Fuji Trip!

水豚先輩の週末旅日記

春の中央線の旅 その6 甲府

2015-05-02 01:26:53 | とりっぷ!


「天空の湯」で疲れを癒しているうちに、日はだいぶ西に傾いていた。
同じくぶどうの丘に併設されているワインカーブでワインでもいただくかと企んでいたのだが、実はワインなど生まれて2度くらいしか呑んだことがないのでやめておく。
それよりも山梨に来たからには「ほうとう」が食べたいとT氏も言っている。
確かに、私もワインよりもほうとうがいい。

ということで、大人しく駅まで歩く。







ぶどう畑を歩いている最中に、甲府方面の列車が行ってしまった。
西日に照らされた列車と桜の写真が撮れたからいいとしよう。

東京よりも本数は少ないとはいえ、中央本線も甲府までは毎時2本程度は走っている。







次の列車まで少し時間があるので、旧勝沼駅跡に寄り道。
現在のホームより一段低い位置に、使われなくなったホームが残されている。

プラットホームの真ん中には巨大な桜の木が根を生やしていて、ちょっと非日常的。
幻想世界のようで、本当にこんな駅があったらいいなあと思ったりもする。
レールの敷かれていない道なのに、待っていたらディーゼル車がやってきて・・・なんて妄想に胸をときめかせながら散策。

よく考えてみたら、ホームに桜があったら5月くらいに毛虫の被害とかありそう。
現実に引き戻された。







駅へ到着すると、甲府行きの列車がすぐに来た。
朝に大月駅からお世話になった、あの古い車両だ。
桜とのツーショットもいい感じである。

車内は予想以上に空いていて、学校帰りの学生がひとりふたり乗っているだけ。
左側のクロスシートに座って、夕暮れの甲府盆地を一望する。
窓を開けると涼しい風が車内に入ってきて気持ちがよい。








25分ほどで終点の甲府駅。
本日3度目であるが、3度目の正直ということで今度こそ街歩きをしよう。

駅前には甲斐の国のシンボルでもある武田信玄の巨大像が建っている。(信玄自体は腰を下ろしている)
その昔、駅前に銅像を作るブームというものがあったらしく、現在でも駅前に地域を代表する人物や動物の像が建っていることは多い。
岐阜駅は黄金の織田信長、宇都宮駅は餃子といった具合である。


武田信玄といえば温泉が好きなことで有名。
現在、「信玄の隠し湯」と呼ばれる信玄公ゆかりの温泉が山梨県を中心として中部地方に多く伝わっている。
甲府市も良質な温泉が出ており、市内の銭湯では当たり前のように温泉が出るという。
温泉好きの友人がわざわざ入りに行ったと聞くから良質な温泉が出ているのだろう。

昭和風情のある「喜久乃湯温泉」が気になっていたが、勝沼でどっぷり浸かってきたため今回は断念。
車窓からも見えた甲府城に向かう。








甲府城は甲府にあるから武田氏築城かと思いきや、実際に建てられたのは武田氏滅亡後のことである。
初めは織田信長の領国となったが、その後徳川、豊臣と移り変わり、秀吉の命により築城が為された。

関ヶ原以降はふたたび徳川の勢力下に入ることになる。
城下ともに幕府の直轄地として栄えたという。

明治には甲府城も他の城と同様に廃城となり、多くの建物が壊されて規模は大幅に縮小したが1904年には「鶴舞公園」として整備されて現在に至っている。
近年、整備事業が拡大し、建物の復元も積極的に行われているという。

甲府城には天守は残っていない。
かといって市中にあることからも「国破れて山河あり」的な退廃的な雰囲気はなく、城というより公園の雰囲気が強い。

小奇麗すぎるような気もするが、誰もが利用できるパブリックスペースとして機能しているのは素敵。
迷路のような城内を天守台目指して進む。



復元された建築が展示室になっているようだが、16時半を過ぎていたのでもう閉まっている。
きっと、内部には100名城スタンプとかが置いてあったに違いない。
惜しいことをした。

それにしても、最近は記念スタンプを設置する施設が少なくなったように思う。
スタンプというと、ちょっと前世紀のにおいもしてくるが、旅の記念には最適である。
写真よりも記念にもなるし、何より貯まっていくのがうれしい。







大股で天守石垣まで登ると、やっぱり見えるのは富士山。
天守から富士山が見える城というのは、意外と少ないのではないかと思う。
すこし電波塔が邪魔なような気もするが、これもこれで生々しくていいのかもしれない。

城郭を見渡せば、満開の桜。
お城と桜はよく似合う。
桜がいつごろ植えられたのかは知らないが、濠に映える桜並木は味があっていい。







城の中でもうひとつ目立つものは、巨大な石碑であろう。
本丸内に起立する石碑は何かの慰霊碑かと思ったが、目の前まで行って説明版を見ると、謝恩碑という名前らしい。

どうやら、明治時代に県内にあった御料林が山梨県に下賜されたことを記念して、1922年に建てられたという。
高さは約30m。

なんだか一度見たときに、心がざわざわする感じがしたので、設計者を見てみると伊藤忠太であった。
京都の祇園閣、両国の東京慰霊堂といい、伊藤忠太の建築の存在感はなんと表現したらいいのか。
私の語彙力ではどうにもならないので、ただただざわざわする。







さて
ひと通り散策したあとは、そろそろ夕食の時間にでもしよう。

お待ちかねのほうとうである。
立ち寄ったのは駅前の「ほうとう 小作」。
数年前にも立ち寄ったことのあるお店だ。

店内に案内されると、表から見るより奥行きがある。
テーブル席を通り過ぎて廊下を抜けると座敷がある。
腰を落ち着けると、その座敷奥の襖の先に更なる宴会場があったから驚いた。

頼んだのは、スタンダードタイプの「かぼちゃほうとう」。
T氏は「鴨肉ほうとう」を頼んでいた。ちょっとリッチである。

このほうとう、野菜が容赦なくごろごろと入っていて見た目のわりにお腹が満たされるのである。
きしめん強化版みたいな麺が汁と絡んで箸が進む。

アツアツのうちがやっぱり一番美味い。







山梨というと、とりあえずほうとうのイメージがある。
昔、自動車で大通りを通っていても、「ほうとう」と書かれた幟をよく目にした覚えがある。

近年では、
ほうとうと共に鶏もつ煮が推されていて、B-1グランプリでゴールドグランプリの受賞歴もあるご当地グルメなのだそうだ。
このお店でも食べることができる。

そういえば、
市内の自動販売機には鶏もつ煮をPRするキャラクタープリントされていた。
ちょっと調べてみると、「とりもっちゃん(40)」と「えん丸くん(4)」というらしい。

Windowsのペイントを使って私にも書けそうなキャラクターであるが、とりもっちゃんに関しては着ぐるみ化も果たして、ゆるキャラグランプリ2012にも出場したらしい。




腹も満たしたところで、時刻は19時。
ちょっと早いが、普通列車でゆっくり東京へ帰ることにしよう。
東京方面の列車の多くが甲府駅始発なので、座って帰ることができる。

甲府に別れを告げて、山梨市を抜けた列車はぐんぐんと高度を上げていく。
進行方向右手には、甲府盆地の夜景が煤けた窓ガラスに滲んでいる。

この風景は、街を出発した銀河鉄道に乗っているようで好きだ。
実際には宇宙に向かうのではなく、現実へ帰るのだけれども。

勝沼を過ぎると、長いトンネルに入った。
いつも帰り道は行きよりも早く感じるから、きっとすぐに東京に着く。

トンネルの風を切る轟音を聞きながら、しばしの間、夢でもみることにしよう。




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