「事件があったって本当?」
「事件…?」
父親が突拍子もない声をあげる。
徹弥が言った"事件"が気になっていた。
おそらくこの件を知っていだろう…と思われる祖父を見ると、祖父は目線を反らし、普段は食べない大きめなメンチカツを口に頬張り、『げほけほ…』と軽く咳き込んだ。その態度は話題に入りたくないようにも見えた。
「事件は…無かったと思うなぁ…。じいさんの時代だから、俺はわからない…。」
父親は祖父を見るが、祖父は話題に混じろうとしない。
「お父さんは生まれてなかったの?」
「生まれてたけど、子供時代だったからなぁ」
「おじいちゃんは?知らない?」
敢えて、聞いた。
「うん…まぁ…。ちょっと聞いたことはあるが…」
「うん。」
「…さてと…。」
祖父は急に用事を思い出したかのように、席を立った。