私を乗せた赤い列車は、薄暗い地下駅を出発して地上へと放たれる。
大動脈を横目に、家路を縫うように、車体を傾けたりしながら予想もしない速さで進んでいく。
立派なクロスシートに腰を下ろして、向かうのは果ての海である。
赤い列車が、何処か知らない場所へと連れてってくれる。
車窓から見える日常的風景は目まぐるしく過ぎ去っていく。
まるで見慣れた光景を振り払うかのように走り去る。
列車はいくつかの大きな都市で乗客を吐き出して、同じくらい飲み込んでいく。
次第に隧道が増えてくると、地上に顔を出すたびにあたりの情景が変わっていくようだ。
迫り来る山稜と、狭く入り込んだ住宅地。
見慣れた巨大なビルは、もう遠くの方に霞んでしまっている。
さようなら日常。
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