*********************************
鎌倉の片隅に、密やかに佇む古書店「ビブリア古書堂」。過去の出来事から本が読めなくなった五浦大輔(野村周平氏)が、其の店に現れたのには、理由が在った。亡き祖母の遺品の中から出て来た、夏目漱石の「それから」に記された著者のサインの真偽を確かめる為だ。
磁器の様に滑らかな肌と涼やかな瞳が美しい若き店主の篠川栞子(黒木華さん)は、極度の人見知りだったが、一度本を手にすると、其の可憐な唇から止め処無く知識が溢れ出す。更に彼女は、優れた洞察力と驚くべき推理力を秘めていた。栞子は立ち所にサインの謎を解き明かし、「此の本には、祖母が死ぬ迄守った秘密が隠されている。」と指摘する。
其れが縁となって、古書堂で働き始めた大輔に、栞子は太宰治の「晩年」の希少本を巡って、謎の人物から脅迫されていると打ち明ける。力を合わせて其の正体を探り始めた2人は、軈て「漱石と太宰の2冊の本に隠された秘密が、大輔の人生を変える1つの真実に繋がっている事。」を知るので在った。
*********************************
“本”に付いて持つ深い愛情と造詣で、様々な謎を解いて行く栞子。彼女が名探偵のシャーロック・ホームズ役ならば、大輔は助手のジョン・H・ワトスン役。本好きの自分とって、本に関する蘊蓄が溢れている「ビブリア古書堂の事件手帖シリーズ」は実に魅力的で、最新刊の第7巻以外は、全て読んでいる。
今回、原作を映画化した「ビブリア古書堂の事件手帖」が公開されたので、早速映画館に足を運んでみた。
原作を読んでイメージしていたキャラクター像と、映画のキャスティングは概ねマッチしている。特に栞子を演じた黒木華さん(正直に言えば、彼女は女優として余り評価していない。「演技力が高い。」と高く評価されている様だが、自分には「どんな芝居でも、似た様な表情をしている。」様にしか思えないからだ。)は、栞子のイメージがピタリ合っていた。
今回の映画、原作の第1巻に収録されている2つのストーリーを題材にしている。「2時間程の作品に、2つのストーリーが詰め込まれている。」訳で、普通ならばテンポの良さを期待してしまうのだけれど、全体的に冗長さを感じた。もっと枝葉を切り落として、100分位に纏めた方が良かったのではないか。
又、設定に突っ込み所が幾つか在った(原作には無かった。)のも、ファンとしては残念な所。必ずしも原作通りに映像化する必要は無いと思っているけれど、「ん?」と疑問を感じてしまう変更は勘弁して欲しい。
総合評価は、星3つとする。