映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

映画『スーパーノヴァ』スーパーノヴァの意味 〝禁断の!〟とか〝衝撃の!〟などではもちろん全然ない コリン・ファース主演 

2021-07-05 | 映画感想
スーパーノヴァ(2020年製作の映画)
Supernova 上映日:2021年07月01日製作国:イギリス上映時間:95分
監督 ハリー・マックィーン
脚本 ハリー・マックィーン
出演者コリン・ファース スタンリー・トゥッチ ピッパ・ヘイウッド ピーター・マックィーン ニナ・マーリン




スーパーノヴァの意味
…星の一生の最後。爆発して数週間から数ヶ月の間明るく見え続ける。

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以下、褒めてます。

暴力的なくらいに辛い。


こんな辛く悲しい映画をなんで見なきゃいけないのかというくらい辛い。
幸せであればあるほど苦しいじゃない。
不幸せな方が幸せなんじゃないの!?
と、生き方揺らぐぐらいに辛い。

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悲劇の物語は紀元前500年にはギリシャ悲劇としてもうすでに存在していた。

「苦悩を含んだ人生」は大昔から肯定されていた。
古代から人生とは悲しみを含んだものだったし
それは物語や演劇に昇華され共感されてきたんですね。
喜劇がエネルギーになるときもあるし
悲劇が人生を支えることもある、と。

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辛く苦しいんだけどそれをことさら強調してないのがいいですね。

不必要に感情を煽る音楽もない。
どっかの中心で叫んだりしない。
この2人の数日間を描くだけで十分伝わることを作り手は知ってる。
勘弁してくれってくらいに伝わってしまう。

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男性同士であることがこの映画の大きな特徴だし意図もあるけど、
物語的には男性同士である必要がない。
おそらく女女、男女に入れ替え可能なのでは。
つまりは人間の物語ってことですね。

〝禁断の!〟とか〝衝撃の!〟などではもちろん全然ないし、

後半からねちねちと裁判を続けたりもしないし、
飛び降り自殺したり性暴力を受けたりセルフネグレクトによる非業の死を遂げたりもしない。

だれひとり彼らが男同士であることに引っ掛かりを持っていない。
引っ掛かりを持っていないことをありがたかったりも強調したりもしない。

「私たちリベラルなので〜」という空気もない。

それが当たり前の世界。

お前がいない世界。
差別心のあるお前がいない世界。

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この映画の救いはコリン・ファースのカッコ良さ。死ぬほどカッコいい。


神が作ったのかってくらいの美しい顔の造形。
暗闇の中で一つの光源で照らされた時の光と影で形取られる造形の美しさよ。
オーマイゴッド。

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演技の話までするとまた長くなるんで我慢しますけど、
話を聞いてるだけのコリン・ファースの表情が1ミリも動いてないのに
聞いた言葉一つ一つに心が動いてるのがわかるんですよ。
1ミリも表情筋動かしてないんですよ、アイツ。
やっぱ神かっ!

映画『蹴る』軽く狂気を感じる魂の電動車椅子サッカー ドキュメンタリー

2021-07-05 | 映画感想
蹴る

蹴る(2018年製作の映画)
上映日:2019年03月23日製作国:日本上映時間:118分
ジャンル:ドキュメンタリー
監督 中村和彦

電動車椅子サッカーの勝手なイメージがぶち壊されました

本日0時で終了するサンクスシアターで駆け込み鑑賞。
いやぁ観てよかった。
電動車椅子サッカーの勝手なイメージがぶち壊されました。
公開時に宣伝は読んでいて、
電動車椅子サッカー、障害者スポーツのイメージが変わるというのは知っていましたが
やっぱ観ないことには先入観というのは壊されないものですね。




スピードが速い速い速い



車椅子同士バンパーがぶつかる衝撃が凄い。
軽い交通事故ですよ。
ガシャーンってなってる。。

人工呼吸器ついてる人がすることではないと、勝手に思っちゃってましたよ。。
ボールを蹴る時クルッとその場で回転するわけですが
つまり一瞬真逆を向くことになるわけですよ。
で、戻ってきてバンパーにボール当たると
どういうわけだか
ゴールを塞ぐ敵の車椅子たちを避けて
狭〜い隙間を通ってゴール決めちゃう。。
相手の動きを予測して裏切って
相手が移動して空いたところを
どういうわけだかボールがすり抜けてゴール決める。
シュートとパスの精度が謎レベルに正確。
戦術とチームワークと熱意が凄い。




なんなく生涯スポーツ的な雰囲気なのかななんてフワフワと思っていましたが
ほんとごめんなさい。。。
ちょっと狂気を感じるくらい。
軽く死んでもいいくらいの熱量を感じました。
日本代表とか選抜ボーダーラインの選手だからかとは思いますけど
命をかけてる姿を見ましたよ。





『ラ・ラ・ランド』的な狂人感がありました


圧倒されました。
打ちのめされた。。
映画のコピーは「誰にも止められない」。
ほんとそう止まんないですよ、あの人たち。。

エネルギーをもらいました!

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生で試合を観たい!
観るぞ!



映画『ゴリアテ』EUフィルムデーズ2021 男性差別 スウェーデン

2021-07-05 | 映画感想


東京では 国立映画アーカイブ で6/24(木)-  7/18(日)まで
京都では、京都府京都文化博物館で6/17(木) - 7/4(日)まで開催中。
EU加盟国のアニメ、スリラー、ドキュメンタリー、歴史劇、若者など多彩なジャンルの秀作が
一般520円で一本観れるよ。
上映スケジュールはEUフィルムデーズ2021の公式サイトでご確認を。



映画『ゴリアテ』
初公開: 2017年8月7日
監督: ドミニク・ロシャー
音楽: Matteo Pagamici
映画脚本: ドミニク・ロシャー、 リサ・ブリュールマン、 ケン・ズムシュタイン
プロデューサー: ダリオ・ショッホ、 Rajko Jazbec



自国の良いとこを喧伝するだけの映画ではなく
自国の現在の社会問題を扱った映画を
在日大使館を通して出品できるってことが国として素晴らしいよなぁ。
男性差別(家父長制に囚われた男たち)を描いた映画です。
ことの全容を把握しているのは主人公のキンミー君だけなんですよね。
17歳ですべて押し付けられて選択させられる。
福祉国家として名高いスウェーデンでも福祉のセーフティネットから漏れてしまう人がいる。
それは「福祉に頼るなんて恥だ」という概念。
男なら(長男なら特に)大黒柱として家族を支えろ!
麻薬の売人をやったとしても!

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父は麻薬の売人で捕まって数週間後には刑務所に入れられる。
17歳の長男なら家族を託す。
麻薬の売人をやらせたい。
母は病気で働けない。
長男が家族を食わせるものだと思ってる。
長男が麻薬の売人させられそうなこともおそらく知ってる。
あとは、そう言ったことを全然知らない祖母と幼い妹と弟。
福祉を受けるのは恥だと考えているので福祉は受けない。
父が犯罪者だし、誰も稼げないので児童局が幼い妹と弟を保護しようとしている。
家族一緒にいるためにも福祉は使えない。

すべてはキンキーくんの負わされてる。
17歳。
地道に工場で働いて技能をつけていきたいと思っている長男キンキーくん。
周りがこう言う感じの男ばかりなので
キンキーくんもビジュアルはキツめしいてるけど心優しくてケンカも弱い。
父は「強くなれ!」とキンキーくんに暴力と犯罪を教える。

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そんな中キンキー君は家族に内緒で
住み込みの工場仕事を見つけて
そこへ逃げ込もうとしているが。。。
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男性差別の話です。
家父長制の犠牲者の話。
男性差別と女性差別は表裏一体。
男性も苦しいんだから
女性も今まで通り苦しんでろ、という話ではない。
男性の多くは女性を愛して
女性の多くは男性を愛しているんだから
愛している相手を苦しめるような差別は今日からなくなればいいのに。

『オーストリアからオーストラリアへ ふたりの自転車大冒険』 EU加盟国の映画祭 【EUフィルムデーズ 2021】 文化的多様性をさまざまな表現で映し出す

2021-07-05 | 映画感想

EUフィルムデーズ 2021


欧州連合(EU)加盟国の在日大使館・文化機関が提供する作品を一堂に上映するユニークな映画祭で、上映される作品はヨーロッパの映画製作者の幅広い才能を披露するとともに、EUが重視する文化的多様性をさまざまな表現で映し出しています。
19年目となる2021年は26のEU加盟国の作品を紹介します。


東京では 国立映画アーカイブ で6/24(木)- 7/18(日)まで
京都では、京都府京都文化博物館で6/17(木) - 7/4(日)まで開催中。
EU加盟国のアニメ、スリラー、ドキュメンタリー、歴史劇、若者など多彩なジャンルの秀作が
一般520円で一本観れるよ。
上映スケジュールはEUフィルムデーズ2021の公式サイトでご確認を。



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オーストリアからオーストラリアへ ふたりの自転車大冒険


Austria 2 Australia 製作国:オーストリア上映時間:88分
ジャンル:ドキュメンタリー
監督ドミニク・ボヒス アンドレアス・ブチウマン

これなかなか面白かったですよ。

オーストリアからオーストラリアまで男2人で自転車旅!
っていう電波少年案件ですよ。
このアホらしさがいいですね。
僕もいつか「福井→広島」の旅をしたいですよ。

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こういう自撮りドキュメンタリーの場合、ナルチシズムが邪魔になります。
挫けそうな俺✨
でも立ち上がる俺✨
ってのをわざわざ自分でカメラに収めなきゃいけない。
このナルチシズムが気持ち悪い場合が多い。

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細面のドミニクがね、ちょっとナル入ってるんですよね。。
オーストリアの荒野の真ん中でハエにたかられて挫けそうになってる自分を
カメラの前でたっぷりと表現するのがちょっと。。
でもナルチシズムがうるさいシーンはこのシーンくらいですし、
特にアンディはなんかずっと淡々としてて客観的で面白いキャラでした。
どんどんかっこよくなっていくし。
かなり大変なことも起きるし
過酷な道のりだし
ポエムみたいナレーションも入るんだけど
全体としてはなんか淡々としてる。
演出がうるさくなくてちょうど良かったです。

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ドローンは凄いですね。
個人でも空撮できちゃうんだから。
ロシアとかカザフスタンとかパキスタンとか中国とかのすんごい映像が次々と。

現地の人との交流もわざとらしくなくて
「今美味しい映像撮れてますよっ!」感があんまりない。
絶対そう思ってるはずなんだけど
どういうわけだかこの2人からはそういういやらしい計算高さが感じられない。

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旅気分が味わえたし
人間っていいな、地球ってすごいなって思えたし
気分が上がる、つまりいい映画でしたよ!