Fuji Trip!

水豚先輩の週末旅日記

春の色 新宿御苑

2015-03-07 00:30:17 | とりっぷ!


新宿御苑は不思議な場所である。
新宿駅から徒歩圏内というのに、広大な敷地を公園として開放している。

これが単なる公園としての歴史を歩んできていないことは容易に想像がつく。


そもそも新宿という地名は、江戸時代に甲州街道の第一宿駅として新たに設置された内藤新宿に始まる。
それ以前の新宿には信州高遠藩主、内藤家の広大な下屋敷があった。

この内藤家の屋敷の一部を用いて新しい宿場を作ったことから、内藤新宿と言われたのである。

その後、幕府が崩壊し大蔵省に管理が移った旧内藤家屋敷地は初めは農業試験場となり、明治13年には宮内庁の管轄となり皇室庭園としての道を歩むことになる。
服羽逸人を中心として大掛かりな造園が始まり、明治39年に新宿御苑が完成した。

空襲により甚大な被害を受けた御苑は戦後、皇室庭園から国民公園へと変わり、現在へと至っている。


戦後は繁華街として発展し、高度経済成長後は副都心が形成された新宿の街で、広大な自然が残されているのは奇跡に近い。

皇室から愛された庭園を、国民が賜ったということが何より現在まで新宿御苑を残し続けられた一番の理由であるような気がする。






友人知人の間でも評判の良い新宿御苑。
外国人観光客からも人気なのだと聞く。

新宿は乗り換えにほぼ毎日利用しているというのに、まだ一度も訪れたことがない。

「御苑に梅を見にいく」という社会人1年生に同行するかたちで、初の御苑散策を楽しんだ。


新宿御苑は今の今まで地下鉄丸ノ内線・新宿御苑前駅が最寄駅だと思い込んでいたが、
実は新宿門という入口はJR新宿駅東南口から10分弱で行ける。

入園料は200円。
閉園は16時30分までなので早めに訪れたい。


園内地図を手にとり、その敷地の広大さを再確認する。
千駄ヶ谷門から出れば、千駄ヶ谷駅も近いらしい。


園内は主に「母と子の森」、「日本庭園」、「イギリス風景式庭園」、「フランス式整形庭園」に分かれる。
どれも趣が異なっていて、飽きることはなさそうだ。





平らな芝生の中、ひとりぼっちでもっさりと繁る草。
なんだか可愛らしい。






新宿駅寄りには回遊式の日本庭園がある。
丘陵に沿って梅が咲き、新宿副都心の超高層ビルを借景として上の池が広がる。

まだ風景の中に緑は少ないけれど、少しずつ彩りが戻って来ているよう。

あずまやでは老人たちが会話に花を咲かす。





花がぼてぼてとしているので桜の仲間であろうとは予測できたが、相方に「カンザクラ」だよと紹介された。
植物には疎いので詳しい人が隣にいると嬉しい。

入口でもらえる園内地図にもしっかりと書いてあった。






中央休憩所付近の丘陵地帯は絶好のひなたぼっこ場所。

外国人観光客が、芝生に寝転んで太陽光線を浴びている光景が実にのどかだ。

ここにもカンザクラは咲いていて、中高年の方々は撮影に夢中。
キャンバスを立てて、水彩画を楽しんでいる人もいる。






芝生の中でお気に入りの場所を探して、お昼を食べていると、ハクセキレイが小走りで駆けていく。

決して近づいては来ないが、動きを肉眼で観察できるほどには近い。

街中で見かけることも多いけれど、お互いこんな場所で会えれば距離も縮まりそう。






境界林を越えると、イギリス風景式庭園に変わる。
平坦な風景は日本庭園とは少し異なっている。

巨大な針葉樹は日本の樹木にはない異様さがあってちょっと怖い。





最奥はフランス式整形庭園になっている。
バラ花壇を中心にして、左右にプラタナス並木が続いている。

プラタナス並木は、よく広告などで見かける西洋の街角の光景を彷彿とさせる。

園内の端に位置するので、人通りが少なく活気がないのが残念だが、等間隔に置かれたベンチに座って物思いにふける場所としては最高だと思う。






新宿御苑のルーツとなる玉藻池。
江戸時代の内藤家屋敷時代からあったという。

日影の枯色と、日当の緑のコントラストが良い感じ。

ひっそりとした雰囲気が園内の他の場所とは異なっている。






大木戸門のすぐそばにはガラス張りの大温室が建つ。
温室があることすら知らなかったので驚き。

天井の換気用窓が猫耳のように見えてしまう。

建物自体は比較的新しいようで、開放的。
自由に入館できるのも嬉しい。

入口から中に入ると、大きなバナナの木が繁っている。




館内は立体的な構造で、植物繁る散策路を1階から2階へと進んでいく。

植物園にはお決まりの滝や池もあって植物好きでなくとも楽しめそう。






ちょっと気になるモケモケした花。
触ってみたい。





2階からブリッジから見た蓮池。
蓮の葉の形が可愛らしい。

2階にはバニラなどの香料となる木やマンゴーなどの果実の生る木も栽培されている。





温室の隣の古めかしくお洒落な建物は旧洋館御休所。
重要文化財に指定されている。

明治29年に天皇や皇室の休憩所として建てられ、現在は月2回ほどの特別公開時に限り内部を見学できるという。

玄関と張り出した庇などが、駅舎のようでもある。





帰り際にもう一度梅。
日のあたる場所にはちらほらと咲き始めている。

梅の花は小ぶりで上品な可愛さがあって好き。







初めて新宿御苑を訪れて、満足度が高い理由も理解できた。
大まかに園内を散策すると、「次に来たときは何をしよう」といった再来の動機を見つけることができる。

気ままに歩くのもよし、芸術活動をするもよし、デートをするもよし。
広い園内に様々な可能性が潜んでいて、楽しみが増える。


都市でも郊外でも、公共空間では様々なことが規制され、羽を伸ばせる場所は少ない。
だからこそ、新宿のような大都市で、超高層ビルを横目に見ながら自由に活動できるのは実に気分がいい。

普段は動かされてる人間が、自ら動くことができる場所。

都会のオアシスとは、新宿御苑のことである。



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