「『いさみや』の場所は、昔は、民宿だったんだよね。その前は、なんだったの?」
夕食時、夕美は父親に聞いてみた。
「民宿の前は…、確か…、民家だったと思うなぁ…」
「民家?それじゃ、人が住んでたんだね。」
「うん…。だけど、そのあとは、長いことほったらかしだったなぁ…」
「何でほったらかしだったの?」
「民宿も『いさみや』って名前じゃなかった?」
母親が会話に加わった。
「いや、前の民宿は『かねみつ』だった」
さらに、祖父も話しに加わってきた。
「ね、おじいちゃん。民宿の前の民家に住んでた人、わかる?」
「あぁ…。ちょっと挨拶する程度だったけど、気さくなご夫婦とその奥さんの妹さんが住んでたと思う。」
「事件があったって本当?」