蕎麦屋(主人公の良多が蕎麦を食べるシーンが出てきます)、駅北口の階段前、数十の彫刻が並べられた清瀬ギャラリーのあるけやき並木、ある和菓子屋、旭が丘団地商店街、蛸型の滑り台(昨年暮れまで野塩団地に存在していた)…。
そしてなによりも、樹木が演じる母・淑子が住んでいる団地は是枝監督が28歳まで実際に住んでいた清瀬市の旭が丘団地が使われたのです。
この映画の公開に合わせて、清瀬市郷土博物館で企画展が開催されました。
●清瀬市郷土博物館 企画展「海よりもまだ深く×是枝裕和展」
2016年6月4日(土)~19日(日)
映画監督 是枝裕和氏は9歳~28歳まで20年近くを清瀬市旭が丘団地に住まわれていました。この団地を撮影の舞台として製作された映画が現在公開されています。この公開に合わせて、映画の世界観や氏の清瀬市への思いなどを紹介する企画展を開催します。
是枝監督は練馬区の北町に生まれ、清瀬に転居して清瀬五小から清瀬三中に進学したようです。私は結婚するまで練馬に住んでいたり、息子が是枝さんの高校の後輩だったりして、妙に親しみを感じてしまいます。さらに驚くべきことは、団地内ミニコンサートの場面が出てくるのですが、ロケ地に東久留米市の滝山団地(分譲)が使われたということです。私が教師として十数年勤めたところでした。
映画は夫婦、親子関係、仕事と家庭のあやを丁寧に描くものになっています。そして、シナリオがユーモアを交えて実に無理なくできているだけでなく、どの出演者の演技も自然体です。演技のリアルさは是枝作品に共通のものです。このことは独特な映画作りに関係あるようです。子どもの出演者には台詞は口移しにするというようなことを聞いたことがあります。いわゆる口伝です。今回の真吾の台詞はどうなっていたのでしょうか。
1つわからなかったことは「海よりもまだ深く」という題名がどこから由来しているかということでした。この謎は映画の終盤に解かれます。良多と淑子の会話のバックに流れていたのがテレサテンの歌「別れの予感」(1987年)でした。
「別れの予感」
歌:テレサテン
作曲:三木たかし
作詞:荒木とよひさ
泣き出してしまいそう 痛いほど好きだから
どこへも行かないで 息を止めてそばにいて
身体からこの心 取り出してくれるなら
あなたに見せたいの この胸の想いを
教えて 悲しくなる その理由
あなたに触れていても
信じること それだけだから
海よりも まだ深く
空よりも まだ青く
あなたをこれ以上 愛するなんて
わたしには出来ない
もう少し奇麗なら 心配はしないけど
わたしのことだけを 見つめていて欲しいから
悲しさと引き換えに このいのち出来るなら
わたしの人生に あなたしかいらない
教えて 生きることの すべてを
あなたの言うがままに
ついてくこと それだけだから
海よりも まだ深く
空よりも まだ青く
あなたをこれ以上 愛するなんて
わたしには出来ない
あなたをこれ以上 愛するなんて
わたしには出来ない
是枝さんは、BPOにおける放送倫理検証委員会の委員を務めています。こちらでの活躍にも注目したいと思います。
まずは映画の内容について紹介しておきましょう。
●ウイキィペディアより
〔物語〕
良多は作家として文学賞を受賞した経歴を持つが、その後は鳴かず飛ばずでずっと興信所勤めを続けていた。出版社からは漫画の原作をやらないかと勧められてはいたが、純文学作家のプライドから二の足を踏んでいたのだった。そのくせギャンブルには目がなく、少し稼ぎがあればそこにつぎ込むばかりでいつも金欠状態であり、母親の淑子や姉の千奈津に金をせびる毎日を送っていた。そんな彼に愛想を尽かした妻の響子は離婚して久しく、一人息子の真吾のための養育費を求めるほかは接触を拒んでいた。だが、そんな良多にも父親としての意地があり、真吾と顔を合わせるときには金を都合してでもプレゼントを用意していた。
台風が日本に接近しているある日、良多は月に一度の息子との接触を持った。響子はもと夫である彼が、彼女と恋人との接触を極秘調査していることに呆れ、冷たい態度を崩さない。それでも天気の崩れかたを危ぶみ、親子三人、淑子のアパートで一夜を過ごすこととなった。父親を心配して調子を合わせる真吾は、眠れずに父と一緒に嵐のなかを外出、公園の滑り台に籠って駄菓子を味わう。戯れに話し込む親子は、将来の夢について言葉を交わす。考え込む良多は、翌日からの自分のことを振り返ってみるのだった。翌日、晴れ渡った空のもと団地を出る親子の姿があった。
〔キャスト〕
良多:阿部寛
響子:真木よう子
千奈津:小林聡美
山辺:リリー・フランキー
町田:池松壮亮
真吾:吉澤太陽
福住:小澤征悦
仁井田:橋爪功
淑子:樹木希林
原案・脚本・編集・監督、是枝裕和
*主演の阿部寛は映画『歩いても 歩いても』(2008年)、『奇跡』(2011年)、ドラマ『ゴーイング マイ ホーム』、本作と是枝作品には4度目の出演。(主演は3度目)。『歩いても 歩いても』以来の樹木希林と親子役を演じる。
映画を見ながら嬉しくなったのは、私が住み始めて三十数年経つ清瀬が舞台になっていたということです。映し出される映像はいつも私が見慣れた風景でした。黄色い車体の西武池袋線、清瀬駅北口の踊り場にある立ち食い蕎麦屋(主人公の良多が蕎麦を食べるシーンが出てきます)、駅北口の階段前、数十の彫刻が並べられた清瀬ギャラリーのあるけやき並木、ある和菓子屋、旭が丘団地商店街、蛸型の滑り台(昨年暮れまで野塩団地に存在していた)…。
そしてなによりも、樹木が演じる母・淑子が住んでいる団地は是枝監督が28歳まで実際に住んでいた清瀬市の旭が丘団地が使われたのです。
この映画の公開に合わせて、清瀬市郷土博物館で企画展が開催されました。
●清瀬市郷土博物館 企画展「海よりもまだ深く×是枝裕和展」
2016年6月4日(土)~19日(日)
映画監督 是枝裕和氏は9歳~28歳まで20年近くを清瀬市旭が丘団地に住まわれていました。この団地を撮影の舞台として製作された映画が現在公開されています。この公開に合わせて、映画の世界観や氏の清瀬市への思いなどを紹介する企画展を開催します。
是枝監督は練馬区の北町に生まれ、清瀬に転居して清瀬五小から清瀬三中に進学したようです。私は結婚するまで練馬に住んでいたり、息子が是枝さんの高校の後輩だったりして、妙に親しみを感じてしまいます。さらに驚くべきことは、団地内ミニコンサートの場面が出てくるのですが、ロケ地に東久留米市の滝山団地(分譲)が使われたということです。私が教師として十数年勤めたところでした。
映画は夫婦、親子関係、仕事と家庭のあやを丁寧に描くものになっています。そして、シナリオがユーモアを交えて実に無理なくできているだけでなく、どの出演者の演技も自然体です。演技のリアルさは是枝作品に共通のものです。このことは独特な映画作りに関係あるようです。子どもの出演者には台詞は口移しにするというようなことを聞いたことがあります。いわゆる口伝です。今回の真吾の台詞はどうなっていたのでしょうか。
1つわからなかったことは「海よりもまだ深く」という題名がどこから由来しているかということでした。この謎は映画の終盤に解かれます。良多と淑子の会話のバックに流れていたのがテレサテンの歌「別れの予感」(1987年)でした。
「別れの予感」
歌:テレサテン
作曲:三木たかし
作詞:荒木とよひさ
泣き出してしまいそう 痛いほど好きだから
どこへも行かないで 息を止めてそばにいて
身体からこの心 取り出してくれるなら
あなたに見せたいの この胸の想いを
教えて 悲しくなる その理由
あなたに触れていても
信じること それだけだから
海よりも まだ深く
空よりも まだ青く
あなたをこれ以上 愛するなんて
わたしには出来ない
もう少し奇麗なら 心配はしないけど
わたしのことだけを 見つめていて欲しいから
悲しさと引き換えに このいのち出来るなら
わたしの人生に あなたしかいらない
教えて 生きることの すべてを
あなたの言うがままに
ついてくこと それだけだから
海よりも まだ深く
空よりも まだ青く
あなたをこれ以上 愛するなんて
わたしには出来ない
あなたをこれ以上 愛するなんて
わたしには出来ない
是枝さんは、BPOにおける放送倫理検証委員会の委員を務めています。こちらでの活躍にも注目したいと思います。