Argynnis hyperbius(ツマグロヒョウモン♀)
撮影者:Peelden
撮影日:2014.07.12
オリジナルからの改変、なし
つづけて、今日も、実家の庭で見たチョウをお送りします。
このチョウは、訪問もそう頻繁ではないし、近づこうとするとすぐに逃げるし、あまりにもひらひらと飛ぶので、撮影は1枚で、投げ出してしまいました。
離れた位置からズームをかけると、背景の色に溶け込んで、どこをねらえばいいのかさえ分からなくなりました。それで、ズームをかけるのをやめて、「普通」のセッティングで、「チョウ」を撮影する、というより、チョウのいる「場所」を撮影しました。
そのようにして撮った画像をトリミングしたのが、以下の画像です。
2023.05.31撮影
このチョウが「立って」いるのは、ヴィオラ(Viola)の真横です。
・ヴィオラの近くにいる
・この数日前にわたしは幼虫を見ている
・羽の模様
から、このチョウは、ツマグロヒョウモン(Argynnis hyperbius)のメスであろう、と考えました。
冒頭の借り物の画像中のチョウと、同一種に見えませんか?
学名 Argynnis hyperbius
英名 Indian fritillary「インドの格子模様のチョウ」
和名 ツマグロヒョウモン(褄黒豹紋)
タテハチョウ科(Nymphalidae)ヒョウモンチョウ族(Argynnini)
ツマグロヒョウモン属(Argynnis)
動植物の分類の典型は、
科>属>種
ですが、
ツマグロヒョウモン属の場合には、属と科の間に、族(ぞく)が設けられています。
科>族>属>種
漢字が異なるとは言え、「属」と「族」なんて、何も同じ発音の接尾辞をわざわざ選ぶことはないんじゃない? ぶつぶつ
ツマグロヒョウモン属に属する種は、しかしながら、ツマグロヒョウモンだけです。いわゆる、「1属1種」。
Argynnis hyperbius(ツマグロヒョウモン♂)
撮影者:Phonon.b
撮影日:2019.10.22
オリジナルからの改変、なし
冒頭の画像のツマグロヒョウモンはメス(♀)ですが、直前の画像のはオス(♂)です。
「ツマグロヒョウモン」の「ツマグロ(褄黒)」というのは、メスの表の羽の端(つま)が黒いことによります(あるいは、メス、オス、両者の、羽の外縁全体が黒いため、と説明してあるのもあります)。「ヒョウモン」というのは、ネコ科のヒョウ(豹)の体に入る斑点(=紋)から来ています。
メスとオスの羽の裏の違いは、以下でお比べください。赤い模様の出ているのがメス、オレンジ色の模様の出ているのがオスです。(どちらがきれい?)
Argynnis hyperbius(ツマグロヒョウモン♀)の翅裏(羽の裏)
撮影者:ja:user:sphl
撮影日:2005.09.23
オリジナルからの改変、なし
Argynnis hyperbius(ツマグロヒョウモン♂)の翅裏(羽の裏)
撮影者:Laitche
撮影日:2007.09.08
パブリックドメイン
それでは、ツマグロヒョウモンがどこに分布するか、以下の地図でご覧ください。
これは、アメリカのスミソニアン博物館(Smithsonian Institution)のひとつである国立自然史博物館(National Museum of Natural History)のサイトからです。種名 Argyreus hyperbius の後につづく Linnaeus 1763 というのは、「リンネが1763年に命名を公表した」という意味です。
Argyreus hyperbius Linnaeus 1763(英文+画像+地図)
この地図によると、ツマグロヒョウモンは圧倒的に西日本(と朝鮮半島南端?)で多く産するのですが、ツマグロヒョウモンの英語の名前には、その事実が反映されていません。1763年、と言えば、日本は鎖国中でしたからね。
英名の Indian fritillary の Indian「インドの」が、当時、このチョウが「発見」された場所を示すのかもしれません。
Indian fritillary の fritillary は、「サイコロを入れておく箱」あるいは「格子模様の、チェッカーの」という意味です。この同じ語(同語源の語)が、植物のバイモ属(Fritillaria)の名称となっています。
次の花は、そのバイモ属の模式種(基本種)であるフリチラリア・メレアグリス(Fritillaria meleagris)です。確かに、格子模様ですね? でも、バイモ属の花全部が格子模様であるわけではありません。
2021.04.17撮影
学名 Fritillaria meleagris
英名 Snake’s head「蛇の頭」
別名 Chess flower「チェス(の盤のような模様)の花」
和名 フリチラリア・メレアグリス(学名から)
ユリ科(Liliaceae)バイモ属(Fritillaria)
バイモにも〜〜
明日は、ツマグロヒョウモンの幼虫をお見せします。幼虫もかわいい、と思ってくだされば、幸いです。