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鶴川佑作(つるかわ ゆうさく)は横須賀のマンションに住む、独身の54歳。借りた雑誌を返す為、同じ階の住人・串本英司(くしもと えいじ)を訪ねた。だが、インターホンを押しても返事が無く、鍵も掛かってていない。心配になり家に上がると、来客が在った痕跡を残して、串本は事切れていた。
翌日一杯迄遺体が発見されては困る事情を抱える佑作は、通報もせずに逃げ出すが、其の様子を佐々木紘人(ささき ひろと)と名乗る高校生に撮影され、脅迫を受ける事に。
翌朝、考えを改め、通報する覚悟を決めた佑作が、紘人と共に部屋を訪れると、今度は遺体が消えていた。知人を訪ねただけなのに。こうして、最悪の5日間の幕が開く。
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元書店員という経歴から初期の頃は、書店を舞台にした小説を多く著して来た大崎梢さん。最近は書店を舞台としない作品も増えており、今回読んだ「ドアを開けたら」も、そんな1つ。
横須賀のマンションに一人暮らしをしていた老人・串本英司が、自室で亡くなっているのが発見されるのだけれど、其の遺体が消え、そして再び現れる。不可思議な謎を解き明かすのが54歳の鶴川佑作と高校生の佐々木紘人。年齢も見た目も大きく異なる2人だが、或る事情から共に「“人間不信”の状態に在る。」という共通点を持つ。
例えるならば紘人がシャーロック・ホームズ、そして佑作がジョン・H・ワトスンという役回り。遥かに年上の佑作が聞き込み等を行い、遥かに年下の紘人が情報分析&推理を行うというスタイル。
謎解きをして行く過程で、少し無理を感じる設定が幾つか。ネタバレになってしまうので詳しくは書かないが、“名前の一致”や“27歳の女子高校生姿”(安達祐実さんの様なケースも在るが。)、“犯行動機”等、「絶対に在り得ない。」とは言わないけれど、無理を感じる設定で在るのは確かだろう。
そんなこんなで、謎解きという面では「うーん・・・。」と感じてしまう作品だが、人間不信の状態に在った2人が、謎解きをして行く過程で“元の自分”を取り戻して行くというのは、ハートウォーミングで悪く無い。
総合評価は、星3つとする。