今日の田舎は、おおむね 曇りでした。
〝お袋さん〟は、洗濯物を出したり入れたり、雲行きを見ながら・ぼやきながら、歳相応に 元気です。
昨日に続き、猫の思い出を一席…。
特派員が中学生のときでした。 今から50年ほど昔のことです。
関西方面への修学旅行が、2泊3日で行われました。
京都の「白味噌」が珍しく、朝ごはんの お汁が美味しかったなあ、などと思い出しながら、家に帰ると…、
何と、当時の飼い猫「ちょん」が、杉の木から下りられなくなっていました。
白と黒のブチ猫で、枝葉の隙間から、身体が見え隠れしています。
まだ 若かった〝お袋さん〟が、「丸一日、下りられんがや」と言いながら、心配そうに見上げていました。
長い竹竿が届かないほどの所に、じっとしています。
時折、鳴き声を上げるのですが、いかにも 悲しそうに聞こえていました。
周りの人たちは、「上ったものなら、下りてくるわいね」などと言い、相手にしないようでした。
その日は 日暮れになり、そのままにして置いたのです。
今 思い返すと、随分 可哀想ですが、当時は、猫 一匹ぐらいは、ほったらかし でした。
翌朝は、旅行の疲れから 遅刻気味に目を覚ましたので、「ちょん」のことは気になるものの、そのまま登校したのです。
放課後、急いで帰宅すると…、
どうなったのかを 尋ねる前に、「ちょん」が、家の中から ひょこひょこと 出てきました。
特派員の帰った音に気付いて、迎えに出てきたのです。
修学旅行の間と、木から下りられなかった日も入れて、4日ぶりの対面でした。
「どうしたんや」と抱き上げました。 ごろごろ 喉を鳴らして、しがみついてきたのを、今でも覚えています。
木から下りられなかった猫は、特派員の、62年の記憶の中で ただ一匹、「ちょん」だけです。
「ちょん」の名誉を回復するには…、
きっと、何かに追いかけられて 木に登り、怖さから、下りなかったのだと思います。
半世紀近く 昔の、ある飼い猫の思い出 でした。