中央アジア歴訪 経済外交で中露を牽制したい、地政学上の要衝で、資源にも恵まれている。中央アジア5か国との協力関係を戦略的に強化することが重要である。
安倍首相はカザフで中央アジア政策演説を行い、「自立的な発展を官民連携で支える」と表明した。社会基盤整備や人材育成を支援して、「3兆円超のビジネスチャンスを生み出す」とも強調した。
1991年のソ連崩壊により独立した5か国はロシアとの関係が伝統的に深い。近年は、中国の影響力の拡大が著しい。中国は「一帯一路」、ロシアは「ユーラシア経済同盟」という独自の経済圏構想を掲げ、せめぎ合っている。
日本が中露の緩衝地帯で存在感を高めれば、双方の拡張主義を牽制(けんせい)できる。中央アジアも、中露への依存度を下げることが安定した多角的な発展につながる。日本と中央アジアは互恵関係にある。
カザフのウラン埋蔵量は世界2位で、トルクメンの天然ガス埋蔵量は4位だ。日本には、調達先としての潜在的な魅力も大きい。
日本は04年以降、中央アジアと外相会合を定期開催してきたが、関係強化に十分とは言えない。
首相は今回、50に上る建設など日本企業や団体の幹部を同行させた。トルクメンとは、天然ガスプラント建設など総額180億ドル以上の案件での協力で合意した。
インフラ輸出の拡大は、安倍政権の成長戦略の柱だ。政府開発援助(ODA)を利用した経済外交を積極的に展開したい。
カザフなどは、資源依存型の経済からの脱却と、産業の高度化を目指している。資源が豊富でないタジクやキルギスは、交通網の整備や民生の向上が急務だ。
日本は、各国の個別のニーズを把握し、適切な資金協力や技術支援を行うことが大切である。5か国の連携を深めるため、物流の円滑化なども後押しすべきだ。持続的な取り組みが求められる。
過激派組織「イスラム国」の勢力拡大は、中央アジア各国にとっても重大な脅威となっている。
「イスラム国」の弱体化を図る一環として、この地域との戦闘員などの往来を阻止することが重要だ。テロ組織の資金源となる麻薬の流入阻止も欠かせない。
日本は、テロ対策の観点から、各国の国境管理や麻薬取り締まりの強化に協力する必要がある。