映画感想(ネタバレもあったり)

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映画『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』 南北旗を見ると思い出す。木に吊るされた家族を。

2022-05-06 | 映画感想
ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償(2020年製作の映画)
Judas and the Black Messiah 製作国:アメリカ上映時間:125分
ジャンル:ドラマ伝記
監督 シャカ・キング
脚本 ウィル・パーソン シャカ・キング
出演者 ダニエル・カルーヤラ キース・スタンフィールドジ ェシー・プレモンス




観るべき映画。

「南北旗を見ると思い出す。木に吊るされた家族を。」

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「黒人俳優の中でも、より肌の色が黒い俳優には役が回って来づらい」


と言ったのはオスカー受賞歴のある女優ヴィオラ・デイヴィス。

そんな中にあって、
黒人俳優の中でも肌の色が黒めのダニエル・カルーヤがスター俳優として、
人気もカリスマも実力も評価もある立場で突っ走っているのは本当に素晴らしい。痛快。


『ムーンライト』の監督 バリー・ジェンキンスが「肌の色の違う黒人俳優を同じ画面で撮影するには照明に工夫が必要」的なことを言っていたので
確かに工夫は必要なんだろうけど
逆に言えば工夫すれば可能だいうことでもある。



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で、
今作では恐らく意図的にダニエル・カルーヤの顔が暗いままのシーンが多い。



特に前半。
夜の室内シーンっつったって、間接照明や窓の外からの灯りとして顔を照らすことはできたはずだけど、
それをやらない。
その分、ダニエル・カルーヤの表情を見ようと必死になる。
白眼と黒眼のコントラストが印象的で、ミステリアスだしさらにカリスマ性を強めている。


で、
いよいよ演説シーンが来ると顔がバーンと映り、名演技名演説。
ほぼラップ、ほぼ音楽のような言葉の羅列。顔力&高身長&脚長で畳み掛けられると「ハハーッ!」と平伏したいカリスマに溢れてる。



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実話ベースで、ブラックパンサー党の攻撃的な部分も描いているので、観客の気持ちとしては単純なものではいられない。


しかも、
主人公はブラックパンサー党の議長役のダニエル・カルーヤではなく
同じく黒人でありながらFBIのスパイとしてブラックパンサー党の内部に入り込むラキース・スタンフィールド。
黒人の権利を訴えるブラックパンサー党とFBIの間でぬるぬるとかなり器用にスパイとして活躍するラキース・スタンフィールドが面白い。。



彼の当たり役ではないでしょうか。
人が良さそうだし、場当たり的で誰にでもいい顔しそうな感じ(失礼…)。
わかりやすいイケメンだけどそんなにカリスマ性は感じられない(すごい失礼…)。
この役はスパイという現実離れしたものだけど、民衆に近いイメージ。
どっちかにつくわけではなく(FBIに利用されるけど)、ぬるぬるとその場に馴染んでいく。。

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ラストではご本人登場ってことで、スパイだったウィリアム・オニール本人のインタビュー映像が流れる。



不思議なのはウィリアムはどっちにも一生懸命だった。
ブラックパンサー党の活動も一生懸命でハンプトン(ダニエル・カルーヤ演じる党のトップ)に心酔していたっぽいし仲間からの信頼も得ていた。
同時にFBIのスパイとしての活動も、良心の呵責や恐怖(バレたらめっちゃくちゃにされてころされる)もありつつも、FBIの期待に応える活動をしていた。

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今作はアカデミー賞作品賞候補になってますね。


ブラックライブズマターの潮流に乗った作品の中でも完成度は高いし、
ダニエル・カルーヤ(助演賞受賞!)とラキース・スタンフィールドの演技も素晴らしい。
音楽も良かった。
ただ、、
ハンプトンとウィリアムの濃っっっっっっ厚で複っっっっっっ雑な感情の流れを描くには、、、ちょっと時間が足りなかったかな。。。

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ただ、もちろん観るべき映画の一つであることにはなんら変わりはないよ。


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