78回転のレコード盤◎ ~社会人13年目のラストチャンス~

昨日の私よりも今日の私がちょっとだけ優しい人間であればいいな

◎リザイン・ブルーになって社畜の人生 ~賞与と退職金と就業規則~(第1話)

2017-08-03 12:53:30 | ある少女の物語

<退職への道(1)転職活動>

 僕はこれまで、ブラック会社しか経験して来なかった。
 建設業の現場作業、新聞配達、足場施工、漫画喫茶。ここまでは本当に酷かった。どこに行っても辞める時には一生もののトラウマを植え付けられていた。

 そして今の会社、コンビニ業界に就職したのは5年と4ヶ月も前のことだ。過去の勤続最高記録は一年4ヶ月、それを大幅に上回るくらいにはまともな会社に入れたと思っていた。
 その考えは甘かった。今の会社は深刻な人員不足に何度も悩まされた。当店の場合は夜勤が不足し、社員が入らざるを得なくなった。夜勤メインの勤務になって早一年半。身体は限界だった。

 退職は2年も前から考えていたが、この春からいよいよ転職活動を始めた。 

(S社の面接官)「夜勤手当が出ないことは入社する前に分かっていたんじゃないの?」

 面接では容赦ない批判を浴びることもあった。確かに手当が無いことは知っていたが、勤務は基本的に昼間だとも聞いていた。こんなに夜勤が続くなら話は別だ。夜勤は生活リズムの崩壊、睡眠時間の不足、事実上の休日返上(ただの明け休みを週休に割り当てられる)など、失うものが多い。

 6月にスーパー業界のI社から内定をいただいた。スーパーなら昼間の勤務がメインになる。給料は今より少し下がるが、夜勤が無くなるだけでもありがたかった。


<退職への道(2)退職の申し出>

 7月6日、今の会社の社長に直接会い、8月10日付での退職を申し出た。直前まで理由を考え、それを落ち着いて丁寧に話した。ここまでの社長に対する印象は良いはずだった。しかし、

(社長)「辞めるのは仕方ないけど、責任者クラスの人間が抜けるとなると、引き継ぎに時間がかかる。9月頃まで居てくれないだろうか」

 そんなに期間が必要だとは聞いていない。社会通念上の常識として辞める約一ヶ月前に退職を申し出れば素直に受け入れて貰えると思い、I社の入社日を8月11日に決定していた。それは容易にずらせるものでは無かった。

 僕は数時間後に社長に電話し、退職日の延期が不可能である点と、親に実家に帰るよう言われているので最後に7日間の有給休暇をいただきたいと伝えた。

 社長の機嫌は悪そうに聞こえたが、結果的に了承はいただいた。数日後に退職願を提出し、8月10日をもって会社を抜けられることは揺るぎ無いものとなった。


<退職への道(3)給料未払い>

 7月10日、社長の攻撃は始まった。午前0時に自動で振り込まれるはずの給料が、9時を過ぎても振り込まれない。念の為、懇親会中止騒動の愚痴を聞いてくれたG男に電話で確認した。

(G)「給料が振り込まれているかですか? まだ確認していません」

(僕)「今すぐネットで確認出来ませんか?」

(G)「みずほダイレクトに登録していないので……」

 他の社員にも聞いたが一人は未確認、もう一人は奥さんが管理しているので不明とのこと。給与明細もろくに発行されない会社なのに、何故お金という大事な問題に対して無頓着でいられるのか。
 G男を含めた3人は結果的に給料日当日に振り込まれていた。どうやら社員で未払いなのは僕だけのようだ。給料日に支払われないのは当然ながら法律に違反している。ただ、辞めるだけで会社に多少なりとも迷惑をかけている自覚はあるので、ここで文句は言わず一日待つことにした。


<退職への道(4)賞与未払い>

 そして翌日、7月11日。僕の給料は一日遅れとはいえ振り込まれてはいたが、夏の賞与が含まれていなかった。例年ならこの日に給料と一緒に振り込まれているはず。まずは部長に相談した。

(部長)「たぶん辞めるって言っちゃったから、賞与は無しになっちゃったんじゃないの?」

 わけがわからないよ。賞与というのは過去の査定期間における努力や成果によって決められるものではないのか。未来に在籍するか否かまで査定に含まれるなんて聞いたことがない。

(部長)「いや会社では良くある話なんだよ。社長に言う前に俺に相談してくれれば良かったのに」

 後で調べると、確かに「賞与は過去の貢献だけでなく将来の期待も含まれる」という考え方もあった。
 しかし、賞与と言っても世間一般的な額よりかなり低い。この半年間、相当な苦労をしてきたつもりなのに、寸志レベルの額すら貰えないというなら……

(友人A)「ならせめて退職金は貰えよ」

 そうだ、退職金! 勤続3年以上で支給される会社が多いが、僕は今の会社に5年4ヶ月も在籍している。もし貰えるなら、それが賞与の代わりだと思えば納得できる。
 しかし、僕は退職金の規定の有無を知らない。以前『教えて!goo』で質問した時の回答は、

『退職金のことなどは上司や総務部などに確認されたら如何ですか』

『会社に就業規則(従業員が閲覧できる様に備えつけておかなければならないもの)で閲覧を請求して見られると良いと思います』

『退職時にこれらの事を聞くのは失礼では無いと思います。労働者の当然の権利です』

 そう、就業規則! そこに退職金規定が記載されているかどうかが重要になってくる。社長と話す前にあらかじめ就業規則を把握しておいたほうが話し合いで有利に立てるだろう。

 僕は会社と戦うことに決めた。決して法律だから請求するとか、そんな単純な話ではない。5年以上も勤務し、相当な時間のサビ残もし、夜勤で生活リズムと体調を崩し、週1の休みすら貰えないことも多かった人間の当然の権利として賞与と退職金が欲しい、ただそれだけである。

 

(つづく)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿