森進一の娘はねた 最終稿へ
お見舞いの時間が迫る中、決心して、先ほどの玄関の老人の救済に向かった。
玄関の戸を開けようと、「開けますよ、開けますよ。大丈夫ですか?」ガタビシ・ガタビシ・・・・・・・。なかなか開けられない。
老人が戸にもたれかかっているので、なかなか開けられない。満身の力を込めてやっと開いた。たちまち姿を現したご老人が、なんと力なく私にもたれかかって来た。と、言うより、支えが無くなって倒れて来たのだ。
土色の顔色のご老人は、どのようにしてここまでたどり着いたのか。枯れ木のように倒れかかっている。従って私は、抜き差しならない体勢に追い込まれた。ご老人は案外重いのだ。押せば向こうに倒れる。引けば一層もたれてくる。ご老人の足が動かないので私一人では移動すらできなくなった。強烈な加齢臭が襲う。
向こうの方で、「何やっているんだ。時間がないぞ。」支店長の怒りの声が聞こえる。私は非情なる決断をせざるを得なくなった。
ご老人と私の間に再び戸を戻すことにした。前後のバランスだけ保ち、戸をその間に引き戻し再びすりガラスの向こう側にご老人の身を委ねさせた。そうっと身を引いて振り返ると、すりガラスの曇りが、ご老人の生命の証拠かのように見えた。それがせめてもの慰めだった。
アポイント時間を20分近く遅刻したが、女の子は早くも包帯を外していて、ほほの傷は痛々しいものの、跡は残らないとの事。森進一先生ご夫婦も、むしろ恐縮していた。
良かった。何とか済んだ。
しかし、怒り心頭の支店長は、機嫌が悪い。
しかし、何とかお見舞いを済ませて車で帰る時、例の家の前には救急車が止まっていた。ご老人はどうなったのだろう。
しかも、野次馬の中に見つけた。あの、オバはん。
あんた?なにした?
なんで?なんでいるの?
この項終了。
一方、スモン石鹸は、
マスコミは一斉に、叩いた。
明日から、京都に話を戻す。