中国の嘘への反論足りず 日本は歴史問題で主張し続けなければならない 中国が記憶遺産に登録申請した「南京大虐殺文書」は認められ、「慰安婦関連文書」は登録されなかった。その違いは何だったのか。日本人自身がどれだけ、中国や韓国がねじ曲げた「歴史」を正す努力をし、国際社会に声をあげてきたかの差ではなかったか。
慰安婦問題についていえば、ここ数年で「慰安婦募集の強制性はなかった」「慰安婦は性奴隷ではない」という事実は、これまでにない規模で国際社会に発信されるようになった。昨年、朝日新聞が、慰安婦狩りを証言する本を書いた吉田清治氏の記事を取り消したことも大きかった。史実を伝えようとする民間の動きは格段に拡大した。
一方、南京事件については慰安婦問題ほどの取り組みはまだみられない。
南京事件が「南京大虐殺」として国際的に定着することに大きく影響したものがある。昭和46年に朝日新聞で連載された本多勝一記者(当時)の『中国の旅』によって日本兵が残虐だったというイメージ国内で広がり、中国系米国人、アイリス・チャン氏の著書『ザ・レイプ・オブ・南京』は世界中に衝撃を与えた。
しかし、この2つを含む南京事件に関する中国の嘘は日本人の歴史家などがことごとく暴いてきた。中国のプロパガンダへの反証材料はそろっており、民間人が自発的に英語で発信する取り組みも始まっている 問題は日本政府、特に外務省だ。今回の記憶遺産をめぐっても外務省内からでさえ「対応はひどかった」との批判がある。7月の世界文化遺産もそうだったが、中韓から売られた“歴史戦”への対応が相変わらず不十分なようだ。
「南京大虐殺文書」が登録されたことには「負の遺産があってもいい」という声がある。真実なら「負の遺産」もいいが、「嘘の遺産」はあってはならない。日本は官民挙げて、真実を国内外で粘り強く主張していかなければならない。いかに時間のかかる作業であったとしても。
産経 新聞 (田北真樹子)