コンプライアンス回転寿司。後半、
「しめさばお願いします。」「しめさばですか?本当に食べますか?」
「大阪では、キズシ。バッテラ寿司とも言う。」
「良いですが、手続きは一層複雑です。アニキサスが流行して厳しい指導が入っています。」
「アニキサス?」
「そうです。胃や腸を食い破るウイルスですので、まず医者の再度の検診と確認書類が要ります。」
「どんな検診ですか?」
「胃カメラです。通常以上の健康体が求められます。加えて、仮にアニキサスの攻撃を受けても、店や国を訴えない事を、確認します。これは実印が必要です。」
「こうなったら何でもしますよ。食事より健康診断に来たみたいだ。」
「回転寿司を食べて、健康になろう。これ良いスローガンですね。」
「あほ、健康体だから回転寿司が食えるのだろう。」
「ところで、胃カメラも良いけど、あれは絶食が必要なのでは?」
「そうです。従って、しめさばは、明日以降になります。」
「馬鹿野郎!!」
もう、適当に食べて帰ろうと無難なネタを注文、一人10皿を越える頃に、テーブル上に
「健康の為、食い過ぎに注意。」と書かれたプレート。
これも、厚生省からの「メタボ撲滅強化週間」教宣の為の指導らしい。
もう、うんざり。「お勘定お願いします。」
「ありがとうございます。・・・・。診察料合わせて合計で18000円です。」
「高い!!20000円でおつり下さい。」
「当店はキャッシュレスとなっております。代金は指定の口座に4日以内に振り込みお願いします。」
「ええっ!キャッシュレス?なぜ?」
「事務の合理化の一環として、総務業務や会計業務はすべて事務センターに集約されました。」
「意味わかりませんけど。」
「当社は、みずほFGよりも数年早く、合理化に取り組み1000人の社員を、600人まで削りました。そうです、みずほと同じく、総務・経理業務は徹底的に合理化しました。そりゃ総務の女の子がかわいそうでしたよ。ある日突然、自宅からは遠い本社の狭い一室に閉じ込められ、支店の総務業務を遠隔によって行わされるのですから。ええ?大量に辞めましたよ。希望退職ならば、退職金もたくさん出ますが、結局自己都合の退職扱いで、気の毒でしたよ。(涙)私も、こう見えても本社の企画部門にいましたが、コンサル会社の指導によりこうして現場の店員をしています。お客から色々言われ、本社からは「チャレンジ」と言って目標達成のプレッシャーは、すごいものです。コンプライアンスのルールは一層厳しくなり、お客からもボロカスですよ。(大涙)最後は、店からレジが無くなり、全部振り込みです。わざわざ回転寿司の代金を振り込んでくれますか?多くが不渡りで、その回収も本社からノルマが来ます。もうやっていられませんよ。(怒)」
「分りました、振り込みますよ。」「・・・・・。(泣き声)やっと話が分かる人と巡り合った。」
世の中どうなるのだろう。妄想が止まりませんが、近未来の現実だ。