ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「オリエント急行殺人事件」

2018年01月21日 | 映画関連

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トルコフランス行きの豪華寝台列車「オリエント急行」で、アメリカ富豪エドワード・ラチェットジョニー・デップ氏)が刺殺体で発見される。偶然列車に乗り合わせていた探偵エルキュール・ポアロケネス・ブラナー氏)が、鉄道会社に頼まれ、密室殺人事件の解明に挑む。乗客のゲアハルト・ハードマン教授ウィレム・デフォー氏)やドラゴミロフ公爵夫人ジュディ・デンチさん)、宣教師のピラール・エストラバドス(ペネロペ・クルスさん)、キャロライン・ハバードミシェル・ファイファーさん)等に聞き取りを行うポアロだったが・・・。

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ミステリーの女王”と呼ばれるアガサ・クリスティ女史彼女が生み出した作品は200を超えており、自分は殆ど全てを読んでいる。彼女の作品の魅力は大きく分けると、「きらびやか世界観。」、「エルキュール・ポアロやミス・マープル等、魅力的な探偵の存在。」、そして「設定の素晴らしさ。」の3つ。

 

最後の「設定の素晴らしさ」に付いて説明すると、トリックの素晴らしさも然る事乍ら「良くもまあ、こんな斬新な設定を考え付いたなあ。」と感心させられる素晴らしさに在る。“今”では珍しくも無い設定でも、“戦前(主に1920年代~1940年代)”にそういう設定を考え付いたというのは、本当に凄い事。斬新な設定の作品が生み出される度、賛否両論噴出したのは有名。

 

彼女の代表作の1つ「オリエント急行の殺人」は44年前の1974年に、「オリエント急行殺人事件」というタイトルで映画化されている。此の作品は大ヒットを記録し、世界中にアガサ・クリスティ・ブームを巻き起こした。以降、1978年に「ナイル殺人事件」、1982年に「地中海殺人事件」、1988年に「死海殺人事件」と、ポアロを主人公とした映画が公開となり、自分は全て観て来た。

 

今回、44年振りにリメークされた「オリエント急行殺人事件」を映画館で観て来たのだが、自分の中でポアロ役と言えば、映画版ではピーター・ユスティノフ氏、TVドラマ版ではデヴィッド・スーシェ氏のイメージが強い。今回はケネス・ブラナー氏が演じているのだけれど、違和感覚えたのはポアロの“”。ポアロの髭と言えば“ぴんと跳ね上がった大きな口髭”が特徴で、其れはブラナー氏も再現しているのだが、ユスティノフ氏やスーシェ氏と異なるのは“ちょび髭をくっ付けた様な顎髭”が加わっている点。此れが気になって気になって、仕方無かった。

 

原作では高齢の男性として描かれていたエドワード・ラチェットだが、今回の映画でジョニー・デップ氏が演じている彼は、どう見ても大分若い。他にも原作と異なる設定が在るけれど、まあ許される範囲だったと思う。

 

カメラ・アングル上手いなあ。」と感じた。オリエント急行内でラチェットは殺害されるのだが、場所は彼が寝泊まりする個室の中。鍵が掛かった“密室”で殺されており、鍵を壊して室内に入ったポアロによって発見される。凡庸な撮り方ならば「鍵を壊して室内に入るポアロ。→驚くポアロの顔のアップ。→殺害されたラチェットのアップ。」という感じになるだろう。でも、今回の作品では「室内に入ったポアロが、『殺害されている。』と言い乍ら、室外に出て来る。」ものの、肝心なラチェットの死体は中々映し出されない。色々遣り取りが在った後、列車の屋根を取り外した様な感じの上からのアングルで、ラチェットの隣の部屋からスーッとカメラが横滑りして行き、そしてラチェットの死体が映し出される。観ている側を焦らしに焦らし、こういう形で死体を見せるというのは心憎い。又、「トンネル内に急遽並べられた席に乗客達が座らされ、ポアロが謎解きをする場面。」や「列車が、山中を走り抜ける場面。」等も、カメラ・アングルの良さが光る。

 

クリスティ作品の魅力の1つに「設定の素晴らしさ」を挙げたけれど、「オリエント急行の殺人」も例外では無い。原作を読んでいなかったり、44年前の映画を見ていなかったりと、「オリエント急行殺人事件」に初めて触れる人達ならば、“意外な犯人”に驚かされる事だろう。“今”ならば「在り。」な設定だろうが、原作が発表された1934年では、恐らく殆どの読者は「こんなの在りかよ!?」と思ったに違い無い。

 

映画の最後に「ナイルに死す」の続編制作を匂わせる場面が在ったけれど、どうやら本当に制作される様で楽しみ。

 

「厳しい評価が多い。」とされる今回の作品。個人的には、「そんなに悪い出来では無いのになあ。」という思い。総合評価は、星3.5個とする。


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