映画感想(ネタバレもあったり)

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ドキュメンタリー映画『私だけ聴こえる』(2022) コーダの少女たちの3年間を追った

2022-05-03 | 映画感想
『コーダ あいのうた』で広く知られるようになったきこえない・きこえにくい親をもつきこえる子ども、コーダ(CODA:Children Of Deaf Adults)。


両親ともにろう者の場合は、子どもが聴者であっても第一言語は手話という場合もあるという。


ろう文化と呼ばれる聴者文化とは異なる独特の仕草やコミュニケーションの取り方があり、
ろう文化で育ったコーダは地域の学校などの聴者文化でろう文化の仕草をしてしまうと、聴者から驚かれたりひかれたりすることがあるそう。


呼ぶときに体を叩いたり、目をじっと見て話を聞いたり、会話の中でのリアクションが大きかったり。
聴者文化にいるときのコーダは自分を押し殺して目立たないようにしている場合もあるとのこと。


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この映画は監督の松井至さんがアメリカのコーダコミュニティを取材した長編ドキュメンタリー。


きこえない世界(家族)ときこえる世界(学校)との真ん中でもがく3人の15歳の少女たちと
東日本大震災を経験したろう者とコーダを取材した手話通訳士の女性の妊娠と出産を、3年間追っています。








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『コーダ あいのうた』を見て感動した方にはぜひ観ていただきたいですね。。
いやぁ『コーダ あいのうた』がいかにポップだったか。。。


本当にどっち(ろうと聴者の世界)にも居場所がないけど、
きこえない家族のことは愛しているし何より大事で、
学校ではその家族のことを馬鹿にされ珍しいものとして見られ、
家族の中でも唯一のきこえる人間として分かり合えない一線をいつも感じてしまっている。








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1人の少女は「私はろう者になりたい」と願う。


家族たちを見て、ろう者が幸せな人生を送れることは知っている。
それなら自分がろう者になることでせめてせめてどちらかの世界(ろうの世界)に入ってしまいたい、と思う彼女の気持ちは理解できる。


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15歳〜18歳までの3年間のコーダの少女たちを追っていて、その時々に吐き出される言葉が一つ一つ、重い。








「普通の人はコーダやろうの文化があることすら知らない」


「知ろうとしないくせにジロジロ見てくる」


「私もろうに見える」


「聴こえる世界にずっといると気が狂いそうになる」


「醜い世界だから戦うために強くなった」




「壁を感じる。ろうである兄や彼の友達と。コーダキャンプでやっと友達が見つかった。いつでも私ははみ出しもの」
「聴こえる子とはノリが合わない」
「ろう者ともね」
「コーダとは違う。はみ出しもの同士だからね」



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